皮膚科看護師になるには?業務内容・役割・給料。転職前にわかる業界おまとめ
目次
皮膚科の範囲は広い
皮膚科で扱う症状は、皮膚炎・湿疹、蕁麻疹、血管炎、水疱症、角化異常、感染症などです。
皮膚炎・湿疹は病名でいえば、アトピー性皮膚炎接触皮膚炎・脂漏性皮膚炎・皮脂欠乏性皮膚炎(乾皮症性湿疹)などです。蕁麻疹ならば、血管性浮腫(クインケ浮腫)・急性痒疹・皮膚そう痒症などということになります。
さらには、良性・悪性両方の腫瘍、肉芽腫性疾患、代謝異常症、膠原病などもあります。ヤケド・凍傷・虫刺されなどの外傷も皮膚科でカバーします。
皮膚科という言葉からは皮膚の表面だけを扱うようなイメージがあるかもしれません。改めてチェックしてみると、筋肉や骨にまで及び、意外に扱うは範囲は広いです。
さらには、美容皮膚科も皮膚科の一種とはいえます。
ただ、こちらは訪れる患者さんは治療が目的ではありません。
美肌・美白・脱毛などの美容が目的です。また、看護師さんの役割としても、看護師本来の面が半分、エステティシャンが半分といったところです。
別のものとして考えたほうがいいでしょう。
1.皮膚科看護師の仕事内容
1-1.入院病棟は少ない
ほかの診療科で、看護師の仕事といえば、まずは「外来か、入院病棟か」で分けてから考えるでしょう。
ですが、皮膚科の場合、専門の入院病棟を設けている病院は極端に少ないです。
その少ない中のひとつが、東北大学付属病院です。ベッド数は29床です。これでも全国有数の規模ということになります。
皮膚科の患者さん全体の数から考えると、入院しての治療を受ける人はほんの一握りです。といっても、いないわけではありません。ほとんどの病院では、ほかの診療科との混合病棟という形でカバーしているのです。
どうしても皮膚科専門の入院病棟にこだわりのある人は、大学病院などかなり規模の大きい病院の中で探すしかありません。ただし、こういったところに採用されても、配属先が思い通りにならないことも多いです。
希望をかなえるのは、なかなか難しいというのが、正直なところです。
皮膚科の看護師への転職は、ほぼ自動的に、総合病院の外来かクリニック(医院、診療所)と考えていいでしょう。
1-2.内科的な治療と外科的な治療の両方をやる
皮膚科の場合、眼科などと同様で、皮膚内科・皮膚外科といったようには分かれてません。
投薬中心の治療も外科手術もやる、ということです。簡単な手術であれば、診察室のその場で始めてしまうようなこともあります。
ですが、実際には医師の方でも内科的治療が得意な人と、外科的治療が得意な人と分かれます。
外科的な治療が必要になると、すべてほかのクリニックに紹介する方針の医師も少なくありません。外科的な治療をやる医師は、ほぼそれを専門とすることが多いようです。
このどちらのタイプの医師のもとで働くかで、看護師の仕事内容も変わってきます。求人情報を見るときのポイントのひとつです。
内科的な治療を主にしている場合、看護師の診療の補助としてやることは、比較的シンプルです。
患者さんに軟膏を塗ったり、患部を消毒してガーゼを当てたりといったことが中心になります。
注射や点滴などでの穿刺(せんし)は、ほかの診療科よりも困難なことが多いです。
皮膚のトラブルで来ている患者さんですから、皮膚のコンディションが悪いです。そこに針を挿さなければなりません。
検査もありますが、種類は多くありません。血液に関するものが主です。
ほかの診療科よりも丁寧にやる必要があるのが、診察室・待合室、機器類の消毒・洗浄です。
感染症の患者さんも対象になっているのが理由です。
外科的な治療を主にしているクリニックならば、これに手術の際の器械出しが加わります。
比較的簡単な手術が多いものの、手術室看護師としての仕事もあると考えておきましょう。
総合病院の皮膚科外来であれば、仕事内容としては、以上のような診察補助をイメージするぐらいでいいでしょう。
ですが、クリニック(医院、診療所)であれば、状況が変わります。ほかの診療科同様に、受付、会計、電話対応などが加わります。
初めて皮膚科クリニックに勤務した看護師さんは、「たくさんのタオルを使うのにびっくりした」といいます。清潔を保つため、どんどん交換していくことになります。
このタオル類やシーツを洗濯するのも看護師に任されていることが珍しくありません。
冗談めかして、「掃除(消毒・洗浄)したり、洗濯したり。なんだか家庭の仕事みたい」といっている看護師さんもいるぐらいです。
2.皮膚科看護師の給料
皮膚科看護師の給料(月給・ボーナス・年収)については、これといった特徴はありません。
一般的な外来、クリニック(医院、診療所)と同じと考えていいでしょう。
24時間態勢になっているわけではありませんので、夜勤&夜勤手当はありません。残業はあっても、夜通しのものではなく、「夕方の定時に帰れなかった」程度のものです。残業手当も多くはありません。
これらの手当がない分、病棟勤務よりはかなり下がると考えていいでしょう。
もし、勤務する皮膚科が外科的な治療を主にしているのならば、チェックポイントは手術手当です。
手術に立ち会う看護師にも患者の病気が感染する可能性があり、それに対しての危険手当として出している場合があるのです。「手術一件につき、いくら」という形が多いです。
給料の比較をするのならば、ここまで含めて考えましょう。
3.皮膚科看護師に必要なスキル
皮膚科看護師に求められるスキルや資質はいくつかあります。
実はこのいずれもが、仕事をテキパキ回すということにつながっています。
皮膚科の外来やクリニックはどこも込み合っています。しかも、一人当たりの診察時間は比較的短くて済む患者さんが大半です。
言葉の印象は悪いですが、どんどん患者さんを回転させていくということが大事なのです。
たとえば、観察力とコミュニケーション能力もこのテキパキにかかわってきます。
診察前に患者さんの様子を見、話を聞き、問診票を作ります。
医師は問診票を見、看護師さんからも様子を聞いてから、診察を始めます。
この伝えられる内容がしっかりしていて、看護師さんも医師から信頼さているのならば、診察もすぐに肝心な部分に入れます。
その分、診察時間も短くて済みます。
診察が始まってからも、このコミュニケーション能力は大事です。
皮膚病の患部は、肛門の周りや股間などの恥部のことも多いです。また、患者さんは小さな子供から、お年寄りまでいます。
下着を取って、患部を見せるのをためらう人もいます。子供ならば、注射ひとつにもぐずったりもします。
こういった人たちにスムーズに必要なことをやってもらわなければなりません。しかも「偉そうに命令された」といったような印象を持たれないようにする必要もあります。
こういった形で、コミュニケーション能力が必要になるのです。
あとはバイタルチェックや、注射・点滴などが皮膚科看護師の仕事になります。
4.皮膚科看護師の資格
看護師のスキルアップ・キャリアアップの具体的な方法の代表が、認定看護師・専門看護師などの資格を取ることです。
どちらも認定団体は、財団法人・日本看護協会です。
認定看護師は21、専門看護師は11の看護分野で用意されています。皮膚科看護師にかかわりの深いのは、皮膚・排泄ケア認定看護師、感染管理認定看護師、感染症看護専門看護師あたりです。
資格試験にパスする必要があります。また、それを受験資格には、それぞれの看護分野で一定年数勤務した経験が必要です。
さらには、認定看護師の場合は、日本看護協会が指定する学校などでの専用の教育コース(半年、615時間以上)、専門看護師は指定の大学院修士課程を終えるなども条件となっています。
この教育コースにも、大学院にも夜間制・通信制はありません。休職・退職して通うことになるでしょう。
そこまで手間をかけても、資格を取ったから安心というものではありません。
日本看護協会のアンケートによると、認定看護師になった人の約3分の2が「なる前となった後で比べて、給料も役職も変わらなかった」と答えているのです。
一方で少数派ですが、非常に高く評価してくれるところもあります。
「資格を取るのに病院も協力的。授業料は出してくれるし、休職中も『学校に行くのも仕事のうち』として給料まで出た」「資格所有者のために特別な役職を作ってくれた。給料もアップ」という例もあります。
このように専門性を高く買ってくれ、そういった看護師を必要としているのは、大学病院など大規模な医療機関が多いです。また、外来よりは入院病棟です。
もし、資格を取る予定か、すでに資格を取ったならば、たとえ募集は少なく、時間がかかっても、皮膚科の専用病棟があるような病院への転職を考えたほうがいいでしょう。
5.皮膚科で働くメリット・デメリット
5-1.メリット
診療補助では、難しいものや、皮膚科独特というほどのものは、ほとんどありません。
「皮膚のコンディションが悪い人が多いので、穿刺には気を使う」ということぐらいが注意点です。
「皮膚科での診察補助は比較的シンプルで簡単。結婚・出産などによる長期の休職後の復職に向いている」という声が多いです。
夜勤がないこともあって、ママさんナース向きの職場と考えていいでしょう。
また、皮膚科が対象にしている疾病で、そのまま死に至るようなものは少ないです。
特に外来やクリニックであれば、重症患者もいません。意識もはっきりしているので、この面でのコミュニケーションの難しさはありません。
そのため、精神的な負担も少ないです。
5-2.デメリット
デメリットはこのメリットの裏返しです。「バリバリ仕事したい」「給料がたくさん欲しい」「スキルアップ・キャリアアップしたい」という看護師さんにはあまり向きません。
ほかの診療科の関係者も、皮膚科の看護師の仕事はシンプルと知っているので、あまり皮膚科時代のキャリアは高く買ってくれません。
「皮膚科からさらに転職する場合に不利」ということです。
6.皮膚科への転職の注意
最初に「美容皮膚科は皮膚科とは別のものと考えましょう」と申し上げました。
ですが、実際はなかなか簡単なものではありません。
皮膚科の看板を掲げているところでも、美容皮膚科の範囲までカバーしているところがあります。
つまり、治療といえる部分と、美容といえる部分の両方をやっているのです。
また、町のクリニックなどに多いのが、ほかの診療科もいっしょに名乗っているパターンです。「皮膚科・泌尿器科」といった形です。
これらの場合、もし皮膚科にこだわりがあるのならば、「どちらのほうが主になっているのか」などを気にする必要があります。
こういった情報は自分で集めるのは難しいです。
看護師転職サポートを利用するのもひとつの手です。
自分の側の希望さえ伝えておけば、条件に合った求人を紹介してくれます。
料金を気にする必要はありません。あなたの転職・就職が決まった時点で、病院・クリニック側が支払います。看護師側はタダです。
ただし、どこの看護師転職サポートでもいいわけではありません。
中には、ろくに情報を集めてこずに、強引に話をまとめようとするところもあります。
まずは、実際に登録してみて、担当者にも会ってみましょう。
「あまり役に立たない」「こちらの希望を無視する」と気がついたら、以後は使わないようにします。看護師転職サポートも選んだほうがいいのです。
といって、あまり絞り込みすぎないようにしましょう。
サポート会社ごとに抱えている求人案件が異なります。規模の小さいクリニックも転職の対象にしている場合は、なおさらです。
信頼できるところを、3、4社選んで、これら全部に登録しておくのが、利用のコツです。そうすることで、「せっかくいい条件の求人があったのに、気が付かないままになってしまった」ということがなくなります。
また、皮膚科専門の入院病棟を転職先・復職先にする場合も、看護師転職サポートの利用を考えてみましょう。
特に皮膚・排泄ケア認定看護師など、はっきりとしたアピールポイント・セールスポイントを持っている看護師さんにおすすめです。
この場合、逆指名制度での実績のあるサポート会社を選ぶようにします。
先に申し上げたように、皮膚科専門の入院病棟を持っている病院は少ないです。募集の出るのを待っているだけでは、ほとんど機会はありません。
こういった場合に、役に立つのがこの逆指名制度です。
求人が出ていなくても、こちらの方から、「こういった経歴と能力を持っている看護師さんが、そちらでの勤務を希望しているのですが……」と売り込みに行くシステムです。
売り込みですから、セールスポイントがしっかりしているほど、成功の確率が高くなります。
もちろん、その売り込みには看護師転職サポートの担当者が行きます。全く可能性がないのならば、あなたの名前も出ないままです。
うまくいけば、「この病院で働けたらいいんだけど……求人は出ていないし」とあきらめていたところへも、転職できます。
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