訪問看護師で働く!仕事内容・役割・給料。転職前にわかる業界おまとめ
長年の治療を続けていたり、最後の時を迎えようとしている患者さんたちの中には、病院ではなく自宅を選ぶ人が増えています。
病院ほどには十分な治療・看護を受けることはできません。ですが、「できることなら、少しでも日常に近い生活をしたい」という気持ちを支えることが求められています。
目次
1.訪問看護師の仕事内容
1-1.病院勤務と違うところ
訪問看護師は、訪問看護ステーションに所属することになりますが、看護師としての仕事はそこでするわけではありません。
そういった患者さんたちの自宅を訪れ、必要な看護や医療を提供します。
隣に医師がいるわけでもありません。原則的に、看護・医療の提供は自分一人ですべてやります。
ですから、新卒で訪問看護師になる人は、まずはいません。ほぼ全員が、「病院やクリニックからの転職」か「退職して、ブランクがあって、それから復職」になります。
前に経験があるだけに、「病院などに勤務する場合に比べて、何が違うのか」が気になるところです。
よく、「訪問看護師は、中堅・ベテラン、特に子育ても経験したようなママさんナースに向いた職種」といわれます。
ですが、実際の現場は、訪問看護ステーションごとの違いが大きいです。ストレートにいってしまうと、「当たり外れがある。外れた場合、待遇や職場環境はかなり厳しい」です。
まずは「訪問看護とは」「訪問看護ステーションとは」をしっかり理解しなければなりません。その上でないと、自分が転職先の候補にしようとしている職場の評価もできません。
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1-2.勤務と仕事内容
勤務の負担がもっとも少ないパターンならば、次のようなものになります。
・土日は休み。夏休み・正月休みもカレンダー通り
・日勤のみ
・訪問件数は1日4、5件(軒)
・1件の訪問時間は60分(訪問看護の基本の時間)でちゃんと終わる
今はどの訪問看護ステーションも特色を出そうとしています。また、サービスの内容を濃くする傾向にあります。
その分、訪問看護師の負担も増えます。
たとえば、24時間対応のところがあります。こういったところならば、「日勤だけ」というわけにもなかなかいかず、夜勤にも組み込まれることになるでしょう。
また、月に数日、「自宅待機」になっている場合も少なくありません。「必要があれば、すぐに駆けつける」という状況にしているのです。
あるいは「近所ぐらいならば出かけてもいいが、すぐに携帯電話に出られるように」という「オンコール待機」になっている場合もあります。
もちろん、これらの場合、夜勤手当・待機手当などが付きます。
具体的なケアの内容は、次のようなものです。もちろん、患者さんごとに変わる部分もあります。
・バイタルチェック(血圧・体温・脈拍など)
・医療機器の操作・管理(人工呼吸器、持続点滴、膀胱カテーテルなど)
・入浴・食事などの介助
・褥瘡管理
・リハビリ
・認知症対策
・ターミナルケア
・患者本人・家族への健康指導・相談
担当する患者さんは、病院・クリニックのように、「内科」「消化器科」「皮膚科」といった区別はありません。広い範囲をカバーすると考えておきましょう。
1-3.「訪問看護指示書」について
一人で看護・医療を提供するわけですが、その内容は先に決められています。
すべて「訪問看護指示書」に従います。「特別訪問看護指示書」「在宅患者訪問点滴注射指示書」まで含めて、おおまかにそう呼ばれることが一般的です。
この内容は、患者さんの主治医が患者さんを診察して決めます。
これがあることで、「看護師は医師の指示・監督がなければ、医療行為ができない」といった決まりを守ることができます。
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2.訪問看護師の給料
訪問看護ステーションごとにいろいろな勤務形態になっているため、給料も様々なパターンがあります。
まず、比較のためのベースになるようなパターンとして、「訪問看護ステーションの正社員(正規雇用)。日勤のみ」を考えてみます。
夜勤手当はなく、残業手当もよほど例外の時だけ付きます。
ですから、病棟勤務に比べたらかなり安くなると考えていたほうがいいでしょう。
最近多いのが、パート・アルバイト、契約社員といった「非正規」での雇用です。
この場合の給料計算は時給制になります。また、ボーナス(賞与)はないのが普通です。あっても「寸志」などの名目で一定額が出る程度です。
正社員であれ、パート・アルバイトであれ、「夜勤がある」「24時間態勢」というところであれば、「夜勤手当」だけではなく、「自宅待機手当」「オンコール手当」などが付きます。
その分だけ、日勤のみに比べて、月収・年収は高くなります。
また、「病棟や外来での勤務ではみられないが、訪問看護の場合によくある」のが、「歩合制」です。これは正社員、パート・アルバイトのどちらでもありえます。
「給料まるまる100パーセントではないが、『今日は何件(何軒)、患者さんのお世話をした』というその数で、給料がアップダウンする」という形が多いです。
これには「忙しい日があっても、その分はお給料に反映される」というメリットがある半面、「仕事が少なかったら、お給料も減る」「実際にその月が終わってみないと、お給料がいくらになるか、予想できない」というデメリットもあります。
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3.訪問看護師に必要なスキル
まず、必要なのは、正看護師・准看護師の免許、それに運転免許です。
たまに運転免許が不要で、電動自転車などで回るような訪問看護センターもないわけではありません。
ですが、これはよほど人口密度の高い都市部に限られます。患者さんも密集している分、移動距離も短いのです。電動自転車などを利用していることがあるのです。
また、スムーズに仕事を始めるには、ペーパードライバー状態は解消しておきましょう。
特に「オンコール待機」「自宅待機」などがある訪問看護ステーションならば、できれば土地勘もあったほうがいいのでしょう。「大急ぎで患者さんのもとに駆けつける必要がある」ということですから。
「あたらしい土地に来てすぐ」「方向音痴」というのならば、無理とまではいいませんが、訪問看護師への応募は慎重になったほうがいいかもしれません。
看護師としての知識・スキルということでは、総合病院などで、3~5年は経験を積んでいないと難しいでしょう。それも、内科、外科、小児科、救急などの臨床です。
何しろ、お医者さんは横にいません。いくら「訪問看護指示書」があるとはいえ、看護師自身の判断で行うケアもどうしても出てきます。
また、「様子がおかしい」「状況が変わってきている」ということがあれば、主治医に報告もしなければなりません。
また、「機械類が苦手」というわけにもいきません。患者さん次第でどんなものを扱うことになるかわかりません。
「幅広い病気を扱う診療科を経験している」か、「色いろいろな診療科を回った」ということの上に、「新しいことにも積極的に取り組むことができる」という人が理想的です。
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4.訪問看護師の資格
看護師さんがキャリアアップ・スキルアップするという場合、「資格(認定)を取る」というのが、一般的な方法です。
その中でも、財団法人・日本看護協会が主催している「認定看護師」「専門看護師」がもっとも知られています。
それぞれ、21、11の看護分野で用意されています。訪問看護の場合は、そのものズバリの「訪問看護認定看護師」と「在宅看護専門看護師」があります。
また、かかわりのある看護分野ならば、「緩和ケア認定看護師」「皮膚・排泄ケア認定看護師」「がん性疼痛看護認定看護師」「認知症看護」などたくさんのものがあります。
ただ、これらの資格を取るには、それなりの負担も覚悟する必要があります。
たとえば、認定看護師の場合、受験資格を満たすために、日本看護協会が指定した半年間の教育コースを修める必要があります。
専門看護師の場合は、同様の教育コースに加えて、大学院の修士課程を修める必要もあります。これには最低で2年かかります。
これらには夜間制や通信制はありません。休職したり、いったん退職することになるでしょう。
また、授業料もかかります。生活費まで含めて、事前にしっかりと用意しておく必要があります。
また、そこまでやって資格を取っても、必ずしも待遇がよくなるものでもありません。
「自分自身の興味のために勉強に行く。純粋に訪問看護師の道を極めたい」というのならば、問題はないでしょう。
「これで給料をアップしてもらう」「特別なポストを用意してもらう。あるいはポストを上げてもらう」というのが目的であれば、自分の職場の状況をよく判断しなければなりません。
これらのことは、ほかの看護分野や診療科でもいえることです。
ただ、訪問看護師の場合、勤務先が小規模なことが多いです。また、経営者らに看護・医療への理解がないことも珍しくありません。「資格を取っても、むだになる可能性はほかの看護分野よりもさらに高い」と思っていたほうがいいでしょう。
それだけに、「資格を持っている」「資格を取る予定」という人は、「せっかくの資格を生かせる職場」を意識して、転職先はしっかりと選ばなければいけません。
・その他の資格
また、訪問看護師の中には、「ケアマネジャー」「介護福祉士」の資格を持っている人もたくさんいます。
ただし、「いずれそちらに職種を変える」「ほかの職種でも働けるようにしておく」ということではなく、あくまで「ケアマネジャーの仕事内容を理解していれば、看護の上でも役に立つ」「より一層、患者さんらのことを理解したい」ということのようです。
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5.訪問看護師で働くメリット・デメリット
5-1.メリット
訪問看護には病棟や外来とは違ったやりがいがあります。
入院病棟の場合、何人もの同僚がいて、しかも交代で勤務に入っています。
看護師さんからすると、その日その日で、ケアをする患者さんが違ってくるでしょう。逆に患者さんからすると、接する看護師さんは何人もいます。
また、多くのところは人手不足です。「あの患者さんに、もう少しこういったこともしてあげたい」と思ってもできません。それどころか、そういったことを考える暇さえないぐらいに、仕事に追われているかもしれません。
外来ならば、「3分診療」という言葉もあるぐらい、どんどん診察を回転させていかなければならない状態です。
一方、訪問診療の場合、基本的には一人の同じ看護師が同じ患者さんを担当しつづけます。互いに、「私の患者さん」「私の看護師さん」といった受け止め方ができます。
しかも患者さんの多くは長期の治療生活を送っています。
ですから、患者さんとの間で、しっかりとした人間関係が築けます。
「症状が軽くなった」「快方に向かっている」「リハビリがうまくいっている」といった時に、「自分のがんばりが結果を生んだ」といった手ごたえもしっかりと持てます。
また、「看護師の裁量権が大きい」というのを、ほかにはないメリットとして感じる人も多いようです。つまり、「自分の判断でいろいろなことができる」ということです。
もちろん、基本は「訪問看護指示書」に従ってケアをします。
ですが、横に医師がいて、「あれやって、これやって」と指示を出すわけではありません。先輩看護師や上司もいません。
比較的自由に、自分がやりたい・必要だと思うケアができるのです。
こういったところに、やりがいや満足を感じている訪問看護師は少なくありません。
5-2.デメリット
「仕事の大変さ」というのは、いろいろなところに出てきます。
たとえば、メリットの「裁量権が大きい」も、裏を返せば、「自分一人が責任を負っている」「何でもかんでもできなければならない」ということです。
また、カバーしなければならない疾病の範囲が広いです。「内科」とか「皮膚科」といったようには分けられていませんので。
看護・治療に使う機器も自分で操作しなければなりません。臨床を中心に経験したベテランの看護師さんでも、「病院時代には1回も使ったことのない機器が出てくる」といったことになります。
また、「看取りが多い」というのは、訪問看護ならではの特徴です。つまり、「患者さんが亡くなるのにかかわる」ということです。
特に最近、末期症状になった患者さんが、「自分の家で最後を迎えたい」と考えることが増えています。
この場合、「健康になることを目指して、看護師さんとともにがんばる」というのではなく、「どうやって平穏な死を迎えるか」が目的になります。
もちろん、自分の仕事も、退院ではなく、「患者さんが亡くなった」で終わります。
「だからこそ、質の高い看護を提供したい。力になりたい」という看護師さんと、「何回立ち会っても、患者さんの死には心が重くなる。つらすぎる」という看護師さんに分かれるようです。
6.訪問看護師への転職の注意
訪問看護ステーションは、経営の規模が小さいところも多く、また、その経営の形態も様々です。
比較的安心できるのは、大きな病院や老人ホームなどが、その一部門として訪問看護ステーションも経営している場合です。
こういった場合は、経営者や訪問看護ステーションの責任者にも、医療や看護への知識・経験があることが多いです。
一方、全くの異業種からの、新しく入ってきた業者・会社も少なくありません。「元は建築会社だった」といったところまであります。
こういった場合は、経営者や訪問看護ステーションの責任者には、全く医療・看護の知識がないことも珍しくありません。
また、その上に経営規模が小さいとなると、この知識のない人たちの個人的な考えに左右される度合いも大きくなります。
こういった訪問看護ステーションに所属する訪問看護師の間からは、「コストダウンばかりいわれて、必要な看護内容なのに、十分にはさせてもらえない」といった不満の声も聞こえてきます。
中には、「病棟勤務で体調を崩して、体力的には楽だと聞いた訪問看護師に転職した。だけども、1日に6 件も7件も回って、もうふらふら」といったところだってあります。
「異業種からの参入だから」というだけで、NGにするほどではありませんが、慎重にはなったほうがいいのは確かでしょう。
また、一般的には、「休日はカレンダー通り。夜勤もない」と説明されることの多い訪問看護師ですが、実際は違います。「中には日勤だけのところもある」ぐらいに考えておきましょう。
先に見たように、夜勤や土日にも対応しているのをセールスポイントにしているようなところもあります。「自宅待機」「オンコール待機」はむしろ常識になっています。
こうやって見ていく、「家の近所の訪問看護センターの求人が見つかった」といって、飛びついてはいけないことがわかります。
もし、本気で訪問看護ステーションへの転職を考えるのならば、看護師転職サポートをうまく利用しましょう。
それも、どこでもいいわけではなく、担当者が実際の現場を見ていて、持ってくる情報が具体的なところを選ばなければなりません。
看護師の側からの利用は無料です。いくつか登録してみて、その中から、信頼できそうなところを残せばいいでしょう。
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