老人ホーム看護師で働く!仕事内容・役割・給料。転職前にわかる業界おまとめ
看護師の資格がセールスポイントになる世界はどんどん広がっています。看護師さん側からしても、病院やクリニックなどの医療機関以外を転職先・復職先に選ぶ人が増えています。
「老人ホーム」もそのうちのひとつです。
ただ、「老人ホーム」という言葉で呼ばれているものには、実はたくさんの違う種類のものが含まれています。
それぞれに施設が作られている目的も違えば、そこで働く看護師の役割もやや違います。
転職先・復職先に考えるのならば、まずはそこから理解しておく必要があります。
目次
1.老人ホーム看護師の業務内容
1-1.老人ホームの種類
「老人ホーム」の名前が付いているもの、あるいは、ついていなくても同種のものと考えられているものには、次のようなものがあります。
①介護老人保健施設(老健)
病院からの退院直後など、自宅に戻る前に必要なリハビリなどのサービスを提供します。入所期間は3か月程度の短期が前提です。
運営しているのは、医療法人や社会福祉法人などです。
②特別養護老人ホーム(特養)
常に介護が必要で、自宅での介護が受けられない人のためのものです。亡くなるまでいる入所者が多いです。
運営しているのは、地方公共団体や社会福祉法人などです。
③有料老人ホーム
公的な団体が運営している特別養護老人ホームに対し、民間が運営するものをいいます。
内容は様々です。施設ごとに、ほとんど介護が不要な人が中心のところや、寝たきりに人までいるようなところなど、違いがあります。
医療の面でも、形ばかりのところがある一方で、クリニックを併設し、24時間態勢で看護師が対応しているところもあります。こちらも違いが大きいです。
④グループホーム
本来は「『施設』ではなく、『家』で、介護の必要な人たちが集団で暮らす形」をいいます。
今は特に認知症の人が対象の、小規模な施設を指すことが多いです。
⑤軽費老人ホーム
低料金で食事や日常生活のサポートを提供する施設です。
自立した生活ができる「A型」「B型」と、介護が必要な「ケアハウス」があります。
1-2.老人ホームでの医療について
これらのうち、まだしも医療機関(病院)に近いのが、①の介護老人保健施設です。
常勤の医師がいることが条件になっていて、「入所者100人未満の場合は、常勤1人。150人未満ならば常勤1人と、常勤0.5人相当の勤務状態の非常勤」などと最低限の人数も決められています。
正看護師・准看護師(看護職員)も最低人数が決められており、たとえば入所者が100人ならば、10人必要です。
②も看護師を置くことが義務になっています。必要な人数は介護老人保健施設よりは少なく、「入所者が30人以下の場合は常勤換算で1人以上、入所者が31~50人の場合は常勤換算で2人以上」などとなっています。
医師については「入所者に対し健康管理及び療養上の指導を行うために必要な数」とされているだけです。
実際には常勤の医師はおらず、嘱託医で済ませていることが大半です。
①と違い、「普段の生活の場」という面が強いです。
③の場合は、一般的なものならば、看護師医師についての決まりは全くありません。もし、「介護付有料老人ホーム」としているのならば、②と同レベルの看護師の人数が必要です。
④⑤もその形態に応じて、法律の上でも看護師が必要とされることがあります。
いろいろ申し上げましたが……①の介護老人保健施設以外は、日中の勤務時間帯であっても、医師がいないほうが普通……と考えておきましょう。
体調の悪い人がいても、看護師単独での医療行為はできません。これはこれらの施設の中であろうと、それ以外の場面であろうと同じです。
②~⑤のどれもが、必要なときは、連絡を取って嘱託医に来てもらったり、指示を受けて、その上で処置をすることになります。
普段の仕事としては、食事や入浴、排便の介助などが主です。そこにバイタルチェック、服薬の補助、医薬品の管理、褥瘡ケアなどが加わります。
①の介護老人保健施設はやや看護師本来の仕事も期待されます。それ以外は、「医療・看護のこともわかる介護スタッフの一人」と割り切ったほうがいいでしょう。
1-3.人材派遣について
最近は正社員・正職員だけではなく、パート・バイト、契約社員、人材派遣などでの募集も増えています。
老人ホームやそれに近い施設で働く場合、特に注意が必要なのは、人材派遣(労働者派遣)の場合です。
ほかの働き方は、施設に雇われ、給料もそこからもらう形になっています。ごく当たり前の形で、これを「直接雇用」といいます。
これに対し、人材派遣は「間接雇用」です。
あなたを雇っているのは、人材派遣会社になります。給料も人材派遣会社からもらいます。
なのに、職場は老人ホームなどで、仕事の指示も老人ホームの職員から受けます。
あなたは人材派遣会社から老人ホームに貸し出されているような状況なのです。
医療関係者は、ごくわずかの例外的な状況を除いて、この人材派遣(労働者派遣)は禁止されています。
↓看護師専門の派遣会社に登録する必要があります。
もし、一般の人材派遣会社の求人に応募し老人ホームなどに派遣された場合、看護師という身分でなければ看護師本来の仕事はできません。看護師免許は持っていても、「看護師ではない」という立場で働くことになります。。。
職場に医師がいて、「注射をお願い」された場合、法律違反になってしまうのです。登録先は注意しましょう!
2.老人ホーム看護師の給料
ここまでにご説明したように、「老人ホーム」と呼ばれているものにも、たくさんの種類があります。全部ひっくるめて、「給料(月給・ボーナス・年収)はこのぐらい」ということはできません。
これらの中で、給料が高くなる要素を持っているのが、③の有料老人ホームです。
この中には、「高級感」「キメの細かいサービス」「手厚い介護」などをセールスポイントにしているところがあります。
こういったところは、仕事に求められるレベルが高いですが、その分給料も高くなります。
一番わかりやすいのは、「24時間対応」でしょう。看護師も24時間対応になっているのならば、夜勤があり、夜勤手当が付きます。
ただし、病棟勤務ほどには忙しくはないのが普通です。「けっこう割がいい」というのが一般的な評価です。
また、急変した入居者への対応のために、「自宅待機」「オンコール待機」などのシステムを導入している有料老人ホームもあります。
月に数回程度、「呼び出しがあったらすぐに駆けつけられる」という状況にして、自宅にいたり、すぐに携帯電話に出られるようにしているものをいいます。
実際には呼び出しがなくても、「自宅待機手当」「オンコール待機手当」などの形で給料に積み増しされます。
高い給料を狙うのならば、これらの手当が手厚いところを探すようにしましょう。
それ以外のものは、あくまで全体的にということですが、「病棟勤務と比較してはもちろんのこと、外来勤務と比較しても安くなる」と考えていたほうがいいでしょう。
3.老人ホーム看護師に必要なスキル
ここまでに見たように、看護師本来の仕事はあまりありません。
特に医師が常駐していない場合や、いても自分が人材派遣会社から派遣されている状況では、診療補助もできません。
かといって、看護師としての経験が不要なわけではないのです。
いつもあることではありませんが、急変したり、症状が重い入所者がいれば、自分の判断で対応しなければなりません。
「即座に病院に送る」「このまま様子を見る」といった判断も任せられるでしょう。
もともと介護が必要な状況の人が相手です。ここで判断を間違うと、重大な結果を招きかねません。
観察力も重要です。
普段の生活のちょっとしたシグナルからも、入所者の異変を察知する必要もあります。「顔色が悪い」「食が細っている」といったことです。
介護士らも気をつけているでしょうが、医療・看護の専門家はほかにはいないのです。健康に関する役割は一手に引き受けることになります。
こういったことから、できれば、あまり専門を絞り込みすぎていない診療科出身の看護師さんのほうが歓迎されます。総合内科・一般内科ならば理想的でしょう。また、年齢で患者さんを区切っているだけで、疾病一般を診る小児科もこれに近いです。
普段の仕事は、いくら募集時に「看護師」となっていても、介護士に近いものになります。
お年寄りの身の回りの世話をしたり、話し相手になることも仕事の内です。
医療機関にいる時よりも、コミュニケーション能力は重要になります。
出産や育児で長期休職し、復職に自信が持てないようなママさんナースは少なくないでしょう。
「身の回りの世話」は子育てなどでも経験することです。老人ホームならば、むしろその休職中の経験が職場でも生きます。
↓有料老人ホームの看護師求人が多い、おすすめサイト。正社員中心です。
4.老人ホーム看護師の資格
老人ホームでの仕事は、むしろ介護士に近いものです。
「持っていれば仕事の上でも役に立つ」「面接などでもアピールできる」というも、やはり介護士関連のものです。
「ケアマネジャー(介護支援専門員)」がその代表です。
ケアマネジャーは「介護保険制度においてケアマネジメントを実施する有資格者のこと」とされています。介護サービスのプランを作るのは、このケアマネジャーの役割です。
老人ホームの看護師もこのケアマネジャーの指示で働くことが多いです。
「保健・福祉・医療分野での国家資格を持ち、5年以上、900日の実務経験」が受験のための条件になっています。中堅以上の看護師さんならば、そのままで大丈夫でしょう。
これ以外ならば、介護福祉士、社会福祉士、社会福祉主事任用資格などが考えられます。
5.老人ホームで働くメリット・デメリット
5-1.メリット
メリットとしては「基本的に日中の仕事である」というのが最大のものでしょう。
つまり、残業はあっても、夕方の時間に少し食い込むぐらいです。
ただし、有料老人ホームの一部などで例外はあります。24時間対応になっていて、夜勤があったり、自宅待機・オンコール待機になっている場合があります。
これはこれでメリットに考えることもできます。夜勤や呼び出しがあっても、病棟勤務ほどの激務にはなりません。それでいて、しっかりとお手当が付きます。
老人ホームなどに転職するとほとんどのところで、お給料はかなり減ります。このように夜勤などがあれば、病棟ほとんど変わらないレベルになる場合があります。
また、実際に転職した人の中には、「ゆっくりと患者さん(入所者)と向かい合うことができる」というのをメリットに挙げる人もいます。
病院の外来・病棟のように時間に追われているわけではありません。また、相手とは長い付き合いになりますし、日常生活全般にかかわることになります。
しっかりとした交流ができるでしょう。
5-2.デメリット
デメリットの第一が、「看護師としての知識・スキルが生きる場面が少ない」です。
先に申し上げたように、ほとんどの勤務先では、「医療や看護のこともわかる介護士」といったような扱いです。
体調の悪い入所者がいても、医師がいないのならば医療行為もできません。
嘱託医を呼ぶか、病院に送るかで自分の役割はほぼ終わりです。
これでは看護師としてのスキルを積んだり、知識を増やしたりはできません。
ですから、再度の転職には不利です。老人ホームなどに勤務していた期間は、休職と同じようにみなされるでしょう。
また、病院とは違った人間関係の難しさがあります。
病院でも医師、薬剤師、検査技師などほかの職種の人たちがいます。また、看護師は今でも大半が女性なので、女性同士ならではのやりにくさもあるでしょう。
とはいえ、相手は全部医療関係者です。看護師の仕事に対して、一定レベルの理解はあるはずです。
今度は周囲のスタッフのほとんどが介護士です。医療・看護への理解は一般の人とそう大きな違いはありません。
「ケアマネジャーが、看護師である自分に、わかっていもないのに、看護関係の指示をする」「介護士が目の前で入所者にとんでもないケアをしていて、ハラハラする」といった声も聞かれます。
6.老人ホームへの転職の注意
転職の際には、「月給・ボーナス・年収はいくらぐらいになるか」「お休みはしっかり取れるか」といったことは、自然と関心が行くでしょう。
・実際の仕事内容はどうなっているか・
・ほかのスタッフはどんな職種の人がいて、その人数はどうなっているか
・寝た切り、認知症など、どんな入所者が多いか
といったことも、しっかりチェックしないといけません。
同じように「介護老人保健施設」「特別養護老人ホーム」といっても、その中でも、施設ごとの違いがとても大きいのです。特に個別の違いが大きくなるのは「有料老人ホーム」です。要注意です。
「看護師としての仕事・役割が少なく、内容としては介護士に近い」というのは、これらの施設の特徴です。これに物足りない人もいるでしょう。
数は少ないですが、中には「看護師と介護士の役割はしっかりと区分けされている。看護師としての仕事に専念できる」というところもあります。
こだわりのある人は、じっくりと探すようにしましょう。
募集要項をいくら眺めていても、職場はイメージできません。どんな施設であろうと、どんな仕事内容を望んでいようと、見学は必ずするようにしましょう。
こういった情報を集め、見学などの手配をするのは大変です。これまで看護師さんとして過ごしてきたり、出産・育児などによる退職で、長い間家庭に専念してきた人には、とまどうばかりでしょう。
こういった時に、強い味方になってくれるのが看護師転職サポートです。
事前にたくさんの情報を持っているのが普通ですし、なければ集めてくれます。見学の手配をしてくれるだけではなく、面接のアドバイスをしてくれます。実際の面接にも同行してくれるのが一般的です。
ただし、どこの看護師転職サポートでもいいわけではありません。
中にはろくに情報を持っていなかったり、こちらの希望は無視して、どんどん話を進めてしまう業者もいます。
まずは登録して、実際に担当者とも話をしてみましょう。
もし、「あまり役に立ちそうにない」と判断できるようならば、以後は使わないようにします。看護師転職サポートも選んだほうがいいのです。
だからといって、1社だけに絞り込むのは、おすすめできません。
業者ごとにカバーしている施設の種類や、持っている求人案件が異なります。1社だけだと、気が付かないままになる求人も出てきてしまいます。
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