透析看護師で働く!役割・仕事内容・給料。転職前にわかる業界おまとめ
透析科の看護師は「専門性の高い」職場なのでここで働けるのか不安に思う人も多いですね。透析患者は全国に30万人もいて、しかも増え続けています。必要性も高く、やりがいのある職場でもあります。ここでは透析科の仕事をまとめてみました。
目次
1.透析科看護師の仕事内容
透析が必要になるのは、腎臓の機能が落ち、体内からの老廃物排出・血液中の水分調整ができなくなった人たちです。
この腎臓の働きを「透析機(ダイアライザー)」などにさせるのが、「人工透析」です。
担当する看護師の業務内容は次のようなものです。
①透析に使う機器の準備
②血管への針の穿刺(せんし)
③機器の操作
④透析中の患者の観察とトラブルへの対応
⑤日常生活面も含めての注意事項の説明
配属先としては、としては、「人工透析科」「人工透析センター」「透析室」などがあります。いずれも専ら人工透析だけをやるところです。
こういった一般病病棟と独立している形が多いのも、透析の専門性の高さの現れです。
また、独立させておらず、泌尿器科でカバーする場合もあります。ただし、この場合でも、透析を担当する看護師は、その専属になることが多いようです。
2.透析科看護師の給料
基本給に関しては、どこの診療科も同じようなものです。透析科にもこれといった特徴はありません。
どことも共通することですが、年収が高くなるかどうかは、「どういった部署に配属されるか」「どういった勤務形態か」によるところが大きいです。
つまり、「入院病棟に勤務して、夜勤の数をこなす。そうすることで、夜勤手当、残業手当がたっぷりつく」「外来専門のクリニックだと、勤務が楽な分、手当が少ない。給与は安め」です。
手当の多い・少ないが給料の差になります。
2-1.透析手当
ただし、透析科の場合は、それプラス「透析科独特の手当」があります。「透析手当」です。
この分、ほかの診療科よりも給料が高めになるでしょう。具体的な金額としては、月に1万円から3万円ということが多いようです。
この手当があるのは、病気を持った人の血液を扱うからです。担当者は感染の危険性と隣り合わせです。
つまり、透析手当は、危険手当の一種です。
3.透析科看護師に必要なスキル
透析科の看護師が特に意識しておかなければならないのが、「穿刺(せんし)」の技術と「透析機の操作」です。
3-1.穿刺
「穿刺」は、注射や血液検査、点滴などに付きもので、ほかの診療科でも必要なスキルです。ですが、透析科ではもう一段上のレベルが要求されます。
というのは、透析に使う針は、ほかのものよりも太いです。
しかも、患者さんの血管のコンディションはかなり悪いです。何しろ、週に3回程度、血液を出すためのカテーテルと血液を戻すためのカテーテルのために、普通よりも太い針を刺すのです。
また、患者さんがこの穿刺に向ける目も厳しいです。
このように実に頻繁に穿刺を受けます。また、どの患者さんもこれからも何年もこの状態が続きます。
担当の看護師さんが“注射”がうまいかどうかは、患者さんには決して一時の問題ではないのです。
3-2.透析機の操作
もう一つの「透析機の操作」についてです。
医療関係では、手術用機器、生命維持装置などの機器類を扱う「臨床工学技士」という国家資格もあります。
実際にスタッフとして置いている病院もたくさんあります。
透析機の操作に関しても、本来はこの臨床工学技士の仕事のようにも思えます。
ところが、実際の現場では、臨床工学技士と看護師の仕事の範囲の線引きはあいまいです。透析科の仕事で見る限り、臨床工学技士のやれることは、看護師もほぼできますし、実際にやっています。機械の操作は当たり前のように求められます。
たとえ臨床工学技士もいる職場環境であっても、「透析機の操作も一通りできないと仕事にならない」と考えておいたほうがいいでしょう。
4.透析科看護師の資格
透析科の看護師が、キャリアアップ・スキルアップのためにと意識する資格は、次の3つあたりでしょう。
①日本看護協会の「透析看護認定看護師」②日本腎不全看護学会の「透析療法指導看護師」
③国家資格の「臨床工学技士」
透析看護認定看護師、透析療法指導看護師
認定資格の注意点は、ほかの看護分野と同じです。
・病院によって資格取得に協力的なところと、そうでないところの両極端がある
・資格所有者に対する処遇も同様。給料がアップしたり、特別なポストを用意してくれるところがある一方で、全く変わらないところも多い。
このような状況ですから、「資格を意識した時点で、資格取得に協力的な病院への転職も同時に進める」「資格取得後は、資格をきちんと評価してくれる病院への転職を考える」といったことも必要になるでしょう。
臨床工学技士
資格を取るには、大学や専門学校の養成課程を修了する必要があります。一般からは3年制のコースになりますが、看護師の資格所有者は1年制のコースで済みます。どちらも夜間コースもありますから、夜勤のない職場の人には比較的取りやすい資格です。
ですが、先に申し上げたように、「透析科の中では」ということでいうと、資格がなくても、看護師はほぼ臨床工学技士の仕事をカバーしています。
また、慢性的な人手不足状態の看護師に比べ、 臨床工学技士はまだ採用の苦労は少ないようです。
これらのことから、「両方の資格を持っていても、それほどキャリアアップにはつながらない」というのが一般的な評価です。
5.透析科で働くメリット・デメリット
5-1.メリット
外来専門の透析クリニックや、総合病院の中でも透析専門の部署への配属になった場合、「夜勤なし。定時終わり。休日もカレンダー通り」と、一般のOLと変わらない生活ができます。ルーティン業務が多いので体は楽です。
透析を受ける患者さんの数は決まっていますし、予約制にもなっています。予定外のことが起きにくいのです。
その分、お給料は安めです。といっても、「透析手当」がつくところも多く、いくらかはそのマイナスを補ってくれます。
ただし、一部に例外はあります。
クリニックの中には、患者さんに便利なように、診察時間を遅くしていたり、土日に開院している場合もあります。
総合病院の場合は、透析担当の看護師も一般的な病棟勤務と同じ勤務体制になっていて、夜勤や残業がある場合もあります。
これらが問題になりそうな人は、転職の場合は、十分に確認したほうがいいでしょう。
透析機の扱いは、ほかの診療科との共通点はありませんので、最初は苦労するかもしれません。
ですが、透析科は「扱う疾病は腎臓関連のみ。治療・看護は透析のみ」という極めて限られた範囲だけをカバーします。
しかも同じことを繰り返します。
なので、「仕事内容は比較的シンプル。転職者も慣れるのに、そうは時間がかからない」というのもメリットと考えていいでしょう。
それでいて、専門性を極めるつもりになれば、「透析看護認定看護師」などの資格も用意されています。
5-2.デメリット
この専門性の高さは、逆にデメリットと出る場合もあります。
「看護師の基本的なスキル・知識」とされるものの中で、透析科で出番が多いのは穿刺です。これについては、求められるレベルが高いのもあって、うまくなる人も多いでしょう。
ですが、カバーする範囲が狭いために、それ以外はレベルが落ちると考えたほうがいいでしょう。
つまり、透析科での経歴は、そこから転職する場合にあまり評価してもらえない可能性があります。
また、「扱いの難しい患者さんが多い」というのは、この診療科ならではのデメリットです。
患者さんは、週に3度程度も病院に足を運び、針を刺され、何時間もじっとしていなければなりません。普段の生活にもいろいろと制約がかかっています。
いったん透析を受けるようになると、それは死ぬまで続きます。
患者さん側にすると、フラストレーションがたまる条件が全部そろっています。
そうでなくても、病気の特徴から、もともと高齢者が多く、わがままも出がちです。
中には、新人や若手の看護師に、「この病気に関しては自分のほうが詳しい」とごう慢な態度をとったり、「担当の看護師を変えてくれ」と無理をいうようなこともあります。
特に注射(この場合は、穿刺のこと)が下手だと、かなり苦しい立場になりがちです。
6.透析科への転職の注意
以上のことから、お分かりいただけるかもしれませんが、透析科はどちらかというと、中堅・ベテランの看護師さん向けの職場です。
特に新人として透析科でスタートした場合、その後の進む道が狭められてしまったり、苦労することも多いようです。
また、「仕事内容が限られている」「ほかの診療科との普段の行き来も少なく、職場の雰囲気が独特」「医師、看護師だけではなく、臨床工学技士もいるので、人間関係がやや難しくなりがち」といった特徴もあります。
そのため、向き・不向きがはっきりと出る職場です。
ただし、「向いている」となったら、この専門性はかなり強力です。
この先、転職や休職があっても、次の職場は比較的容易に見つけることができるでしょう。転職先での仕事にも溶けこむのも早いです。
専門性を高めるのは、キャリアアップの有力な方法です。ただし、危険性もあります。「専門性が高くなればなるほど、ほかの診療科では通用しにくくなり、転職が難しくなる」ということですね。
ですから、専門性を求める場合、「将来もその分野の仕事がある」というのが大事です。透析科の看護師はこの点大丈夫です。
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