膀胱内留置カテーテル

ポイント①「目的」

排尿用のカテーテルは、2種類あります。

一回ごとに使うものを「尿道カテーテル」、何日も付けたままにするものを「膀胱内留置カテーテル」と呼びます。

「膀胱内留置カテーテル」は先端にバルーン(風船)がついていて、それを膀胱内でふくらませることで抜けないようにします。

以前は、いったん設置したら、2週間程度使い続けるのが一般的でした。現在では「必要があればその都度替える」といったように変わってきています。

使う必要があるのは、前立腺肥大、脊髄障害などで自力での排尿が困難になった患者さんです。全身麻酔での手術の際に使う場合もあります。

ポイント②「用意するもの」

・カテーテル
・蓄尿バッグ
・滅菌手袋
・綿棒
・消毒液
・鉗子
・潤滑剤
・タオル・ガーゼ
・処置用シーツ
・ワッサー(蒸留水)
・シリンジ

また、「カテーテル留置の作業をする場所」の用意も必要です。

ほかの患者さんらからは見えないように、ベッドの周囲をカーテンやスクリーンで覆いいます。

ポイント③「カテーテルの種類」

A.「フォーリーカテーテル」

最も一般的な膀胱内留置用のカテーテルです。素材や柔らかさなど、体への負担が少ないように工夫されています。

B.チーマンカテーテル

Aと比べると、硬めの素材が使われています。また、先端部分にカーブが付けられています。

Aではなかなか挿入しにくい、前立腺肥大の患者さんなどに使います。

C.ツーウェイフォリーカテーテル・スリーウェイフォーリーカテーテル

排尿のため以外に、膀胱の洗浄などほかの機能をもたせたものをいいます。

ポイント④「手順・女性の場合」

・カーテンやスクリーンで囲うなど場所を準備する

・手指を消毒し、マスクやエプロンなどをつける

・できることならば、患者さんの陰部を洗浄する

・「糞尿バッグのクランプが閉じているか」「バルーンが膨らむか」など、道具類をチェックし、配置する

・糞尿バッグとカテーテルを連結し、糞尿バッグは膀胱よりも低い位置に固定する

・患者さんの下半身の下に処置用シーツを敷く

・患者さんには仰向けでひざを立ててもらう

・もう一度手指を消毒する。また、滅菌手袋はここではめる

・患者さんの陰部を露出させ、消毒液を染みこませた綿棒で消毒する

・左手(利き手ではない方)で、小陰唇を開き、その状態を維持する

・右手(利き手)で鉗子を持ち、尿道口を消毒する

・カテーテルに潤滑剤を塗り、それを4、5センチ挿入する

・糞尿バッグに尿が入り始めたのを確認したら、さらに2、3センチ奥に入れる

・左手を放す。シリンジを使い、バルーン内にワッサーを注入する

・軽く抜き差しして、バルーンが効いて、カテーテルが固定されたか確認する

・ここまで使っていた手袋は外す。手指を消毒した上で、新しい手袋をはめる

・必要ならばカテーテルを太ももか下腹部にテープで固定する

・患者さんに留置中の注意事項を説明する

気をつけるべきことは、「尿道・膀胱などを傷つけないこと」「衛生を保つこと」です。

「衛生を保つ」ためには、カテーテルなど体内に入れる道具類は右手で扱い、陰部を押さえるなど不潔になりがちな作業は左手でする、といった工夫が必要です。

ポイント⑤「手順・男性の場合」

男性の場合も手順はほぼ同じです。

ただし、カテーテルの挿入は、2回以上に分けず、最初に全量挿入します。

外に出ている部分の固定も、女性の場合とは違う注意が必要です。

女性の場合は、太ももにテープで固定しても大丈夫です。男性の場合は、必ず下腹部にし、ペニスが上を向いた状態を保ちます。

下に向けてしまうと、ペニスや陰嚢に圧力が常に加わり、潰瘍などを起こす可能性があります。

ポイント⑥「ありがちな失敗」

尿路感染

膀胱や尿道などへ細菌類を入れてしまった場合に起こります。

それらの細菌類はカテーテルについていた場合もあれば、留置した後に糞尿バッグなどの接続のすき間から入ることもあります。

尿道損傷

無理にカテーテルを挿入しようとした際に、周囲を傷にしてしまうパターンです。

特に「チーマンカテーテル」を使う場合に要注意です。

陰部潰瘍・びらん

長期間カテーテルを使用するほど、これらの可能性が高まります。

テープでの固定場所を毎日移動させるなどし、尿道などの圧力がかかる場所をずらすことで予防できます。

尿道狭窄

尿道を傷つけたり、褥瘡を起こすと、それを修復した跡が厚みを持ち、尿道が狭くなることがあります。

こうなると、カテーテルを抜いた後の自力での排尿が困難になります。

膀胱結石

膀胱の中にカテーテルがあることで、尿の中の物質が結晶化しやすくなります。これらがかたまったものが膀胱結石です。

尿の濃度が高いほど作りやすいので、水分を多く取ることで予防できます。

また、「スリーウェイフォーリーカテーテル」などを使い、膀胱内を洗浄し、結石になる前に、膀胱内に沈殿している物質を洗い流す方法もあります。

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