血液培養検査(血培)
ポイント①「目的」
「血液培養」とは……
患者さんの血液を採取し、ボトルなどの容器に移す。その容器の中で、血液に混じっている細菌などの微生物を増殖させる
……ことをいいます。
ボトルの中には、栄養分を含んだ「培地」が入っています。微生物を5日程度育て、それから血液を検査します。これが、「血液培養検査」です。
微生物は、そのままの濃度や個体数では検査に引っかからないことが多いのです。増殖させることで検査の精度を高めます。
また、「そこまでやっても見つからないのならば……」ということで、「体の中にこの微生物はいない」という判断も、単純な血液検査よりは間違いが少なくなります。
この検査で見つかる、あるいは見つかる可能性が高くなる微生物としては、緑膿菌、ブドウ球菌、破傷風菌、肺炎球菌、A群溶連菌、腸内細菌科の菌(大腸菌など)、インフルエンザ桿菌、バクテロイデス、カンジダなどがあります。
病名や症状でいえば、敗血症、髄膜炎、肺炎、感染性心内膜炎、化膿性関節炎、カテーテル関連感染症、腹腔内感染症、インフルエンザなどです。
ポイント②「準備するもの」
血液が必要ですから、シンプルな血液採取と同じものは一通り必要です。
・滅菌手袋
・駆血帯
・消毒綿
・注射針
・シリンジ
・止血用テープ
・止血用アルコール綿
・トレー
……などです。
これに加えて、培養のためのツールがあります。
・血液培養ボトル
このボトルは通常、「好気性菌用」と「嫌気性菌用」の2種類あります。このふたつで1セットです。
これを2セット用意するのが一般的です。つまり、1回の血液培養検査で4本のボトルを使います。
「好気性菌」とは呼吸のために酸素を必要とする菌のことをいいます。また酸素がないと増殖できません。血液培養検査の対象となるものでは、緑膿菌が代表的なものです。
逆が「嫌気性菌」です。同様に破傷風菌があります。
これら以外に、酸素があってもなくても増殖する「通性菌」があります。これも含めて、ボトル2種類で対応します。
ポイント③「手順①」
血液培養検査の作業はほとんどが採血と同じです。その手順やコツは次のようになります。
・太くて真っすぐな血管を選ぶ
・目で見るだけではなく、必ず手で押してみて弾力などを確かめる
・使いやすい血管が見つからなければ、「血管怒張」を行う
・血管怒張には、「駆血帯を使う」「マッサージをする」「クレンチングをしてもらう」「ホットパックなどで温める」などがある
それ以外に、針の刺し方、抜き方、止血処理なども一般的な採血と同じです。
ポイント④「手順②」
一般的な採血との違いが出てくるのは、培養に関する部分です。
・針を刺したり、抜いたりする際に、皮膚や消毒綿に針が触れないようにする。そうしないと、血液以外のところから菌が混じる。たとえ、少ない量の菌でも、培養するために量が増えて、検査結果に影響を与える
・同じ理由から、血液培養ボトルの消毒を徹底する。事前の準備はもちろんのこと、採血の際にも、ゴム栓などをしっかりと消毒する
・採取した血液をボトルに入れる。先に嫌気性菌用のボトルに入れ、次が好気性菌用にする。そうすることで、注射器の中にある空気を嫌気性菌用のボトルに入れることが少なくなる
・採血は複数の部位からする。例えば最初が左手ならば、次は右手を使う
・ボトルに入れる血液の量に注意する。多すぎても少なすぎても検査結果に影響が出る可能性がある
ポイント⑤「ありがちな失敗」
最もありがちな失敗は「コンタミ(コンタミネーション)」です。直訳すると「汚染」です。
血液の中ではなく、皮膚の表面にいる常在菌や、ボトルについていた環境菌を拾ってしまい、それが検査で出てくるパターンです。
また、このよそから拾ってしまった菌のことも「コンタミ」と呼ぶこともあります。
コンタミがあるかどうかは、「通常ならば血液中にいない菌まで検出される」「検出されるのならば、2セットあるうちの片方だけかどうか」などで判断します。
「通常ならば血液中にいない菌」とされるのは、表皮ブドウ球菌、セレウス菌、アクネ菌(ニキビ菌)などです。
これらが検出された場合、ほかの菌も「血液以外から来ているかもしれない」と考えてみる必要があります。
ただし、困ったことに、いずれも血液中にいる可能性がゼロではありません。実際にこれらが検出された場合は、かなり難しい判断になります。
また、コンタミに加えて、採血一般のトラブルも警戒しなければなりません。
「皮下血腫を作ってしまう」「注射針を突き刺すことで、血管や神経を傷つける」「患者さんがショック症状を起こしてしまう」などが考えられます。