腎瘻に関する基礎知識、2分でわかるおまとめ。
目次
1.腎瘻(じんろう)・腎瘻手術とは
尿管などにトラブルのせいで、尿が出にくくなることがあります。そうなると、尿を濾(こ)し出し、尿管へと送っている腎臓に尿がたまります。
このトラブルがすぐに治りそうにない場合、腎臓と尿管のつなぎめにある腎盂(じんう)にカテーテルを挿し、尿管や膀胱を通らず、直接外に出す方法を採ることがあります。
この仕組みが腎瘻(じんろう)です。また、このための手術を腎瘻造設術や腎瘻手術と呼びます。
2.腎瘻が必要になる病気や症状
尿の出が悪くなり、腎臓にまでダメージを与える場合、原因となる部位には、腎盂、尿管、膀胱、尿道などがあります。いずれも診療科としては、泌尿器科がカバーします。
2-1.腎盂で発生する原因
・構造上の異常がある(尿管が高すぎる位置で腎盂につながっている・体の中での腎臓の位置が低すぎる)
・腎盂の中に結石や血栓がある
・周囲の血管や腫瘍(がん)が腎盂を圧迫している
2-2.尿管や膀胱で発生する原因
・尿管・尿道などの中に結石や血栓がある
・中や周囲にできた腫瘍(がん)のために、尿管や膀胱が変形する
・先天異常や外傷などで、尿管などが狭くなる
・尿管や膀胱などの筋肉や神経の障害がある
・前立腺肥大や便秘のせいで、尿管や膀胱が圧迫されている
これらのうち、腎瘻が検討されるのは、腎盂や尿管でのトラブルの場合です。膀胱がんや重度の間質性膀胱炎で、膀胱を取り除いた場合も含まれます。
より下流の膀胱の出口や尿道が詰まっている場合、膀胱瘻になります。腎盂ではなく、膀胱にカテーテルを挿入し、そこから直接外に尿を出すのです。
3.尿管ステントとは
原因が腎盂や尿管にある場合、腎瘻よりも先に検討されるのは、尿管ステントです。
腎盂と膀胱を直径1.5~2ミリのステントと呼ばれる管でつなぎます。
ステントは尿管の中を通します。手術は内視鏡の一種・膀胱鏡を性器の先から挿入して行います。
膀胱や尿道はそのまま使いますので、尿は通常と同じく性器から出します。
この影響で感染症にかかりやすくなったり、ステント自体が詰まることもあります。
使うのは長くて2週間前後です。使い終わりには、もう一度手術して取り外す必要があります。
4.腎瘻の手術
4-1.腎臓から直接尿を外へ
腎瘻は、この腎臓ステントの手術が無理だったり、使用する期間が長くなりそうなときに使われます。
体の外からカテーテル(管)を通し、腎盂にまで届かせます。カテーテルの根元側は、腰の背中側から出た状態になります。尿は専用のバッグ(集尿袋)で受けます。
実際の手術では、超音波で腎臓の位置を確認しながら、まずは針を刺して穴を開けます。先にガイドワイヤを入れ、その助けでカテーテルを通します。
皮膚をカテーテルが突き抜けることから、「経皮腎瘻造設」などの言い方もします。
4-2.日帰り手術が基本
体のコンディションや腎瘻が必要になった原因にもよりますが、多くの場合、日帰り手術で済みます。手術時間そのものは30~60分程度です。
腎瘻は生涯使うこともあります。もちろん、尿が詰まっている原因が解決すれば、取り外すことができます。
5.腎瘻の注意点
5-1.カテーテルの扱いに注意
手術直後は、1~2週間は入浴はできません。
また、何よりも問題になるのが、カテーテルの扱いです。どうしても異物感があります。うっかり引き抜いてしまったり、折り曲げてしまいがちです。
この時期を過ぎると、カテーテルが接する部分に、瘻孔壁(ろうこうへき)ができ、安定します。
ただし、この状態になった後も、カテーテルが抜けてしまうと、通すための穴もふさがってしまいます。もちろん、腎臓の中の尿も抜けなくなります。
この場合は、再び手術が必要です。もし、何度も抜いてしまったり、抜けている期間が長くなると、尿で腎臓がふくらむ水腎症なども心配されます。
5-2.清潔を保つこと
カテーテルの挿入部分は、絆創膏(ばんそうこう)やガーゼを張り、皮膚に固定しています。
この部分の定期的な消毒も必要です。特に瘻孔壁ができるまでは、慎重に扱わなければいけません。
その後も、1日に1度、ガーゼを交換するようにします。
5-3.カテーテル・バッグ(集尿袋)の構造
この腎瘻に用いるカテーテルには、いくつかの種類があります。
一般的にはシリコン製の腎盂バルーンカテーテルが使われます。先端にバルーン(風船)がついていて、これが膨らむことで、腎盂から抜けにくくなります。
逆側の先端は体の外に出ていて、常にバッグ(集尿袋)をつないでおきます。ここに尿がたまります。その中身は一杯になる前に捨てます。
バッグは必ず腰よりも下にします。でないと、尿が体の中へと逆流します。
このカテーテルやバッグの交換は3~4週間に1度です。古いものをそのまま使ったり、挿入部分を不衛生にすると、感染症にかかる可能性が高くなります。
6.ほかの治療法
排尿の機能が不十分な場合、腎瘻・尿管ステント・膀胱瘻以外にも採られる方法があります。
6-1.回腸導管
小腸の一部である回腸を15~20センチ、体の中で切り取ります。この途中部分に左右の尿管の先端をつなぎます。
回腸の上流側をふさぎ、下流側はおなかの皮につなぎます。これが排出口になります。ここに専用の装具を付け、さらにバッグ(集尿袋)へとつなぎます。
6-2.尿管皮膚瘻(にょうかんひふろう)
尿管を直接、おなかの皮につなぎ、排出口をつくります。左右ふたつ分作る場合と、左右をまとめてひとつにする場合があります。
専用の装具を付けることなどは、回腸導管と同じです。
6-3.腎瘻は尿路ストーマの一種
腎瘻・膀胱瘻・回腸導管・尿管皮膚瘻の4つをまとめて、「尿路ストーマ」と呼びます。「ストーマ(Stoma)」とは排泄口のことです。
バッグ(集尿袋)が膀胱の代わりをすることから、「人工膀胱」を意味する「ウロストミー(Urostomy)」の言葉も使われます。
また、この人工の排泄口・膀胱を持っている人を「オストメイト(Ostomate)」と呼びます。ただしこの場合は、人工肛門を持っている人まで含みます。
尿管ステント以外の腎瘻・膀胱瘻・回腸導管・尿管皮膚瘻のどの場合も、尿道を使いませんので、尿を止める機能はありません。その分管理が難しくなります。
最初は手術を受けた泌尿器科などの指導を受けながら、本人や家族が扱い方の練習もしなければなりません。
オストメイトの治療は長期になり、普段の生活にも不便なことが増えます。そのため、障害者手帳、障害年金、医療控除などの社会福祉制度が利用できます。
手続きの問い合わせ先は、市町村の福祉事務所や年金窓口、税務署などです。