老人看護専門看護師について

1.現状

専門看護師は現在11の分野に分かれています。「老人看護専門看護師」は2002年に始まりました。今はまだ79人しかいません。

ただ、世の中は高齢化社会です。これから老人看護専門看護師が活躍する場は次第に増えていくでしょう。

2.老人看護専門看護師の看護分野

2-1.看護分野

「老人看護専門看護師」の「分野の特徴」として、日本看護協会では……

高齢者が入院・入所・利用する施設において、認知症や嚥下障害などをはじめとする複雑な健康問題を持つ高齢者のQOLを向上させるために水準の高い看護を提供する。

……としています。

「QOL」とは「 quality of life(生活の質)」のことです。

これらの言葉からわかるように、「老人看護」とはかなり広い範囲をカバーしています。

2-2.認定看護師との違い

認定看護師の方で、これに当たるものといえば……

「認知症看護認定看護師」 「摂食・嚥下障害看護認定看護師」 「皮膚・排泄ケア認定看護師」

……あたりになるでしょうか。ピッタリと同じ看護分野になるものはないですね。

後でご紹介する大学院での授業科目をみればわかるように、専門看護師ではこれらのすべてを含んでいます。

また、全体的なことで「認定看護師と専門看護師の違う点」はいくつかあります。

最も大まかには、「認定看護師は自身も臨床の現場のスタッフとなり、看護に当たる。専門看護師はそれプラス、マネジメントまで求められる」と考えておけばいいでしょう。

「マネジメント」は「ほかの看護師を部下として指示・指導・教育する。その部署の責任者となる」ということです。

3.大学院では何を学ぶか

もう少し具体的に「老人看護専門看護師には何が求められるか」を知るために、大学院での授業科目をチェックしてみましょう。。

3-1.授業科目

この授業科目やその内容は看護分野ごとに、一般社団法人「日本看護系大学協議会」が細かく決めています。

A  専攻分野共通科目

1.老年健康生活評価に関する科目 2.老年と家族の看護に関する科目 3.老年サポートシステムに関する科目 4.老年保健福祉政策に関する科目

B  専攻分野専門科目

1.病院・施設における老年看護に関する科目 2.在宅における老年看護に関する科目 3.認知症老年看護に関する科目

C  実習科目

「専攻分野共通科目」は4つとも必修です。「専攻分野専門科目」はこのから2つを選択するようになっています。

CNS共通科目

看護教育論、看護管理論、看護理論、看護研究、コンサルテーション論、看護倫理、看護政策論

……が用意されています。

「CNS」とは「Certified Nurse Specialist(専門看護師)」の頭文字です。

つまり、「CNS共通科目」とは「老人看護専門看護師に限らず、ほかの分野の専門看護師でも修める必要がある科目」ということです。

これもこの中からいくつかを選択するようになっています。

こういった形で老人看護専門看護師のための科目を用意していた大学院は、2015年の場合で30数か所ありました。

4.実務研修

専門看護師の資格試験を受けるために、もうひとつ条件となっているのが「実務研修」です。

①看護師の資格取得後、通算5年以上実務研修をしていること。そのうち通算3年以上は専門看護分野の実務研修であること。

②専門看護分野においてa~fの内容の実務研修をしていること  a 個人、家族及び集団に対する直接的な看護実践  b 看護者を含むケア提供者に対するコンサルテーション  c 必要なケアが円滑に行われるための、保健医療福祉に携わる人々の間のコーディネーション  d 個人、家族及び集団の権利を守るための、倫理的な問題や葛藤の解決をはかる倫理調整  e ケアを向上させるための、看護者に対する研修会、研究指導及び講演会等での活動を含む多様な教育的機能  f 専門知識及び技術

③現在、常勤、非常勤を問わず看護実践を行っていることが望ましい。

この①~③を満たさなければなりません。

また、老人看護専門看護師の場合、この「専門看護分野……実務研修」は、「高齢者の入院・入所・利用者が多い施設や場での、老人看護の実務研修」と指定されています。

これはほかの看護分野に比べると、そうむずかしくはない条件です。

「クリティカルケアを要する患者が50%以上を占めている病棟等でのクリティカルケア看護の実務研修。1年以上は成人領域とする」(急性・重症患者看護専門看護師)としているような場合もありますから。

①と③は認定看護師でも同様の条件が付けられています。

専門看護師の場合は、②のa~fについて、すべて文章にして提出し、審査を受けることになります。

5.専門看護師の合格率は?

大学院の修士課程を終え、実務研修も条件を満たしたならば、ようやく老人看護専門看護師の資格試験を受けることができるようになります。

まずは一次審査として書類選考があります。

ここで②に挙げたa~fがチェックされます。

それをパスすれば、二次審査に進みます。ここでは「看護実績報告書」(修士論文、教育活動報告など)を提出し、論述式の筆記試験を受けます。

このように資格試験はかなり内容の濃いものになっています。

ですが、受験資格を得るための準備をしている間に自然とそろうようなものばかりです。

あくまで老人看護専門看護師だけではなく専門看護師全体での数字ですが、合格率は例年95パーセント以上になっています。

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