感染症看護専門看護師について

1.背景

2006年に誕生

専門看護師の制度に、「感染症看護専門看護師」が加わったのは、2006 年です。その年のうちに、第一号の専門看護師が出ました。

ですが、今に至るまで、感染症看護専門看護師の数は多くなく、2015年1月現在で32人です。

「あまり活躍の場もないのでは?」なんて考えてしまう人もいるかもしれません。

ですが、「院内感染」などの医療関連感染への対策、「HIV感染症治療」などの難治性の感染症患者の看護など、その必要性の高さは徐々に認められつつあります。

どれだけ増えていくかは、今はまだ数の少ない感染症看護専門看護師たちがどれだけ存在感を示すかにかかっている、といえそうです。

2.感染症看護専門看護師の看護分野

2-1.内容

「感染症看護専門看護師」の「分野の特徴」として、この制度を主催している日本看護協会では

施設や地域における個人や集団の感染予防と発生時の適切な対策に従事するとともに感染症の患者に対して水準の高い看護を提供する。

としています。

2-2.感染症看護専門看護師との違い

この専門看護師に興味を持った人が、ほかにも気になりそうなものといえば、「認定看護師」でしょう。

この「感染症看護専門看護師」にちょうど対応するのが、「感染管理認定看護師」です。

こちらの場合は、求められる「知識と技術」として

・医療関連感染サーベイランスの実践 ・各施設の状況の評価と感染予防・管理システムの構築

が挙げられています。

感染管理認定看護師の方が5年ほど先に作られています。さらに感染症看護専門看護師が作られるときは

認定看護師のレベルでの仕事は当然こなし、その上に組織の中核となって対応する。個人や集団の感染を予防する。発生した場合は高度な感染管理、看護を行う

とされました。明確に認定看護師のさらに上に立つ存在と意識されています。

違う言い方をすれば、「認定看護師は自身も臨床の現場のスタッフとなり、看護に当たる。専門看護師はそれプラス、マネジメントまで求められる」といったところです。

「マネジメント」は「ほかの看護師を部下として指示・指導・教育する。その部署の責任者となる」ということです。

3.大学院の授業科目

もう少し具体的に「感染症看護専門看護師には何が求められるか」を知るには、大学院での授業科目をチェックすればいいでしょう。

この授業科目やその内容は専門分野ごとに、「一般社団法人日本看護系大学協議会」が細かく決めています。

B  専攻分野専門科目

1.感染基礎に関する科目

2.応用無菌法に関する科目

3.感染症看護に関する科目

4.感染防止法に関する科目

C  実習科目

ほかの専門看護師の場合は、A 専攻分野共通科目 が指定されています。

ですが、「感染症看護」の場合は、B「専攻分野専門科目」だけです。この中から必要な単位の分、科目を選択することになります。

CNS共通科目

また、「CNS共通科目」として

看護教育論、看護管理論、看護理論、看護研究、コンサルテーション論、看護倫理、看護政策論

が用意されています。

「CNS」とは「Certified Nurse Specialist(専門看護師)」の頭文字です。

つまり、「CNS共通科目」とは「感染症看護専門看護師に限らず、ほかの分野の専門看護師にも修める必要がある科目」ということです。

これもこの中からいくつかを選択するようになっています。

こういった形で感染症看護専門看護師のための科目を用意している大学院は、2015年の場合で約13か所でした。

家族支援専門看護師の6か所に比べればまだいいほうです。ですが、少ないのも確かです。地元にない場合は、引っ越しなども考える必要が出てくるでしょう。

4.実務研修

専門看護師の資格試験を受けるために、もうひとつ条件となっているのが「実務研修」です。

①看護師の資格取得後、通算5年以上実務研修をしていること。そのうち通算3年以上は専門看護分野の実務研修であること。

②専門看護分野においてa~fの内容の実務研修をしていること

a 個人、家族及び集団に対する直接的な看護実践

b 看護者を含むケア提供者に対するコンサルテーション

c 必要なケアが円滑に行われるための、保健医療福祉に携わる人々の間のコーディネーション

d 個人、家族及び集団の権利を守るための、倫理的な問題や葛藤の解決をはかる倫理調整

e ケアを向上させるための、看護者に対する研修会、研究指導及び講演会等での活動を含む多様な教育的機能  f 専門知識及び技術

③現在、常勤、非常勤を問わず看護実践を行っていることが望ましい。

この①~③を満たさなければなりません。

また、感染症看護専門看護師の場合、この「専門看護分野……実務研修」は、「患者を含む家族を対象として研修できる感染管理のための組織システムを再構築することや感染管理活動を推進することが可能な医療施設等での感染管理の実務研修と複雑で困難な問題を有する感染症患者に対する感染看護の実務研修」と指定されています。

①、②、③とも認定看護師でも同様の条件が付けられています。

それらに比べると、同じようなものか、むしろあいまいな指定になっています。

だからといって、だからといって、「どこでもいいのか」とは考えないようにしましょう。

「認定看護師に比べて、個人個人をしっかりとチェックする。だから、指定の仕方も認定看護師のように一律に『5例以上の看護にあたったことがあること』といったようなシンプルなものにはならない……と考えたほうが良いでしょう。

そうだからこそ、専門看護師の場合は、②のa~fについてすべて文章にして提出し、審査を受けることになります。

5.専門看護師の合格率は?

大学院の修士課程を終え、実務研修も条件を満たしたならば、ようやく感染症看護専門看護師の資格試験を受けることができるようになります。

まずは一次審査として書類選考があります。

ここで②に挙げたa~fがチェックされます。

それをパスすれば、二次審査に進みます。ここでは「看護実績報告書」(修士論文、教育活動報告など)を提出し、論述式の筆記試験を受けます。

このように資格試験はかなり内容の濃いものになっています。

ですが、受験資格を得るための準備をしている間に自然とそろうようなものばかりです。

あくまで感染症看護専門看護師だけではなく専門看護師全体での数字ですが、合格率は例年95パーセント以上になっています。

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