家族支援専門看護師について

2008年、10番目の専門看護師として作られたのが、この「 家族支援専門看護師」です。資格の所有者はまだ多くなく、2015年1月現在で、37人です。

(ちなみに最も多いのは「がん看護専門看護師」の581人、次に精神看護看護師の207人です。)

1.家族支援専門看護師の看護分野

1-1.内容

家族支援専門看護師」の「分野の特徴」として、この制度を主催している日本看護協会では……

患者の回復を促進するために家族を支援する。患者を含む家族本来のセルフケア機能を高め、主体的に問題解決できるよう身体的、精神的、社会的に支援し、水準の高い看護を提供する。

……としています。

1-2.認定看護師との違い

この専門看護師に興味を持った人が、ほかにも気になりそうなものといえば、「認定看護師」でしょう。

一般的に専門看護師と認定看護師で同じような分野があったり、専門看護師のほうがいくつかの認定看護師の分野をカバーすることが多いです。

ですが、この家族支援専門看護師の場合は特に対になるような認定看護師はありません。

というよりも、「家族支援」ですから、「どういった病気の治療の時にも関係する」ともいえます。

また、「認定看護師と専門看護師とでの一般的な違い」というものもあります。

最も大まかには、「認定看護師は自身も臨床の現場のスタッフとなり、看護に当たる。専門看護師はそれプラス、マネジメントまで求められる」と考えておけばいいでしょう。

「マネジメント」は「ほかの看護師を部下として指示・指導・教育する。その部署の責任者となる」ということです。

2,大学院の授業科目

もう少し具体的に「家族支援専門看護師には何が求められるか」を知るには、大学院での授業科目をチェックすればいいでしょう。

この授業科目やその内容は専門分野ごとに、「一般社団法人日本看護系大学協議会」が細かく決めています。

A  専攻分野共通科目

1.保健医療福祉制度のなかでの家族看護の役割、位置づけに関する科目 2.家族の健康及び生活に関する科目 3.家族への看護実践展開に関する科目 4.家族看護援助の方法に関する科目

B  専攻分野専門科目

C  実習科目

Bの「専攻分野専門科目」もほかの専門看護師の場合は、科目が具体的に指定されています。

ですが、「家族支援」の場合は、「専門領域に関する科目は各大学で提示できる領域とする」とされています。「大学院の方で自由に決めていい」ということです。

これにはすこし注意が必要です。「大学院ごとにやっている内容が違う」ということです。

ですから、一校ずつカリキュラムをチェックして、自分の興味のある分野、自分が特に専門の中心にしたい分野の授業があるかどうかを確かめたほうがいいでしょう。

CNS共通科目

看護教育論、看護管理論、看護理論、看護研究、コンサルテーション論、看護倫理、看護政策論

…が用意されています。

「CNS」とは「Certified Nurse Specialist(専門看護師)」の頭文字です。

つまり、「CNS共通科目」とは「家族支援専門看護師に限らず、ほかの分野の専門看護師にも修める必要がある科目」ということです。

これもこの中からいくつかを選択するようになっています。

こういった形で家族支援専門看護師のための科目を用意している大学院は、2015年の場合で約6か所でした。

今後増えていくと考えられます。が、地元にない場合は、引っ越しなども考える必要が出てくるでしょう。

3.実務研修

専門看護師の資格試験を受けるために、もうひとつ条件となっているのが「実務研修」です。

①看護師の資格取得後、通算5年以上実務研修をしていること。そのうち通算3年以上は専門看護分野の実務研修であること。

②専門看護分野においてa~fの内容の実務研修をしていること

a 個人、家族及び集団に対する直接的な看護実践  b 看護者を含むケア提供者に対するコンサルテーション  c 必要なケアが円滑に行われるための、保健医療福祉に携わる人々の間のコーディネーション  d 個人、家族及び集団の権利を守るための、倫理的な問題や葛藤の解決をはかる倫理調整  e ケアを向上させるための、看護者に対する研修会、研究指導及び講演会等での活動を含む多様な教育的機能  f 専門知識及び技術

③現在、常勤、非常勤を問わず看護実践を行っていることが望ましい。

この①~③を満たさなければなりません。

また、家族支援専門看護師の場合、この「専門看護分野……実務研修」は、「患者を含む家族を対象として研修できる病棟、外来、その他施設、地域、在宅等と する」と指定されています。

①、②、③とも認定看護師でも同様の条件が付けられています。

それらに比べると、同じようなものか、むしろあいまいな指定になっています。

だからといって、だからといって、「どこでもいいのか」とは考えないようにしましょう。

「認定看護師」に比べて、個人個人をかなりしっかりとチェックする。だから、指定の仕方も一律に「5例以上の看護にあたったことがあること」といったようなシンプルなものにはならない……と考えたほうが良いでしょう。

そうだからこそ、専門看護師の場合は、②のa~fについてすべて文章にして提出し、審査を受けることになります。

4.専門看護師の合格率は?

大学院の修士課程を終え、実務研修も条件を満たしたならば、ようやく家族支援専門看護師の資格試験を受けることができるようになります。

まずは一次審査として書類選考があります。

ここで②に挙げたa~fがチェックされます。

それをパスすれば、二次審査に進みます。ここでは「看護実績報告書」(修士論文、教育活動報告など)を提出し、論述式の筆記試験を受けます。

このように資格試験はかなり内容の濃いものになっています。

ですが、受験資格を得るための準備をしている間に自然とそろうようなものばかりです。

あくまで家族支援専門看護師だけではなく専門看護師全体での数字ですが、合格率は例年95パーセント以上になっています。

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