地域看護専門看護師について
目次
1.由来、現状
1-1.由来
専門看護師の資格制度は1995年に始まり、その翌年に第一号の専門看護師が誕生しています。
最初は「がん看護専門看護師」と「精神看護専門看護師」だけでした。次第に増えて、今は11の分野で専門看護師があります。
この最初の2つに続き、1年遅れでつくられたのが、「地域看護専門看護師」です。2015年1月現在、この資格を持つ人は25人です。
ですが、それでも、地域看護専門看護師は581人。
専門看護師は全11分野合わせても、まだ1,466人しかいません。、精神看護専門看護師は207人います。
1-2.活躍の場
このような状況ですから、「活躍する場はどこにあるのか」「資格を取ることのプラスは」というのが、しっかりと「こうだ」といえるようなものがないのが現実です。
考えられる勤務先としては、デイケアセンターや訪問看護ステーション、保健所などがあります。
ですが、先に述べたような事情から、自分の方から「専門看護師である自分のスキルや知識はこういったように役に立つ」というようにアピールしていくことも必要でしょう。
また、高齢化社会が進行する今の世の中です。その中で必要となるのが、地域看護専門看護師です。今後活躍の場が広がっていくことは期待していいでしょう。
2.地域看護専門看護師の看護分野
2-1.分野は広い
この制度を主催している日本看護協会では……
産業保健、学校保健、保健行政、在宅ケアのいずれかの領域において水準の高い看護を提供し、地域の保健医療福祉の発展に貢献する。
……としています。
こうやってみると、かなり広い範囲を含んでいます。また、どちらかというと、看護師の分野だけはなく、むしろ保健師の分野の方が比重が高くなっています。
2-2.訪問看護認定看護師との違い
この専門看護師に興味を持った人が、ほかにも気になりそうなものといえば、「認定看護師」でしょう。
なので、参考までに認定看護師の方で、同じような範囲をカバーするものを考えてみると、「訪問看護認定看護師」ぐらいです。
ですがこちらの方は、地域看護専門看護師がカバーする範囲のごく一部でしかありません。
ほかに、「地域看護」や「訪問看護」に限らず、「認定看護師全般と専門看護師全般での違い」というのもあります。
最も大まかには、「認定看護師は自身も臨床の現場のスタッフとなり、看護に当たる。専門看護師はそれプラス、マネジメントまで求められる」と考えておけばいいでしょう。
「マネジメント」は「ほかの看護師を部下として指示・指導・教育する。その部署の責任者となる」ということです。
3.大学院では何を学ぶか
もう少し具体的に「地域看護専門看護師には何が求められるか」を知るには、大学院での授業科目をチェックすればいいでしょう。
この授業科目やその内容は専門分野ごとに、「一般社団法人日本看護系大学協議会」が細かく決めています。
A 専攻分野共通科目
1.家族ケアに関する科目 2.地域看護研究方法に関する科目
B 専攻分野専門科目
1.行政地域看護分野科目(地域を単位とした看護) 2.産業看護分野科目 3.学校看護分野科目
C 実習科目
これらは全部が必修なわけではありません。地域看護の中でも、自分が興味を持っている分野や専門としたい分野に合わせて選択するようになっています。
また、
CNS共通科目
看護教育論、看護管理論、看護理論、看護研究、コンサルテーション論、看護倫理、看護政策論
……が用意されています。
「CNS」とは「Certified Nurse Specialist(専門看護師)」の頭文字です。
つまり、「CNS共通科目」とは「地域看護専門看護師に限らず、ほかの分野の専門看護師にも修める必要がある科目」ということです。
これもこの中からいくつかを選択するようになっています。
こういった形で地域看護専門看護師のための科目を用意している大学院は、2015年の場合で約70か所ありました。ほかの分野の専門看護師に比べ、かなり恵まれています。
4.実務研修
専門看護師の資格試験を受けるために、もうひとつ条件となっているのが「実務研修」です。
①看護師の資格取得後、通算5年以上実務研修をしていること。そのうち通算3年以上は専門看護分野の実務研修であること。
②専門看護分野においてa~fの内容の実務研修をしていること a 個人、家族及び集団に対する直接的な看護実践 b 看護者を含むケア提供者に対するコンサルテーション c 必要なケアが円滑に行われるための、保健医療福祉に携わる人々の間のコーディネーション d 個人、家族及び集団の権利を守るための、倫理的な問題や葛藤の解決をはかる倫理調整 e ケアを向上させるための、看護者に対する研修会、研究指導及び講演会等での活動を含む多様な教育的機能 f 専門知識及び技術
③現在、常勤、非常勤を問わず看護実践を行っていることが望ましい。
この①~③を満たさなければなりません。
また、地域看護専門看護師の場合、この「地域看護(行政地域看護、在宅ケア看護、産業看護、学校看護)の内のいずれかにおいて看護の役割機能を果たす実務研修とする。所属する機関や施設種別を問わない」と指定されています。
これは一見、あまり厳しい条件ではないでしょう。
①と③は認定看護師でも同様の条件が付けられています。
②も認定看護師でもあります。ですが、たとえば訪問看護認定看護師の場合で、「医療処置及び管理を要する患者の在宅における看護(退院支援を含む)を5例以上担当した実績を有すること」といったように内容としてはシンプルな条件です。
専門看護師の場合は、このように単純に「5例以上」などとするよりも、個人個人で詳細に検討すると考えたほうがよいでしょう。
そのため、専門看護師の場合は、②のa~fについてすべて文章にして提出し、審査を受けることになります。
5.専門看護師の合格率は?
大学院の修士課程を終え、実務研修も条件を満たしたならば、ようやく地域看護専門看護師の資格試験を受けることができるようになります。
まずは一次審査として書類選考があります。
ここで②に挙げたa~fがチェックされます。
それをパスすれば、二次審査に進みます。ここでは「看護実績報告書」(修士論文、教育活動報告など)を提出し、論述式の筆記試験を受けます。
このように資格試験はかなり内容の濃いものになっています。
ですが、受験資格を得るための準備をしている間に自然とそろうようなものばかりです。
あくまで地域看護専門看護師だけではなく専門看護師全体での数字ですが、合格率は例年95パーセント以上になっています。
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