看護師の給料アップ、スキルアップ、キャリアアップ、失敗しない7つのポイントおまとめ。転職の落とし穴と注意点。
看護師の皆さん、今の職場や仕事内容に不満はないですか?
「給料をもっとたくさん欲しい」
「忙しいばっかりで、仕事の充実感がない」
「いつまでもヒラの看護師でいたくない。もっと偉くなりたい」
「この先自分はどんな看護師になればいいのかと、不安になる」
「もっとしっかりとした看護師になって、いっそう患者さんの役に立ちたい」
今のモヤモヤっとした不満や将来の不安を解消するために、キャリアアップを考える看護師さんは多いです。
ここではキャリアアップで成功するポイントをまとめました。
目次
1.具体的なキャリアアップの方法や準備の仕方
①認定看護師・専門看護師の資格をとる
②看護師の経験が活かせる転職をする
③学校に行き直す
といったものがあります。それぞれメリット・デメリットもあれば、その人の向き・不向きもあります。もし、選択を間違えると、単に遠回りするだけで全く目的が果たせないようなことだって起こります。
まずは、これらのキャリアアップの方法を具体的に知っておくことが必要です。
1-1.認定看護師・専門看護師の資格をとる
認定看護師とは、「ある特定の看護分野で、熟練した看護技術と知識を有する者」とされています。この「看護分野」は21あります。審査は公益社団法人・日本看護協会が行っています。
また、専門看護師は「ある特定の専門看護分野において卓越した看護実践能力を有する者」とされています。こちらの「看護分野」は11で、主に「日本看護系大学協議会」がこの制度を運営し、審査も行っています。
つまり、これらの資格を持っていると、「ある分野のエキスパートの看護師」としてアピールすることができます。
メリット
これらの資格を持っていることで、特別な手当が出ることがあります。
また、病院によっては、役職を上げてくれたり、認定看護師・専門看護師だけの特別なポストを用意してくれます。当然、その分、お給料もアップします。
その分野についての特別な看護の仕事を任されるほか、ほかの看護師としての指導役も期待されています。仕事のやりがいもアップするでしょう。
また、特に高度医療をやっているような病院への転職はやりやすくなるでしょう。典型は大学病院ですね。
デメリット
資格をとるための準備が大変です。
たとえば、認定看護師の場合
A.看護師免許取得後、実務研修が通算5年以上あること(うち3年以上は認定看護分野の実務研修)
B.認定看護師教育機関(課程)修了(6か月・615時間以上)
という条件を満たして初めて、認定のための試験を受けることができます。
教育機関(学校)に通うためには、病院側に勤務の融通もつけてもらう必要があるでしょう。また、授業料も必要です。学校によっては、100万円前後かかります。
専門看護師も同様に条件があります.こちらの方が厳しく、たとえば看護系大学院の修士課程を終えていることも条件のひとつになっています。
また、これらの資格を持っていても、病院によっては、一般の看護師と扱いが全く変わらないようなところだってあります。
1-2.看護師の経験が活かせる転職をする
転職については、近年、色々と道が広がっています。
具体的には「訪問看護師」「産業看護師」「保育園看護師」などです。
また、すでに持っている看護師の資格だけではなく、保健師の資格なども合わせてとることで、さらに地方行政団体(都道府県・市町村)などの保健・福祉部門、保健所などへの転職も可能です。
メリット
看護師の最も一般的な職場である病院の場合、「夜勤など勤務がハード」「医師の手伝いばかりで、仕事のやりがいが感じられない」「忙しすぎて、じっくりと患者さんと向き合うことができない」といったことで、フラストレーションがたまっている看護師さんがたくさんいます。
産業看護師や訪問看護師などならば、こういった問題はほとんどありません。
また、臨床など病院勤務で身についたスキルや知識も生かせます。
デメリット
基本給で考えると、病院勤務とほとんど変わりません。ですが、夜勤や残業がなかったり少ない分、月給が下がることが多いようです。
また、「事務仕事が多い」「患者本人や患者の家族などとのコミュニケーションが、いっそう重要になる」など、病院勤務とは違う能力が必要になります。
そのせいで、向いている人とそうでない人が出てきます。
1-3.学校に行き直す
「学校の行き直すという場合では、いくつかのパターンがあります。
たとえばここまでに紹介してきたように、「認定看護師や保健師の資格をとるために」というのもその一つです。
もっと本格的に、「看護専門学校出身者が、看護系の大学に入り直す」「看護系の大学出身者が、大学院に進学する」といったものもあります。
もちろん、これには、「看護のことについて、もっと学びたい」という目的もあるでしょう。
もっと露骨に、「学歴が出世にかかわってくる」という面も否定できません。
「主任になりたいのならば、大学ぐらい出ていないと」とか、「今どきの看護部長ならば、大学院ぐらいは出ていて当たり前」なんて考え方があるのも事実なのです。
つまり、「キャリアアップしたくても、学歴のせいで足が引っ張られる」なんてことだってあるのです。
メリット
もちろん、学歴が手に入ります。
また、看護に関する勉強をし直すことで、復職した後の現場で生かすことができるできます。自信もつくでしょう。
デメリット
休職が必要になります。たとえば看護系大学院の修士課程ならば、順調にいっても2年です。また、その学校が国公立か私立かなどで、金額が変わってきますが、授業料も必要です。
それに、「学歴があるから」といって、それだけでポストが上がるような単純なものでもありません。「学歴はあっても、実力がない」なんてパターンの人だっていますから。
2.計画的に進める
看護師がキャリアアップで成功するためには計画的に進めることが大切です。
『看護師がキャリアアップを考える時の注意点』でも触れていることなのですが、まずは自分自身に対して、次のことをはっきりさせなければなりません。
A.今の自分の持っているスキル・知識・職歴がすぐによそで高く評価されるかどうか。
B.これから、“セールスポイント”になるようなスキル・知識・職歴を身に付ける覚悟があるかどうか。
もし、Aにかんして自信があるのならば、今すぐに転職などを考えていいでしょう。「今よりもお給料がたくさんもらえるところ」「ちゃんとした役職に付けるところ」と求めるのは当然のことです。
AもBも自信や覚悟がないのならば、キャリアアップとは無縁です。
「今の職場に不満があるから」といって、転職しても、おそらくは「キャリアアップ」にはなりません。セールスポイントのない人の転職は多くのことを望んではいけないのです。
じっくりと考え、計画を立てる必要があるのは、Bの場合です。
成功させるためにクリアしなければならないポイントはたくさんあります。また、かかる時間も長期戦になります。
①キャリアアップの目的に合ったセールスポイントを身につける
②キャリアアップで得られるメリットが、デメリットを上回るかどうか判断する
③職場環境や家庭環境に合ったプランを立てる
④仕事以外の自分の将来設計との兼ね合いを考える
などです。
2-1.キャリアアップの目的
ひとことで「キャリアアップ」といってもたくさんのパターンがあります。
たとえば
A.お給料をもっと欲しい
B.もっと上の役職につきたい
C.同じ看護でも専門性の高い仕事を任されるようになりたい
D.看護師の職歴を生かして、ほかの職業に転職したい
あたりが一般的でしょう。
この目指すべき道の一例として、Bならば「看護系の大学院に進学」、Cならば「認定看護師の資格をとる」、Dならば「保健師になる」、などがあります。
また、こういった道に進むことで、多くの場合、Aの「もっと給料」が自然とついてきます。
キャリアアップを真剣に検討している人は、「今の自分には足りないもの」「満足できない気分」などがあるはずです。それをしっかりと把握して、どういった方向に進めばそれが解消するのかを考えなければなりません。
2-2.デメリットも考えておく
キャリアアアップでの「デメリット」は忘れてはいけません。
たとえば、大学院進学ならば、その間、多くの人は休職することになるでしょう。給料が出ないどころか、授業料を払う必要もあります。
また、職場を離れ、キャリアを中断することにもなります。
職場に戻った時に、役職や年収などの面で、以前よりも上の待遇用意されれば、キャリアの空白期間を取り戻すこともできます。
ですが、「せっかくガンバったのに、以前と扱いがあまり変わらない」なんてことだって、ないとはいえないのです。
2-3.職場環境や家庭環境に合ったプラン
例えば認定看護師の場合で考えてみましょう。
認定看護師の資格をとるには、専門の学習コース(半年・615時間以上)で学ぶ必要があります。
特殊な時間割を用意している学校で無い限り、勤務の傍らの通学は無理です。多くの人が、この半年間を病院からは休職や長期出張扱いにしてもらっています。
逆にいうと、こういう特別扱いをし、協力を惜しまないような病院に勤務していなければ、退職して通学することになります。
もちろん、職場にいた時と生活が一転します。家族も影響を受けます。ですから、家族の理解と協力も欠かせません。
2-4.自分の将来設計
これは特に女性の場合は深刻でしょう。
看護師の世界はいくら呼び方が「看護婦」から変わったといっても女性が中心です。結婚・出産・育児などの影響を大きく受けるのは現実の問題として女性の方です。
「せっかく苦労して認定看護師の資格を取ったのに、結婚相手の希望でフルタイムの職場では働けない」とか「大学院に通っている途中で妊娠が分かった。学業の再開も、出産・育児が落ち着いてからになってしまった」ということも起きる可能性があります。
全部が全部予測しきれるわけではありません。ですが、分かっている限りの要素を入れて、しっかりと人生設計をする必要があります。
3.給料アップは難しい
キャリアアップの目的が、「もっとお給料を」という人は多いでしょう。
また、「同じ看護師でも、もっと専門性のある仕事を任されたい」「役職がさらに上に進めるように」といったことが主な目的でも、「そうなれば給料も上がる」ということは期待しているでしょう。
先に結論をいってしまうと、「そうは簡単にはいきません」。残念ですけど。
公益社団法人「日本看護協会」でさえ……
(専門看護師・認定看護師への)処遇のあり方はまちまちで適正な処遇方法が確立されているとは言えません
……としています。
日本看護協会が実施したアンケート(2012年公表)でも、「(認定看護師資格取得後の)勤務条件・給与待遇の変化」の質問に対して……
変化なし=63.9%
認定看護師として手当がつく=15.0%
認定分野の活動がしやすい部署へ異動=9.5%
職位が上がり、それに伴う昇給がある=4.4%
……といった回答が出ています。
つまり、3人に2人が、「昇進もしなかったし、部署の異動もなかったし、お給料も上がらなかった」というわけです。
「給料が上がった」というのは、「手当がつく」と「昇給がある」の両方を合わせても、5人に1人、ということになります。
また、中には「認定看護師になったために給料が下がった」という人だっています。「一般の勤務ローテーションとは別になった。夜勤手当や残業手当が減った」なんてことになるようです。
一方で「認定看護師になったおかげで、一般の看護師よりも、年収で100~200万円多くもらっている」なんて人もいます。
「この違いはどこから来るのか」といえば、「あなたの資格やキャリア、経歴を高く買ってくれるところと、そうではないところがある」ということです。
つまりは、「資格をとるなど自分のセールスポイントを強化したならば、座して待っていてはダメ。高く買ってくれるところを見つけ、そこに自分を売り込む」ということが必要なのです。
一方で、「もう少し長い目で考えれば、決して給料がアップしていないわけではない」という現場の声もあります。
認定看護師の資格を取ったり、そうではなくても、勉強をしなおしてくると、知識は強化され、看護についての理解も深まっているはずです。今後の仕事に生きてきます。
これは単に「自分の仕事のレベルが上がった。充実感も増した」というだけでは終わりません。
周囲からの評価は高くなり、人事にも反映されるはずです。となると、給料がアップします。また、昇進するようならば、役職手当も多くなるでしょう。
つまり、この考え方でいくと、「資格を取ったからといって、急に次の日から待遇が変わるような期待をするのは、ちょっと焦りすぎ」というわけですね。
「自分の方から積極的に動いて、より待遇のいいところに転職する」か、「今のところで、ワンテンポ置いてからの待遇が良くなるのを待つ」かは自分の性格や、今いる職場の環境など、総合的に判断しないといけないでしょう。
4.多い失敗
「キャリアアップ」といった時に単に「転職」のことを指していることも多いように思います。(「転職サポート業者」のHPにはこれが多いですね)
ですが、「キャリアアップ」=「転職」ではありません。
今の職場にいながら、ポストが上がっていったり、重要な仕事を任されるようになるのも、キャリアアップです。まずはこれをしっかりと覚えておきましょう。
キャリアアップは多くの人が望んでいるでしょう、ですが、しっかりと準備をしないと失敗します。
一番多い失敗は……
何を望んでいるかもはっきりしない。自分の“商品価値”を上げもしない。なのに、新しい職場を求めて転職してしまう
……です。
これでは、新しい職場にも満足が行かず、すぐに辞めてしまうことにもなりかねません。中には、「転職の度に、どんどん待遇も、自分自身の満足度も低くなっていく」なんて人だっています。
これではあべこべに「キャリアダウン」ですね。
キャリアアップを成功させるためには、いくつかの条件があります。その中でも特に大事なことは今、お話したばかりの2つです。つまり……
①目的をはっきりさせる
②自分の“商品価値”を高める
……です。
①の「目的」にはいくつか考えられます。
「給料をもっとたくさんもらいたい」「もっと高度な医療・看護の現場で働きたい」「偉くなりたい。将来は看護部長や、それよりも上になりたい」などなどです。
また、中には「今の職場よりも、もう少し楽なところに行きたい」という人だっているでしょう。これは厳密には「キャリアアップ」ではないかも知れません。でも、「自分が望むような職場に行きたい」ということでは同じです。
目的の種類は、ほかにもあるでしょう。ひとつだけとも限らないでしょう。
自分の人生設計にかかわることです。しっかりと時間をかけて考えましょう。ここで間違うと、せっかくの努力も無駄になってしまいます。
たとえば、「もっとお給料を……」というのであれば、病院勤務から、保育園看護師や産業看護師への転職は考えられません。夜勤手当や残業手当がなくなる分、月給は安くなるでしょうから。
②の「商品価値」とは、もちろん「必要とされる度合い」ということです。「セールスポイント」といってもいいでしょう。
今のままのあなたであっても……
A.これまでの職歴や、持っているスキルや知識を、今の職場以上に高く評価してくれるようなところがある
……という場合もあります。
もし、そういった自信があるのならば、すぐにでも転職のための活動を始めてもいいでしょう。
あるいは、将来の昇進や転職を見越して……
B.「認定看護師や専門看護師の資格をとる」「看護系の大学院に行って、勉強し直す」「大学病院など、看護師への教育プログラムの充実した職場に転職する」といったことで、あなた自身の内容をさらにアップさせる
……ということだって考えられます。
そうであるのならば、当然、自分が望むような転職は、これらの準備が終わってからです。
この準備は大変です。何年もかかるようなものもあります。また、働きながらではできないものもあります。学校ならば、授業料もかかります。
「メリットとデメリットのどちらが大きいか」は冷静に考えてみないといけないでしょう。「努力の割に、思ったほどの変化はなかった」なんてことだって、ありえるのです。
5.転職の落とし穴と注意点
スキルアップしたいという目的で、転職をされる看護師の方は多いです。 しかし、全員が全員上手く転職できるかというと必ずしもそうではありません。
なかなか仕事が見つからない場合もあれば、せっかく決まった転職先が想像とは異なり、全くスキルアップできない環境という場合もあります。
そのため、スキルアップという理由で、転職をしたい方は、いくつか注意点があるので、それをしっかりと理解してください。
5-1.こんなはずではなかった・・・とならないように
まず、スキルアップ転職で気をつけたないのが、ミスマッチです。
転職できたのは良いものの、実際働いてみるとスキルアップが見込めない職場だったというケースが多々あります。 これは、事前にきちんとその職場の情報を調べないことが原因で、起こってしまう問題です。
そのため、お仕事を探す場合は、しっかりと病院の情報を調べることが大切です。
5-2.何の技術を身に着けたいか、まずははっきりさせる
また、スキルアップしたい方は、自分はどのようなスキルを身につけたいかを明確にしてください。
ただ単にスキルアップしたいという理由で、転職をするのは非常に危険です。 どのようなスキルを身につけたいかがはっきりしないと、自分に合った職場を見つけることができません。
もし、そのことを明確にせずに転職活動をしてしまうと、いつまで経ってもお仕事を見つけることができず、最終的には何となくお仕事を決めてしまうことになってしまいます。
6.ステップアップにおすすめの病院は?
そして、スキルアップしたい方は、公立病院や国立病院、公的病院などがおすすめです。
これらの病院は、給料が高いですし、様々なスキルも身につけることができるため、非常に人気があります。
転職をしないで、今いる勤務先でステップアップしたいという時には、勤務している病院での研修をきちんと活かすことがポイントです。
この点で、研修が充実している大手の病院へ勤務しているとメリットが多いです。
自発的に通信講座で、自分に足りない知識を補うかたも多いです。
ただ、忙しい勤務の空いた時間を勉強に費やすのは、なかなか大変で途中で挫折してしまう方も多いです。
対面でスキルアップできる、研修が一番。この研修を定期的にきちんと開催してくれる病院へ転職するのがおすすめです。