神経内科と神経外科の違いは?業務内容はここが違う!

細かいことを抜きにしていえば、「神経内科」と「神経外科」とで扱い疾病の種類は同じです。

「では違いは何か」といえば、

「神経内科」は手術はせず、薬物治療が中心。「神経外科」は手術をする

という点です。

1.ほかの科と混同しやすい

また、このふたつはほかに、「精神科」「心療内科」などとしばしば混同されることがあります。診療科があります。

患者さんの側にすると、自分が神経や精神のトラブルを抱えた時に、「どこで診てもらうか」はなかなか判断がつかないぐらいです。

もちろん、看護師さんとしてそれらに勤める場合も、業務内容に違いが出てきます。自身の勤務先・転職先として考える場合、しっかりと違いを理解しておく必要があります。

2.診療科ごとの対象

2-1.神経内科・神経外科

器質的疾患

神経内科や神経外科では、脳、脊髄、神経などの「器質的疾患」を扱います。

「器質的疾患」とは、「物として傷になっている。壊れている」と言い換えてもいいでしょう。

これらの疾患にかかっている人には必ず「患部」があります。そこを肉眼や顕微鏡で見たとしたら、目でわかる形で異常が出ています。

器質的疾病を具体的な病名で挙げると……

・腫瘍(原発性脳腫瘍、転移性脳腫瘍、脊髄腫瘍など)

・脳血管障害(脳卒中、脳梗塞、くも膜下出血、脳動脈解離など)

・頭部外傷(頭部打撲、脳挫傷、慢性硬膜下血腫、急性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫)

・機能性疾患・筋疾患(てんかん、頭痛、三叉神経痛、顔面麻痺、筋ジストロフィー症など)

・神経変性疾患(パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症など)

・感染性疾患(脳炎、髄膜炎、髄膜炎、クロイツフェルト・ヤコブ病など)

・免疫性神経疾患(重症筋無力症、ギランバレー症候群、多発性硬化症など)

……などが代表的なものです。

症状にもよりますが、例えば「腫瘍」などの場合、いきなり神経外科が診察することはまずありません。初診は神経内科です。

抗がん剤など薬物での治療になるのならば、そのまま神経内科が担当します。手術・放射線治療・化学療法などの必要があれば、神経外科へと移されることになります。

最初から脳神経外科が診察するのは、「頭部外傷」ぐらいです。

2-2.心療内科

「心療内科」の場合は、「心の問題が原因となって、体に起きた病気」を扱います。「ストレスのせいで、胃に穴が開いた」をイメージすればいいでしょう。

これで体に起きる病気や症状には……

消化器疾患(胃潰瘍、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、神経性下痢、糖尿病)、循環器疾患(狭心症、高血圧)、呼吸器疾患(気管支ぜんそく)、過呼吸症候群、皮膚疾患(円形性脱毛症)

……などがあります。

精神科と心療内科の違いって?心療内科と精神科は区別がつきにくい本当の理由。

2-3.精神科

「精神科」では「脳は器質的には問題がないのに、精神に異常がある」という疾患を扱います。「脳の病気ではなく、心の病気を扱う」と表現される場合もあります。

病名でいえば、統合失調症、うつ病、神経症などです。

3.神経内科の看護師の業務内容

神経内科も内科の一種です。そこで働く看護師さんの仕事内容も大きくは変わりません。

ですが、神経内科ならではの難しさもあります。

3-1.初診

まず、初めて診察に訪れる患者さんは、はっきりと自分の疾患を意識していないことが多いです。

自覚症状は「頭が重い」「体の動きがスムーズでなくなった」「物忘れがひどいように思う」程度のことが大半です。

そういった人たちにこれから始まる診察について説明したり、質問に答える役割があります。症状があいまいなだけに、対応も難しいでしょう。

3-2.急患

その一方で、急患も運び込まれます。

脳梗塞や脳出血になると、少しもたついただけで手遅れにもなりかねません。幅広い知識・スキルはもちろん、瞬時の的確な判断力も求められます。

3-3.入院患者

療養生活・入院生活も長い患者が多いです。リハビリまでカバーする必要もあります。

脳の疾患ですから、入院患者には認知症状態になっている人までいます。

自分からはしっかりとした意思表示ができない患者さんならば、その表情や様子から、考えていることをくみとって動いていく必要もあります。

体の自由が効かなくなっている人、さらには寝たきりになっている人もいます。こういった患者さんの介護のためには、腕力もあったほうがいいでしょう。

また患者さんはもちろん、その家族の精神面までカバーする必要があります。

このように、看護師としてのあらゆる能力が求められ職場です。

4.神経外科の看護師の業務

神経外科の看護師さんも、「瞬時の判断力が求められる」「リハビリまでカバーする必要がある」「腕力もあったほうがいい」ということでは同じです。

4-1.手術

これにさらに手術が加わります。

手術室での看護師の役割は、ほかの外科と変わるわけではありません。機器の準備や、執刀医の補助などをすることになります。

ただし、命に直接かかわる疾患が多いです。緊急手術も多いでしょう。一層の慎重さと周到さ、正確さが求められます。緊張度も高いでしょう。

また、手術室ばかりではなく、病室にも多くのハイテク機器が入っています。

ざっと挙げるだけでも、ICP(頭蓋内圧)モニター、Aライン(動脈圧)モニター、心電図などがあります。これらの機器を管理し、モニターするのも看護師の役割です。

リハビリに入ると、「嚥下訓練」「作業療法」などの必要性は、神経内科よりもさらに高くなります。

5.コミュニケーション能力

神経内科の看護師も神経外科の看護師も、コミュニケーション能力が特に必要です。

神経内科、神経外科とも最先端の医療が用いられている医療分野です。

それだけに看護師にもそれについていくための勉強が常に求められます。

また、どちらもチーム医療の形が採られます。

一人の患者さんに、医師、看護師、理学療法士、作業療法士など多くのスタッフがかかわり、それぞれに役割を果たしています。

これらの人たちとうまく協力しあうには、高いコミュニケーション能力が必要です。

また、脳の疾患ということから、自分では意思表示が難しくなっている患者さんも少なくありません。

多くの患者さんは療養生活が長くなりますから、家族の理解も大事です。

こういった患者さんや家族との間でもコミュニケーション能力をフルに発揮する必要があります。

6.神経内科・神経外科で身につくスキル

神経内科・神経外科での看護師の仕事は、正直いってとてもハードです。

ですが、その分、身につくスキルや知識もたくさんあります。

「新卒での就職で、まだ自分がどんなジャンルの看護に興味があるのか、自分が向いている診療科はどこかまだわからない」といったような人の中には、神経内科・神経外科で働くことで、将来の道をはっきりと意識するような人もいます。

認定看護師

また、認定看護師にも神経内科・神経外科に関連するものがいくつもあります。

脳卒中リハビリテーション看護認定看護師

=脳卒中患者の重篤化を予防するためのモニタリングとケア/活動性維持・促進のための早期リハビリテーション/急性期・回復期・維持期における生活再構築のための機能回復支援

・摂食・嚥下障害看護認定看護師

=・摂食・嚥下機能の評価および誤嚥性肺炎、窒息、栄養低下、脱水の予防/適切かつ安全な摂食・嚥下訓練の選択および実施

・集中ケア認定看護師認定看護師

=生命の危機状態にある患者の病態変化を予測した重篤化の予防/廃用症候群などの二次的合併症の予防および回復のための早期リハビリテーションの実施(体位調整、摂食嚥下訓練等)

こういった資格を取ることで、専門性の高い看護師になる道も開けています。キャリアアップを考える上で、神経内科・神経外科の経験は大きなプラスになります。

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