小児看護専門看護師について

1.背景

専門看護師の制度は1995年に始まりました。最初は「精神看護専門看護師」と「がん看護専門看護師」の2つです。今は11の分野の専門看護師があります。

この「小児看護専門看護師」は2002年5月に最初の資格取得者が出ました。

ただ、2015年1月現在、専門看護師全体でも1,466人しかいません。そのうち小児看護専門看護師は140人です。

2.小児看護専門看護師の看護分野

2-1.内容

小児看護専門看護師」の「分野の特徴」として、この制度を主催している日本看護協会では

子どもたちが健やかに成長・発達していけるように療養生活を支援し、他の医療スタッフと連携して水準の高い看護を提供する。

としています。

2-2.認定看護師との違い

この専門看護師に興味を持った人が、ほかにも気になりそうなものといえば、「認定看護師」でしょう。「認定看護師」の方で、小児をカバーするものをしては、「小児救急看護」と「新生児集中ケア」があります。こちらの方は専門の中でもかなり狭い範囲・特殊な範囲が対象になっています。

一方、小児看護専門看護師の方は、大学院での授業科目や「実務研修」として認められる病院の種類を見るとわかるように、「かなり広い範囲で考えている」、あるいは「小児看護の中でも、特に何を専門にするかは自分で決める」といったような形になっています。

3.大学院の授業科目

専門看護師の受験資格を得るには、①大学院で修士課程を終了すること、②その修士課程の中で、「小児看護専攻教育課程」として決められている単位をそろえることの両方が必要です。

「小児看護専攻教育課程」の科目やその内容は専門分野ごとに、「一般社団法人日本看護系大学協議会」が細かく決めていて、次のような形になっています。

A  専攻分野共通科目
1.小児・家族の成長・発達/健康生活に関する科目
2.小児看護対象の査定に関する科目
3.小児看護援助の方法に関する科目
4.小児の保健/医療環境/制度に関する科目

B  専攻分野専門科目
専門領域に関する科目<各大学で専門領域を提示する>

C  実習科目

CNS共通科目

看護教育論、看護管理論、看護理論、看護研究、コンサルテーション論、看護倫理、看護政策論

が用意されています。

「CNS」とは「Certified Nurse Specialist(専門看護師)」の頭文字です。

つまり、「CNS共通科目」とは「小児看護専門看護師に限らず、ほかの分野の専門看護師にも修める必要がある科目」ということです。

「CNS共通科目」はこれら全部が必修ではなく、選択科目になっています。

以上の教育課程の中で、「小児看護専門看護師」ならではの特徴があります「専攻分野専門科目」です。

小児看護系大学院選びの注意点

ほかの看護分野ならば、①~④とでもして、科目を指定しています。ですが、「小児看護では「各大学で専門領域を提示する」となっています。つまり、「行った先の看護系大学院ごとに内容がバラバラ」ということです。

これは「小児科で扱う内容の範囲が広い」ということが影響しているでしょう。

それで、実際に進学する際には

小児科関連の中でも、特に自分が興味を持っている専門をやっている大学院を選ぶ

という注意が必要です。

「小児救急看護をやりたかったのに、進学した大学院ではその授業がない」といったようなことが起きる可能性がありるのです。

こういった形で小児看護専門看護師のための科目を用意していた大学院は、2015年の場合30か所あまりありました。

4.実務研修

専門看護師の資格試験を受けるために、もうひとつ条件となっているのが「実務研修」です。

①看護師の資格取得後、通算5年以上実務研修をしていること。そのうち通算3年以上は専門看護分野の実務研修であること。

②専門看護分野においてa~fの内容の実務研修をしていること
a 個人、家族及び集団に対する直接的な看護実践
b 看護者を含むケア提供者に対するコンサルテーション
c 必要なケアが円滑に行われるための、保健医療福祉に携わる人々の間のコーディネーション
d 個人、家族及び集団の権利を守るための、倫理的な問題や葛藤の解決をはかる倫理調整
e ケアを向上させるための、看護者に対する研修会、研究指導及び講演会等での活動を含む多様な教育的機能
f 専門知識及び技術

③現在、常勤、非常勤を問わず看護実践を行っていることが望ましい。

この①~③を満たさなければなりません。

また、実務研修を行うフィールドとしては「小児期にある患者に対する小児看護の実務研修」と指定されています。

「フィールド」はほぼ「勤務先」の意味と考えていいでしょう。

看護分野によっては「年間300例以上の分娩数を有する施設または総合周産期母子医療センター、地域周産期母子医療センター等」(母性看護専門看護師)のように厳しく限定されている場合もあります。

小児看護専門看護師の場合は、小児科病棟、小児科専門病院などでさえあれば問題になることはないでしょう。

5.専門看護師の合格率は?

大学院の修士課程を終え、実務研修も条件を満たしたならば、ようやく小児看護専門看護師の資格試験を受けることができるようになります。

まずは一次審査として書類選考があります。

ここで②に挙げたa~fがチェックされます。これは文章にして、内容を提出することになります。

それをパスすれば、二次審査に進みます。ここでは「看護実績報告書」(修士論文、教育活動報告など)を提出し、論述式の筆記試験を受けます。

このように資格試験はかなり内容の濃いものになっています。

ですが、受験資格を得るための準備をしている間に自然とそろうようなものばかりです。

あくまで小児看護専門看護師だけではなく専門看護師全体での数字ですが、合格率は例年95パーセント以上になっています。

 

コメントは受け付けていません。

サブコンテンツ