日本の医療事情はお金がないとどうにもならない?!老人化社会の隠れた問題を看護師が指摘。

     

介護イメージ

現役ベテラン看護師さんの、現場を見ているからこそ自然と出てくる今の医療現場の危うさを、座談会形式で伝えてくれる本を見つけました。

現在の医療事情

当間
医療技術の進歩で高齢者の救命率が高くなっていますから、看護の必要な老人患者は非常に増えています。その一方で看護婦の離職率も高くなっている。

元倉
一般的には看護婦が結婚しても保障がないですしね。三交代をしながら家庭と育児を両立させて行くことはとてもむつかしいと思います。看護婦の仕事を理解し、協力してくれる夫が少ないということも現実だと思うけど、とにかく看護婦の夜勤体制や待遇の問題は早急に解決しなければならないことだと思います。退職者が出ると現場の状況はますます悪化して、疲労こんばいのなかでさらに退職者を出すという悪循環があります。今の基準看護での人員配置では絶対に看護婦の数が足りないと思います。その足りない分、助手をつければとか、家政婦をつければとかいうことで解決しようとしているけどね。

当間
たとえば老人病院なんかでは、福祉介護士を大量に入れてナースは少なくしてますね。もう老人病院は老人収容施設みたいです。医療行為をやればやるほど医療費は膨大になるから、老人病院では一ヵ月の治療費が定額になっていて、それ以上の治療は診療報酬では認められていません。つまり医療行為がそれ以上できなくなってるんです。
だから夜間何かあれば、家政婦が当直の看護婦を起こすというのが多くの老人病院の現状なんです。
厚生省は一方で在宅療養を推進していますけれど、具体的な政策は進んでいません。在宅患者への福祉的な援助も不十分だと思います。ヘルパーの派遣も民間会社を活用して有料化する動きもあるように思います。
岩井
企業だからお金を出せば来てくれるけれど、お金のない人には来てくれないということですよね。

当間
そう。みんなお金。結局、今後は病院医療も在宅医療も受益者負担ですすめられていくといますよ。

出典 「素顔の看護婦」 木村快 編・著 同時代社

医療費が高くなる一方で国の予算は少なくなる。保険制度も限界が近く、アメリカのように国民保険に入らない、保険料が払えないという選択をする人も増えています。老いはどうやっても避けることができないもの、どう対処すべきかは深い問題です。

変化は期待できるか

木村
医療の世界はみなさんの期待されるような方向に変化するでしょうか?
当間
大学の封建的な医局制度や医学教育が変らないと。
元倉
そう。そこが変れば、医療チームのなかで医師が本来のリーダーシップをとっていけると思うんですけどね。

当間
医療だけでなく、一般的に言えることだけど、いろいろ矛盾を感じてても、主体的に行動を起こす人は少なくなってきてますよね。医療の世界での矛盾に、正面から取り組んで行く医者ゃ看護婦が増えれば、大きな力になるんですけどね。

当間
最近は自分の専門領域しかわからない医者が増えてるんじゃないですか。たとえば合併症のある患者ががんで胃の手術をしても、手術は成功したけれど、全身の医学管理が不充分なために患者は死んでしまったなんてこともありますよね。内科領域でもそれに類似したことは言えると思います。高度に分業化して、教育もその範撃にとどまっていますし、患者を全人間的に見ることができなくなってると思います。

元倉
患者の立場に立ってみると恐ろしいことなんですよね。
当間
そういう意味では医者の問題だけでなく、看護婦についても同じことが言えると思います。医療の技術は十年前に比べるとかなりハイレベルになっていますから、医学教育や看護教育が技術のみに追われてしまってる面がある。ですから卒後教育のなかで、大変でも実践を通して課題を話し合ったり、一緒に学習していくことが必要じゃないでしょうか。

出典 同上

専門家を進めることで人間をパーツで見てしまうことが医療の弊害になっている。これは現場にいなければ感じ得ない感覚でしょう。人の生活、人の感情、人の体、人の健康は本来のシンプルな社会生活に戻していかなければ、根本的な解決にはならないとも言えます。

余りに大きなテーマでなにから手を付ければいいのか・・・はっきりしないですが、年を重ねる自分、家族にとって今何が一番なのかを考えて悔いなく過ごすことが一番大事なことと思います。

 

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