緩和ケア認定看護師について

1.背景

認定看護師の制度が始まったのは、1997年6月です。最初は「救急看護」と「皮膚・排泄ケア」の2つです。

そのちょうど2年後に、「集中ケア」などと共に「緩和ケア」も始まっています。今ある21のジャンル(看護分野)の中では、「かなり早い時期から始まった」といえます。

2105年1月に発表された数字では、全国に1,641人います。これは「感染管理」の2,053人、「皮膚・排泄ケア」の2,040人に次ぐ人数です。

2.緩和ケア認定看護師の内容

いったい何をやるのかといえば、この認定制度を作った日本看護協会では……

①疼痛、呼吸困難、全身倦怠感、浮腫などの苦痛症状の緩和

②患者・家族への喪失と悲嘆のケア

……としています。

3.認定のためのテストを受ける条件

3-1.授業

資格をとるための授業ではどんなことをやっているか見てみましょう。

例は静岡がんセンターの緩和ケア認定看護師教育課程です。よそも大きな違いはありません。

全認定看護分野に共通する科目
1.看護管理
2.リーダーシップ
3.文献検索・文献講読
4.情報管理
5.看護倫理
6.指導
7.相談
8.臨床薬理学
9.対人関係
10.医療安全管理

専門基礎科目
11.緩和ケア総論
12.がんとがんの集学的治療
13.症状マネジメント総論
14.喪失・悲嘆・死別
15.がんの医療サービスと社会的資源

専門科目
16.症状マネジメントと援助技術Ⅰ(がん疼痛)
17.症状マネジメントと援助技術Ⅱ(消化器症状のマネジメント)
18.症状マネジメントと援助技術Ⅲ(呼吸器症状のマネジメント)
19.症状マネジメントと援助技術Ⅳ(リンパ浮腫のマネジメント)
20.症状マネジメントと援助技術Ⅴ(皮膚・粘膜・口腔トラブルのマネジメント)
21.症状マネジメントと援助技術Ⅵ(精神症状・睡眠障害のマネジメント)
22.症状マネジメントと援助技術Ⅶ(倦怠感・悪液質のマネジメント)
23.緩和ケアを受ける患者の心理社会的ニーズとケア
24.スピリチュアルケア
25.緩和ケアにおけるチームアプローチ
26.緩和ケアを受ける患者の家族・遺族ケア
27.臨死期のケア
28.緩和ケアにおける倫理的課題

実習と演習
29.演習Ⅰ
31.演習Ⅱ
31.臨地実習

「全認定看護分野に共通する科目」は、「21のどのジャンルの認定看護師のどれになるにも必ず受ける授業」ということです。

これは21ジャンルのうちのどこでも同じです。

具体的な仕事内容となると、「専門基礎科目」や「専門科目」から想像がつきます。

「がん」「喪失・悲嘆・死別」といったところは特徴的でしょう。

「がん」にかんしては、認定看護師のジャンルとしてほかにも「乳がん看護」「がん科学療法看護」「がん性疼痛看護」「ガン放射線療法看護があります。

これらがガンからの回復を目指しているのに対し、こちらは「ターミナルケア」に力が入れられていると見ていいでしょう。

「26.緩和ケアを受ける患者の家族・遺族ケア」「27.臨死期のケア」からも同じことがうかがえます。

3-2.実務経験

認定のためのテストを受けるには、「実務研修が通算5年以上あること(うち3年以上は認定看護分野の実務研修)」となっています。

日本看護協会の出している条件を挙げておきます。

①通算3年以上、緩和ケアを受ける患者の多い病棟、または在宅ケア領域での看護実績を有すること。

②緩和ケアを受ける患者を5例以上担当した実績を有すること。

③現在、緩和ケアを受ける患者の多い病院、または在宅ケア領域で勤務していることが望ましい。

もちろん、「認定看護師教育機関で6か月以上の課程を受ける」というのも、ほかの認定看護師と同じです。

4.緩和ケア認定看護師のためのコースがある学校

2015年を例にすると、次の9か所で授業が用意されています。このどれかに通う必要があります。

岩手県
岩手医科大学・附属病院高度看護研修センター 定員20名

埼玉県
埼玉県立大学・地域産学連携センター 30名

千葉県
国立がん研究センター東病院・認定看護師課程 20名

神奈川県
神奈川県看護協会・認定看護師教育課程 30名

山梨県
山梨県立大学・看護実践開発研究センター 20名

富山県
富山県認定看護師教育センター 25名

静岡県
静岡県立静岡がんセンター・認定看護師教育課程 20名

兵庫県
日本看護協会・神戸研修センター 30名

福岡県
久留米大学・認定看護師教育センター 30名

また、「休講中」としているところもあります。「年によっては開講される」ということです。

北海道
北海道医療大学・認定看護師研修センター

これを見ると、東北や九州では1か所のみ、中国・四国は両方を合わせても1か所もない……ということになります。

いくら半年のみとはいえ、仕事をしながら通学するには厳しい人もいるでしょう。よくよく計画を立てる必要がありそうです。

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