乳がん看護認定看護師について

1.背景

「乳がん看護認定看護師」は21ある認定看護師のひとつです。

がんに関するものは、「がん性疼痛看護」「がん放射線療法看護」「がん化学療法」とほかに3つもあります。

このようになっているのは、がんだけです。これはがんでの死亡率が年々高くなっていることと、がんの治療には高度医療・先端医療が用いられることが反映しています。

看護師の方も特に専門性の高いスキルや知識が求められるのです。

ただし、この乳がん看護認定看護師の資格を取った人は多くありません。日本看護協会の発表によると、2015年1月現在で244人です。

ちなみに、がん化学療法は1,282人、がん性疼痛看護741人、、がん放射線療法看護・177人となっています。

2.乳がん看護認定看護師の内容

この認定看護師の制度を主催している日本看護協会が「乳がん看護認定看護師」に求める「知識と技術」は

①集学的治療を受ける患者のセルフケアおよび自己決定の支援

②ボディイメージの変容による心理・社会的問題に対する支援

となっています。

参考までに「がん化学療法看護認定看護師」を同様に見ておくと

①がん化学療法薬の安全な取り扱いと適切な投与管理

②副作用症状の緩和およびセルフケア支援

となっています。

2つを見比べると、がん治療の中でも、乳がん治療はさらに特殊な分野であるのがわかるでしょう。

3.認定のためのテストを受ける条件

3-1.授業

それぞれの分野ごとに半年以上のカリキュラムが組まれています。

認定看護師の試験を受けるにはこれを修めておく必要があるのです。

例は千葉大看護部の場合です。科目名などは学校によって多少の違いはあります。ですが、内容はほぼ同じと考えていいでしょう。

共通基礎科目
1.看護管理
2.リーダーシップ
3.文献検索・文献講読
4.情報処理
5.看護倫理
6.指導
7.相談
8.対人関係
9.臨床薬理学
10.医療安全管理

専門基礎科目
11.腫瘍学概論
12.がん看護学総論1
13.がん看護学総論2
14.乳がん看護概論
15.がんの医療サービスと社会的資源

専門科目

16.治療を受ける乳がん患者の看護
17.乳がんサバイバーとその家族への心理・社18.社会的支援
19.乳がん患者の意思決定を支える看護技術
20.乳がん患者のボディイメージ変容への援助技術
21.乳がん患者のリンパ浮腫の看護技術

演習・実習
22.学内演習
23.臨地実習

 

「共通基礎科目」の「共通」とは「認定看護師の21分野すべてで行われる科目」ということです。

「リーダーシップ」「指導」などがあるのは、認定看護師がどういった位置づけであるのかをストレートに表しています。

「看護チームの間でリーダーシップをとり、指導的な立場になるのが認定看護師である」ということですね。

また、「専門科目」を見ると、単に病気の上での治療だけではなく、患者の心理面への働きかけが重視されていることが分かります。これらの授業コースを修め、単位を取得するのが、認定看護師の資格試験を受ける条件のひとつになります。

3-2.実務経験

もうひとつ重視されている条件が、「実務経験」です。

日本看護協会では「実務研修が通算5年以上あること(うち3年以上は認定看護分野の実務研修)」と定めています。

これをさらに詳しく見ると、乳がん治療看護の場合は、次のようになっています。

①通算3年以上、乳がん患者の多い病棟または外来等での看護実績を有すること。

②乳がん患者の看護を5例以上担当した実績を有すること。

③現在、乳がん患者の看護に携わっていることが望ましい。

4.乳がん看護認定看護師のためのコースがある学校

2015年現在、この授業コースを設けているところは、次の3か所です。

千葉県
千葉大学大学院・看護学研究科附属看護実践研究指導センター 定員25名

静岡県
静岡県立静岡がんセンター・認定看護師教育課程 20名

鳥取県
鳥取大学医学部附属病院・看護師キャリアアップセンター 10名

このように場所が限られています。また、授業は日中ですので、近くであっても仕事と同時に進めることは難しいでしょう。

勤務先の病院の協力が欠かせません。出張扱いなどにしてもらうことが多いようです。

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