一般の看護師と救急看護師の違いってなに?

緊急患者を運ぶ医者

救急看護師になるのは、特別な資格が要るわけではありません。基本となるスキルや知識はほかの看護師と同じです。

ただ、そのスキルや知識が「必要となるレベルが違う」といったところです。しかも、職場となる救急医療機関での勤務はかなりハードです。覚悟しておきましょう。

特に入院や手術もできる二次救急医療機関、それよりも重症(重傷)の患者・緊急性の高い患者が運び込まれる三次救急機関(救急救命センター)となると、なおさらです。

もう少し具体的にほかの診療科や配属先との違いといえば、次のようなものが挙げられます。

1.自分の判断で

医師の指示を受ける前に自分の判断で動くことも多い

患者さんが「いつ」「何人」運ばれてくるかわかりません。

新しい患者さんが来た時に、すでに勤務中の医師全員が手が離せないこともあります。医師の数より多い数の急患が一気に運び込まれることもあるでしょう。

「心臓停止・呼吸停止の患者の蘇生」「止血」「骨折の応急処理」などを、医師の指示を待たず、自分の判断で行うことだって考えられます。

2.情報不足で対応

患者に関する情報が少ない中で診療や看護をする

街のお医者さんならば、「どうしました?」「先生、ちょっと熱っぽいんです」といった会話から始まるでしょう。

救急救命センターの場合、意識がもうろうとしていたり、全く意識がない患者さんまでカバーします。

「気分はどうか」「どこが痛むのか」「既往症の種類」「アレルギーの有無」なども、本人からはちゃんと聞き取ることができないかもしれません。

それらの可能性を自分のほうで推測しながら、ケアをすることになります。

3.家族への対応

患者だけではなく、家族への対応も手際よくする必要がある

突然の病気やケガにびっくりするのは、本人だけではありません。付き添いで来た家族や職場の同僚もパニック状態になりがちです。

また、後からでも駆けつけてくるでしょう。

そういった人たちを落ち着かせ、また、その人たちから患者に関する必要な情報を聞き取るのも、救急看護師の仕事になります。

4.最先端の機器に対応

使う医療機器の種類が多く、しかも常に最先端のものが導入される

特に多いのは検査機器です。ざっと挙げるだけでも、血液ガス分析装置、COオキシメーター、血液凝固測定装置、線溶測定装置、生化学自動分析装置などがあります。急患には、一刻も早い検査と診断が必要なのです。

検査技師などもいますが、看護師も協力して検査を進めていくことになります。

5.デメリット

このように仕事がハードな上に、求められる能力はたくさんあります。

それでも、基本給はほかの診療科や配属先と特に変わることはありません。

6.夜勤なら高収入

ただ、「体力には自信がある」「少々勤務がきつくても、お給料がたくさんほしい」という人限定ですが、しっかりと稼ぐ方法もあります。

看護師の勤務には「72時間ルール」があります。一般的な診療科や配属先では、夜勤のトータルを1か月あたり72時間以内に抑えないと、医療機関は国から支払われる診療報酬を減らされます。

この「72時間」を適用すると2交代制の場合で、月の夜勤は4回が限度になります。

ただし、「夜間も看護師を減らせない」という診療科などでは例外扱いとなっています。そのうちの一つが救急救命センターなのです。

夜勤をすると、通常の勤務分の金額に加えて、「夜勤手当」と「残業手当」の両方がつきます。基本給は同じでも、この分のアップが大きくなります。

高い専門性が求められるのを反映して、「急性・重症患者看護専門看護師」「救急看護認定看護師」などエキスパートへの道も用意されているのも、ほかの診療科・配属先との違いでしょう。

これらの資格はキャリアアップを考える際には、強力なアピールポイントになります。

救急看護師の現場で必要なコミュニケーション能力

救急看護師として働く場合

ほかの診療科や配属先でも、看護師ならばもちろん、だれでも必要とされる。だけども、救急看護師だからこそ、一層重要になるし、きっちりとやらなければならない

というスキルや知識がいくつかあります。

そのうちのひとつが「コミュニケーション力」です。

このコミュニケーション力を発揮しなければならない相手は大きく分けて

①患者さん

②患者さんの家族

③医師や検査技師など職場のスタッフ

の三者があります。

①患者さん

まず、①の患者さんについてです。

内科や皮膚科、耳鼻科などであれば、診察は、先生(医師)の「どうしましたか?」といった言葉で始まります。

患者さんの方は「熱っぽいんです」「食欲がありません」と自分の状況を説明し始めます。

ところが、特に重症(重傷)患者が運び込まれる三次の救急医療施設(救急救命センターなど)ともなると、症状が重すぎて、自分自身のことであっても十分に説明できないこともあります。

ひょっとしたら、意識すらもうろうとしていたり、不安のせいでパニック状態になっているかもしれません。

そのたどたどしい説明の中から、これからの診察・看護に必要な情報を聞き出さなければなりません。

同時に観察力も必要です。患者さんが説明しきれないところは、「顔色が悪すぎる。本人の説明以上に症状が重い」「内出血も起こしているかもしれない」「言葉が出にくくなっているので、脳が損傷を受けているかも」と判断する必要があります。

その聞き取りや観察の結果次第では、ほかの患者さんが順番待ちしていたとしても、先に診察室に送り込むようなことも考えなければなりません。

②患者さんの家族

この「情報を聞き出す」という相手には、②の「患者さんの家族」もいます。もし、倒れた場所が職場ならば、同僚や上司が付き添っているかもしれません。

「倒れる直前の状況はどうだった」「最近体の不調はなかったか」「その日、なにを食べた。どんなことをした」といった話の中から、手がかりをつかまなければなりません。

もし、運び込まれた時点で患者さんの意識がなかったら、付き添いの家族や同僚以外に情報を得る相手はいません。

「不安のせいでパニック状態」になっていることがあるのは、この家族らも同様です。聞き取ると同時に、相手を落ち着かせることも必要です。

この人たちに、「今、患者さんはどんな状況にある」「これから、こんな種類の検査と治療をする」「治療のために家族が協力しなければならないこと」などを説明するのも、医師よりも、むしろ看護師さんの役割です。

これを短い時間で、しかも的確にこなすには、やはり高度なコミュニケーション力が必要です。

③医師や検査技師など職場のスタッフ

また、救急医療の現場では「チーム医療」の形が採られています。③が必要になるのはこのためです。

医師、看護師、検査技師、薬剤師などとお互い役割分担し、連携しながら治療に当たります。

例えば、患者さんの多くは救急車で運ばれてきます。救急車のスタッフからも、患者さんに関する情報をしっかりと受け継ぐ必要があります。

さらには今度は自分がその情報を医師や検査技師に伝えることになります。

そうすることで、二度手間になるような余分なことはせずに、スムーズに治療に移ることができます。

こういったスタッフとのやり取りも、問題なくできるかどうかは、コミュニケーション力にかかっているのです。

救急看護師の仕事でやりがいはどんなこと?

救急看護師とほかの診療科や配属先の看護師との間で、基本となるスキルや知識には違いはありません。ですから、救急看護師になるための特別な免許が必要なわけでもありません。

ただ、そのスキルや知識が、ほかの配属先よりも内容が濃かったり、量が多くなるのが違いです。

その違いのところに、救急看護師としての難しさも、やりがいもあります。

そのため、あまり表立ってはいわれませんが、ほかの診療科もある病院の場合、優秀な看護師が優先的に配属されます。

救急救命センターの仕事はとてもハードですが、誇りを持って仕事に打ち込めるはずです。

判断力の速さ

たとえば能力として、「とっさの時の判断力」と「手際の良さ」が求められます。

最初に申し上げたように、これらは、どこに配属されようが、看護師ならばだれでも求められる能力です。ただ、救急看護師の場合、これらの能力が必要になる場面が、格段に多いのです。

救急救命センターに運び込まれる患者さんの中には、文字通り一分一秒を争う重傷(重症)者もいます。

その患者さんを目の前にして、オロオロするようでは、患者さんの今後の病状や、場合によっても生死にもマイナスになってしまいます。

運ばれてきた患者さんを一目見た瞬間、「この患者にはこの措置とこの措置が必要」「ここからの手順はこうする」といったことが、瞬間的に浮かぶようでないと勤まりません。

最新の機器に精通

また、こういった患者さんを助けるために、たくさんの最先端の医療機器も導入されています。

「何回も使ったので、もう取り扱いには問題がない」と思っても、しばらくたつとまた新しい機器が入ってきます。

このような状況ですから、常に勉強が必要です。

「面倒だ」「大変だ」と思う人には、あまり向かない職場でしょう。

逆に「常に医療・看護の最先端で働いている」「医学の進歩が身近に感じられるのがうれしい」という人には、楽しみにもやりがいにも感じるでしょう。

患者の回復を見れる

また、「とても苦しんでいて、不安になっていた患者さんがよくなっていく姿を見るのはうれしい。退院のときに『看護師さん、ありがとうございました』といわれると、『看護師になってよかった』と思う」という人は多いでしょう。

これもどの配属先の看護師でも共通するやりがいです。

その中でも救急看護師は、お世話している患者さんの回復が際立って早いです。ほんの数日前には、生きるか死ぬかだった人が、危機を脱しているようなことも常にあります。

こういったところにも、救急看護師ならではの充実感・達成感を見いだす看護師さんもたくさんいます。

スキルアップ

また、「救急看護の世界を極めよう」という人には、エキスパートになる道も用意されています。

そのエキスパートの例としては、「急性・重症患者看護専門看護師」と「救急看護認定看護師」があります。

資格の取得には、専門看護師の場合で大学院修士、認定看護師の場合で6か月以上の専門の教育コースを修めるなど、いくつか条件があります。

こういった資格所有者や、経験が豊かで信頼されている救急看護師の中には、「トリアージナース(トリアージュナース)」となる人もいます。

「トリアージ」とは、医師による診察を受ける前に、患者さんをチェックし、緊急度の高い人から診察を先にする「選別」のことをいいます。

こういったエキスパートとして尊重される立場が用意されているのも、救急看護師ならではのやりがいにつながるでしょう。
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