尿検査でわかること。蛋白、潜血、白血球、ph、糖をチェックすればなんでもわかる!薬物検査も逃げられない?!
2016/07/11
尿検査は、学校や会社の定期健康診断でもおなじみです。
注射で血液を抜き取る血液検査や、放射能を使うレントゲン、苦しい思いをして機器をノドから入れる胃内視鏡検査などと違い、体に全く負担のかからない検査方法です。
この検査にもっともかかわっている臓器は腎臓です。腎臓は血液中の老廃物などを尿と一緒に排出し、また血液の成分や濃度、体の中の水分などの調整もしています。
腎臓ばかりではなく、体のどこかに異常があると、尿の量、成分などに変化が出ます。その変化や状況を見るのが尿検査です。
目次
1.健康診断でおなじみの尿検査の項目
ひとことで「尿検査」といいますが、尿の中の様々なものをチェックしています。
定期健康診断や人間ドックなど、特別な目的がない場合でも、チェックされることが多いのは、次の4つです。
①尿たんぱく
消化吸収されたたんぱく質やアミノ酸は、血液に混じって全身に運ばれます。アミノ酸を材料にして、体内でたんぱく質を作ることもしています。
多すぎるたんぱくやアミノ酸は分解され、まずはアンモニアになります。さらにそれも分解され、最後は尿素となって、尿と一緒に排出されます。
健康であれば、たんぱくのまま尿に混じる量は、限りなくゼロに近いです。
一般的な尿たんぱくの検査には、試験紙や試薬を使い、その色の変化を見ます。
色が変わらなければ、異常なしの陰性です。少しでも混じっていれば、異常ありの陽性です。「どのくらい混じっているか」の数値までは出しません。
異常と判断された場合、疑われる病気は、腎臓病(慢性糸球体腎炎、糖尿病性腎症など)、尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)の感染症・結石、溶血性貧血などです。
②尿糖
検査するのは尿ですが、目的は血液中の糖分量のチェックです。
正常ならば、尿に糖は混じりません。検出されるようならば、血液中の糖の濃度が、160~180mg/dlを超えていることが考えられます。
日本糖尿病学会の基準では、血液中の糖は、80~110mg/dlが優、110~130mg/dlが良、130~160mg/dlが可、160mg/dl以上が不可です。
「糖尿が出た(尿に糖が混じった)」というだけで、血液の方も不可である可能性が高いのです。
疑われる病気は、糖尿病、甲状腺機能亢進症、腎性糖尿などです。
③尿ウロビリノーゲン
これも尿自体よりも、血液のコンディションを押し測るためのものです。
ウロビリノーゲンは肝臓の細胞や赤血球に含まれる成分です。正常ならば、便に混じって排出され、血液に混じるのはほんのわずかです。
血液中のウロビリノーゲンが多くなり、尿にまで混じるようならば、肝臓の細胞や席血球が大量に壊れていることが考えられます。
陽性(多すぎる)の場合は、肝炎、肝硬変、溶血性黄疸、溶血性貧血、心不全、腸閉塞が疑われます。重度の便秘で陽性になる場合もあります。
一方、少なすぎるのも、これはこれで何かのトラブルが起きている可能性が高いです。閉塞性胆道疾患(胆石症、胆道がん)、腎機能障害などの可能性が考えられます。
また、下痢や抗生物質の長期投与による悪影響でも、ウロビリノーゲンは少なくなります。
④尿潜血(にょうせんけつ)
血液に反応する試験紙を使います。通常は尿に血液は混じりません。尿糖と同様に、量が多い少ないではなく、反応があればそれだけで陽性ということになります。
ただし、女性の場合、異常がなくても、生理による出血などで反応してしまう場合があります。
陽性の場合には、腎炎、膀胱炎、結石など、尿路のトラブルが疑われます。
また、腎臓や尿路のがんのために、血液が出ることがあります。初期にはそうなることは少ないため、この場合、すでにがんが進行している可能性が高いです。
2.それ以外の尿検査の項目
⑤尿沈査(にょうちんさ)
尿たんぱく、尿糖などの検査で異常と判断された場合、さらに正確に判断するために実施されます。
尿を遠心分離機にかけ、各種の成分の結晶や赤血球、白血球、細胞などを沈殿させます。それを顕微鏡でチェックします。
発見される量が多いと疑われる病気は次のとおりです。
・赤血球=急性糸球体腎炎、腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎、腎腫瘍、腎結石など
・白血球=腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎など
・円柱=慢性腎炎、糸球体腎炎、腎盂腎炎、ネフローゼ症候群ゼなど
・上皮細胞=膀胱炎、尿道炎など
・結晶成分=腎結石、急性肝炎、閉塞性黄疸、痛風など
この中の円柱とは、尿細管などで作られ、たんぱく質とアルブミンが固まって、ゲル状になったものをいいます。少量ならば問題ありません。
また、上皮細胞とは、もっとも外にある細胞のことをいいます。たとえば尿管であれば、管の内側で尿と接する部分にもあります。尿の中にたくさん発見されるのは、どこかの表面部分がダメージを受けていることになります。
また、細菌や寄生虫が見られる場合は、それぞれが原因となる病気を疑う必要もあります。
⑥尿ビリルビン
ビリルビンとは、赤血球が肝臓で分解されるときに作られる胆汁の色素です。色は黄色で、黄疸の黄色はこの色素からきています。
胆汁は通常は腸内に出され、便と一緒になって排出されます。胆汁の一部であるビリルビンも同様です。ただし、肝臓や胆道(たんどう)にトラブルがあると、尿に混じることがあります。
肝炎(かんえん)、肝硬変、肝がん、胆道疾患などが疑われます。
⑦尿pH
正常な尿は、pH4.8~7.5の弱酸性です。
7.6以上のアルカリ性だと、尿路感染症や腎疾患が疑われます。逆に、pH4.7以下の酸性では、尿病、呼吸性・代謝性のアシドーシス、アルコール中毒などです。
⑧尿中ケトン体
糖分などほかのエネルギー源が不足する場合、体は体脂肪を分解して、アセト酢酸、βーヒドロキシ酪酸、アセトンに変えます。いったんこの形にしてからエネルギー源として、消費するのです。
これらをまとめて、ケトン体と呼びます。
これで消費しきれなかった分の一部が腎臓でこしだされ、尿に混じります。
とはいえ正常な場合は、尿に混じるのは極々少量です。
もし、陽性(量が多い)ならば、糖尿病による高血糖状態や、飢餓状態などが考えられます。
⑨クレアチニン
クレアチニンは、筋トレなどの無酸素運動をした場合に筋肉の中などにできる老廃物です。
正常であれば、常に腎臓で濾過され、どんどん体の外に出されます。そうならずに、体の中に残ってしまっている分は、血清クレアチニンと呼びます。
尿に混じる量が通常よりも多いのならば、血液の中も同様になっていると考えられます。
尿に含まれる基準値は、成人男性で0.66-1.13 mg/dl、成人女性で0.48-0.85 mg/dlです。
ただし、筋肉の量の影響が大きく、老人や子どもの場合は、低めの数字が出ます。
一方、数値が低すぎる場合も問題です。腎臓の濾過機能にトラブルがあり、血清クレアチニンも高濃度になっていることが考えられます。
尿毒症、腎不全などが疑われます。
血液の中にある血清クレアチニンの濃度を直接測定することもあります。その場合は、尿検査ではなく血液検査になります。
⑪尿量
1日の尿の量が100ml以下は無尿、500ml以下は乏尿(ぼうにょう)といいます。逆に2,500ml以上は多尿です。
つまり、500~2,500mlが正常値です。
無尿・乏尿の場合は、急性腎不全、慢性腎不全、ネフローゼ症候群などが考えられます。また、がんや結石で尿管・尿道がふさがれている場合もあります。
多尿の場合、まず考えられるのは、尿の量を調整するホルモンの分泌異常です。また、糖尿病でもなります。心因性の場合もあります。
運動や入浴で汗の量が減ったり、コーヒーやビールなどを飲んだ後に大量に尿が出ることもありますが、これら一時的なものは全く問題はありません。
⑫尿比重
蒸留水(比重1)に比べて、どのくらい比重が重くなっているかを調べます。
尿には様々な物質が溶け込んでいるため、水より軽くなることはありません。1.003~1.030が正常値とされています。
よく知られているように、腎臓では血液を濾過して、老廃物などを排出しています。
体内の水分が少ないと、濾過が済んだ水分を再吸収して体に戻したり、逆に多過ぎれば尿として出し、体内の水分量を調整をするのも腎臓の役割です。
尿比重の異常は、この機能にトラブルがあることを示しています。
尿比重が高すぎる場合、糖尿病、脱水症などが考えられます。逆に、低ければ腎不全、尿崩症などです。
3.特別な検査項目
以上の健康のチェックのため以外にも、尿検査をすることがあります。
妊娠のチェックがその代表的なものでしょう。
この場合は、妊娠している場合に分泌されるhCGホルモンが尿に含まれているかどうかを調べています。
また、すでに妊娠がはっきりした後にも、産婦人科では尿検査を繰り返すことが多いです。
これも一般的な尿検査と同じく、尿糖や尿たんぱくを調べています。
これらの異常値が出るようでは、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群が疑われます。早産、流産、胎児の発達異常にもつながりかねないトラブルなので、少しでも早期発見に努めているのです。
また、スポーツ選手などが禁止薬物を使っていないかどうかの、いわゆるドーピング検査も、尿検査がメーンになっています。
麻薬、覚醒剤などの薬物検査の場合は、血液検査、唾液検査、毛髪検査なども使われますが、やはり尿検査がメーンです。
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