がん看護専門看護師について
1.現状
専門看護師の制度は1995年に始まりました。実際に最初の認定を受ける人が出たのはその翌年です。
大学院の修士課程を修了している必要があるなど、ハードルがかなり高いのは認めないと仕方ないでしょう。
2015年1月現在、全国でもまだ1,466人しかいません。
とはいえ、11ある専門看護師の看護分野のうちで、最も多いのがこの「がん看護専門看護師」です。581人います。
(この次はといえば、「精神看護専門看護師」の207人です。)
2.がん看護専門看護師の看護分野
2-1.看護分野
「がん看護専門看護師」の「分野の特徴」として、この制度を主催している日本看護協会では
がん患者の身体的・精神的な苦痛を理解し、患者やその家族に対してQOL(生活の質)の視点に立った水準の高い看護を提供する。
としています。
2-2.認定看護師との比較
この専門看護師に興味を持った人が、ほかにも気になりそうなものといえば、「認定看護師」でしょう。
参考までに「認定看護師」の方はがん関連だけでも、「がん化学療法看護」「がん性疼痛看護」「乳がん看護」「がん放射線療法看護」と4つの分野に細かくわけられています。
専門看護師の場合は今のところ、この「がん看護専門看護師」だけです。
「専門看護師の方が広い範囲をカバーする」、あるいは、「がん看護の中でも、特にどの分野を専門にするかは本人に任されている」と考えていいでしょう。
ほかにも「認定看護師と専門看護師の違う点」はいくつかあります。
最も大まかには、「認定看護師は自身も臨床の現場のスタッフとなり、看護に当たる。専門看護師はそれプラス、マネジメントまで求められる」と考えておけばいいでしょう。
「マネジメント」は「ほかの看護師を部下として指示・指導・教育する。その部署の責任者となる」ということです。
3.大学院での授業科目
もう少し具体的に「がん看護専門看護師には何が求められるか」を知るには、大学院での授業科目をチェックすればいいでしょう。
この授業科目やその内容は専門分野ごとに、「一般社団法人日本看護系大学協議会」が細かく決めています。
A 専攻分野共通科目
1.がん看護に関する病態生理学
2.がん看護に関する理論
3.がん看護に関する看護援助論
B 専攻分野専門科目
1.化学療法看護
2.放射線療法看護
3.幹細胞移植看護
4.がんリハビリテーション看護
5.疼痛看護
6.緩和ケア
7.ターミナルケア
8.予防・早期発見
C 実習科目
これらは全部が必修なわけではありません。がん看護の中でも、自分が興味を持っている分野や専門としたい分野に合わせて選択するようになっています。
CNS共通科目
看護教育論、看護管理論、看護理論、看護研究、コンサルテーション論、看護倫理、看護政策論
が用意されています。
「CNS」とは「Certified Nurse Specialist(専門看護師)」の頭文字です。
つまり、「CNS共通科目」とは「がん看護専門看護師に限らず、ほかの分野の専門看護師にも修める必要がある科目」ということです。
これもこの中からいくつかを選択するようになっています。
こういった形でがん看護専門看護師のための科目を用意している大学院は、2015年の場合で約70か所ありました。ほかの分野の専門看護師に比べ、かなり恵まれています。
4.実務研修
専門看護師の資格試験を受けるために、もうひとつ条件となっているのが「実務研修」です。
①看護師の資格取得後、通算5年以上実務研修をしていること。そのうち通算3年以上は専門看護分野の実務研修であること。
②専門看護分野においてa~fの内容の実務研修をしていること
a 個人、家族及び集団に対する直接的な看護実践
b 看護者を含むケア提供者に対するコンサルテーション
c 必要なケアが円滑に行われるための、保健医療福祉に携わる人々の間のコーディネーション
d 個人、家族及び集団の権利を守るための、倫理的な問題や葛藤の解決をはかる倫理調整
e ケアを向上させるための、看護者に対する研修会、研究指導及び講演会等での活動を含む多様な教育的機能
f 専門知識及び技術
③現在、常勤、非常勤を問わず看護実践を行っていることが望ましい。
この①~③を満たさなければなりません。
また、
がん治療専門看護師の場合、この「専門看護分野……実務研修」は、「がん診療拠点病院等においてがん患者が50%を占めている病棟等でのがん看護の実務研修」と指定されています。
つまり、「がん患者が半数いないような病院で働いた分は、『専門分野での実務研修』にはカウントしない」ということです。
①と③は認定看護師でも同様の条件が付けられています。
②も認定看護師でもあります。ですが、「がん化学療法を受けている患者の看護を、5例以上担当した実績を有すること」といったように内容としてはシンプルな条件です。
専門看護師の場合は、a~fについてすべて文章にして提出し、審査を受けることになります。
4.専門看護師の合格率は?
大学院の修士課程を終え、実務研修も条件を満たしたならば、ようやくがん看護専門看護師の資格試験を受けることができるようになります。
まずは一次審査として書類選考があります。
ここで②に挙げたa~fがチェックされます。
それをパスすれば、二次審査に進みます。ここでは「看護実績報告書」(修士論文、教育活動報告など)を提出し、論述式の筆記試験を受けます。
このように資格試験はかなり内容の濃いものになっています。
ですが、受験資格を得るための準備をしている間に自然とそろうようなものばかりです。
あくまでがん看護専門看護師だけではなく専門看護師全体での数字ですが、合格率は例年95パーセント以上になっています。