ガンと闘った21歳のアイドル。避けられなかったのか早すぎる死。医療ミスではなかったのか?~自由に生きたアイドルの人間らしい生き方を考える~
2016/07/31
医療機関と医師によって異なった治療が行われる脳腫瘍。亡くなったアイドル丸山夏鈴さん(21)も、その医療制度が少なからず影響したようです。
小学2年生の頃から脳腫瘍の手術を7回にわたって繰り返しながらアイドルとして活動を行ってきた彼女。脳腫瘍が治癒に至らなかった理由とは?また、肺に転移することを予測できなかった理由とは?
腫瘍の転移の危険性を説明しなかっただけでなく、余命を告知しなかった医師の判断は正しかったのでしょうか?
脳腫瘍が治癒に至らなかった理由は?
治療に関する情報が少ない中、YouTubeで彼女の動画を見る限りでは、脳腫瘍はそれほど大きなものではなかったという印象を受けます。脳腫瘍の症状としては、頭蓋内圧の亢進によって、片麻痺や視力障害、しびれ、頭痛、嘔吐が出てきますが、肺に転移した時点でも、それらの症状は見られなかったように思えます。
放射線治療によって一生涯に脳腫瘍が出来る確率は限りなく高くなりますが、すでに脳腫瘍がある場合の放射線治療の場合、リスクよりベネフィット(有用性)が勝っているため、放射線治療はもちろん、その他の先進治療も積極的に行うべきでした。また、転院も選択肢に含めて考えるという患者側の行動も、その後の病状に大きく影響します。
しかし、がんの場合は患者にとって、「ここの医療は納得できないから転院する」ということは、具体的な転院先がない限り実質的に不可能であって、納得のいくより良い医療を求めることは病院内では難しくなっています。
逆に医師が自分の手に負えないと判断した場合は他院を紹介すべきであって、この点では医療過誤に問われても医師に反論の余地は残されていません。
先進医療を受けられなかった理由は?
過去の放射線治療と現在の放射線治療は全く異なり、数多くの脳腫瘍の治療法の中で、γ線でがん細胞を縮小させる治療法が主流になっています。ガンマナイフの定位的放射線治療の場合、先進医療では放射線の照射レベルの微調整が可能で、0.15mm以上の正確さでがん細胞だけに照射できる精度を持っています。
放射線治療の場合、血管が邪魔しているとしても脳の深部であっても全く関係ありません。しかし、彼女の場合は「静脈が邪魔で脳腫瘍が取り切れなかった」と報道されています。脳腫瘍は完全に取り切ることも消えることがないため、縮小させてその状態を保つことが治癒を意味します。
肺がんは治療できなかったのか?
肺ガンの治療方法としては遺伝子治療が主流になっています。発がんすると2種類の融合遺伝子変異が特異的に見られるため、遺伝子検査ののちにALK阻害剤やEGFR阻害剤による治療が有効とされています。肺がんの形態次第ではP53遺伝子を肺胞に注入すると効果があります。
PET-CT検査で発がんしている場所を特定して陽子線治療を行うという治療法では、肺がんや肝がん、前立腺がんの治療に有効とされて、国立がんセンターをはじめとして全国各地で行われています。
早期発見の方法として、初期がんの早期発見にはモデル線虫を使用します。線虫はがん患者の匂いを避ける性質があるので、短時間で体のどこかにがん細胞があることが判明します。
がんの早期発見、早期治療が可能になった今では治癒に至らなかった方が不自然という印象があります。
患者の医療機関選択ミスは結果論?
2014年7月に肺に転移したとのことですが、当時の先進医療であれば十分に脳腫瘍を縮小させることが可能な水準に達しています。
しかし当然のことながら病院経営の関係上、先進医療を行えない病院が多く存在しています。例えば膵臓がんの場合は、京大病院で治療を受ければ治癒率が高いように、医療機関によって治せる病気は限定されています。そして、それを知らない患者も多くいます。
脳腫瘍の治療を得意としている病院で然るべき治療を受けていれば、腫瘍が縮小して一定の大きさを維持したまま生涯を送ることが出来ていたと思われます。肺に転移することもなく、元気な姿を見せていたと考えると悔やまれますが、同時に現在の医療の質の差が問題になっています。
結果論になる可能性もありますが、現在では医療機関と医師の選択が患者の予後を左右する時代です。また、先進医療や高度医療を患者側が求めないと、質の高い医療は受けられないということになります。
先進医療を受けるだけの金銭的余裕があれば結果が異なっていた可能性もあります。募金の行方は知りませんが、すでに2009年の時点で全ての脳腫瘍を委縮させることが可能な、ガンマナイフ定位的放射線治療装置(保険適応)を導入している病院もあります。
医師の説明義務と患者の自己決定権
また、彼女の危機感の無さは、医師のインフォームドコンセントに対する意識の低下にもつながっています。単に脳腫瘍の症状と治療方針を説明するだけでなく、医師には療養指導としての説明義務があります。無理をして音楽活動を続ければどういう事が考えられるか、という最悪のケースを患者に説明する義務があります。
2014年7月頃から1か月ほど咳が止まらない状態が続き、同年8月に肺の画像診断を行ったところ、白い影があったとのこと。肺が広範囲にわたって白くなっていればガン細胞と炎症が広がっていますが、その時の息苦しさは緊急手術が必要なほど致死的ではなかったと思われます。
長年にわたって再発を続けた脳腫瘍が良性であったとしても、悪性に変異して肺に転移した可能性は高いと思われます。
脳腫瘍が悪性に変わる可能性を予測できなかったのか、定期的に細胞診を行っていなかったのかという医療側の問題もありますが、脳腫瘍の手術の際に考えられる危険性を説明する機会もあったはずです。
現在の状態を正確に患者に伝えることも医師の義務であって、患者は全ての説明を聞いた上で自分の生き方に基づいて行動する自己決定権を持っています。
医師の説明義務違反が招いた肺がんの症状悪化
彼女は「それって肺ガンですか?」というような、聞きたくても聞けない心理状態に対して、医師は正確な告知をすると症状が悪化するのではないかという判断を下したのかもしれません。
または患者の受容範囲(告知に耐えられるかどうか)を超えていると判断したのかわかりませんが、例え患者に聞かれなくても説明義務はあります。最悪の場合を考えて、あらゆる危険性を納得させる義務を怠っているように感じます。
「抗がん剤治療と呼吸困難の緩和」という医師の治療方針を聞き、彼女は肺に転移したことを医師から曖昧に知らされて「このまま治らないのではないか?」と思ったものの、酸素チューブをつけて肺水腫の水を抜きながら、アイドルとして活動しながら、肺がんの病状が悪化していったという経緯があります。
「小学2年生の時に脳腫瘍で余命1年と言われ、肺に転移した時に余命1か月と宣告された」という本人のツイートもありますが、小学2年生が余命宣告を受け入れるかどうかというのは別問題として、残り1か月という短さでは、その余命宣告が受容範囲と判断する医師はいないでしょう。
今回の医師の説明の有無はわかりませんが、説明義務違反は医療裁判の原因になりやすいものです。手術前には必ずリスクに関して説明をしますが、末期医療では十分な説明が成される方が少数派です。
インフォームドコンセントの不十分さが招く医療裁判は多く見られますが、患者の自己決定権が重要視される日本の司法では、医師の説明義務違反で患者の救済が図られているのが現状です。
あなたが考える人間らしい生き方や尊厳死についても、患者になったときは意思表示の手段として「自己決定権」を行使することを、医師に対して予め主張しておくことも必要になります。
彼女の早すぎる死は、本当に避けることができなかったのでしょうか?
たくさんの人に希望を与えた彼女の存在や闘いの軌跡は、いろいろな強い想いを残しています。
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