広場恐怖症で悩む人が増えている?!治療困難で厄介な病気
2016/12/21
ある日突然、苦手な場所や状況ができてしまうような人がいます。
駅の人込みだったり、乗り物の中だったり、狭い部屋のこともあります。かと思うと、逆に広々とした部屋のこともあります。決して特別に危険だったり、不愉快な場所でもありません。「なぜ苦手なのか」と原因を考えても、全く見つからないぐらいです。
そういった場所で繰り返しパニック発作が起きたり、実際にはまだ起きていないのに、「起きるのではないか」と恐れるようになると、どうしても足が向かなくなります。
これが極端になり、正常な生活ができないのが、広場恐怖症です。
目次
1.広場恐怖症とは
1-1.映画
この病気が題材となった映画もいくつかあります。
「ラスト・デイズ」 隔離生活を描く戦慄の感染パニックスリラー
「Intruders」 この病気で悩む女性が強盗にあってしまいパニックにも巻き込まれる。
1-2.割合
大人の0.8パーセントに見られるといいます。120-130人に1人ですから、決して珍しいほどのものではありません。
なのに、あまり知られておらず、本人も周囲も、単に性格の問題などにしてしまいがちです。
家の外に出るだけでも苦痛を感じ、ほとんど引きこもりになるほどひどくなることもあります。
その場所が学校だったために不登校になった高校生や、職場と関係していたために、仕事さえやめてしまった会社員の例もあります。放置したら、生活を破壊してしまう可能性も高いのです。
これは間違いなく精神障害です。もし、その可能性を感じたら、できるだけ早く専門家の診察を受け、対策をするようにしなければいけません。
1-3.広場恐怖症の言葉の由来
日本語で「広場」というと、土や芝生があって、ボール投げでもできる公園を思い浮かべてしまうかもしれません。
この場合の広場の元になっている言葉は、ギリシア語の「agora(アゴラ)」です。古代ギリシアでは、大事な議題は、市民権を持っている者全員で、討議や投票を行っていました。その会場となるような都市中心部のスポットがアゴラです。
今もあるものでいえば、天安門広場(中国・北京)、赤の広場(ロシア・モスクワ)などが、ややこれに近いです。
アゴラでの集会では、人でごった返し、身動きもできない状況になります。そういった状況がとても苦手な人はたまにいるでしょう。苦手どころか恐怖に襲われる人もいます。
そこで「広場(agora)」に「恐怖症(phobia)」をくっつけて、「広場恐怖症(agoraphobia)」と呼んだのです。これは英語でもそのまま使われています。
2.広場恐怖症の症状
パニック発作それ自体も厄介なトラブルです。ですが、「パニック発作=恐怖症」ではありません。パニック発作を心配するあまり起こる精神障害が、恐怖症です。
恐怖症と意味が近い言葉に強迫神経症(強迫性障害)もあります。強迫神経症のほうが広い状況を含んでいます。「強迫神経症の一種が恐怖症」と考えるといいでしょう。
そのパニック発作を連想させ、恐怖まで引き起こすのが場所や状況の場合に、広場恐怖症と呼びます。
2-1.広場恐怖症の場合の問題となる場所
アゴラでの集会の状況を今の世の中でいえば、通勤時間帯の駅や、イベントが開かれている会場などが当たるでしょう。
ですが、広場恐怖症を理解するには、あまり「アゴラでの集会」というイメージにこだわらないほうがいいです。
問題になるのは、「自分では嫌で嫌で仕方のないのだけども、なぜか『そこからは抜け出せない』『誰からも助けを得られない』『対処法が見つからない』と感じ、不安や恐怖心に襲われてしまう」場所や状況です。
その場所や状況としては、駅やイベント会場などの雑踏だけではなく、次のようなものも考えられます。
・電車・バスなどの乗り物の中(長時間乗るものほど出やすい)
・理容店・美容院の理容椅子、歯医者・病院の診察台・治療椅子に座っている状態
・通行中のトンネルの中(乗り物を使っていても、歩いていても)
・狭い部屋・窓のないような部屋・エレベーターの中
・逆に、人のいない体育館のようなだだっ広い屋内・ガラス張りの部屋
・映画館のような閉じられた空間
・運転中の高速道路のような行動が限られる場所・状況
2-2.広場恐怖症の人の心の中
広場恐怖症を考える場合、ふたつのタイプに分ける必要があります。
(1)パニック発作が実際に出る・出たことがある
(2)パニック発作は出たことがないのに、出たときの様子を想像し、恐れる
どちらの場合であっても、パニック発作そのものに対する不安は、もちろんあります。
それだけではなく、
・周囲の人に迷惑をかける
・「変な人」「おかしな人」と周りから白い目で見られる
・だれも手を差し伸べてくれず、ひとり苦しむ
と、いったことも想像し、これも不安や恐怖心につながってしまうのです。
2-3.パニック発作
実際に出るとしても、あるいは想像だけで恐れているにしても、ポイントになるのがパニック発作です。
パニック発作の肉体的な症状としては、次のようなものがあります。
・心臓の鼓動が早くなる
・冷たい汗が出る
・頭がのぼせる、体がほてる
・息が詰まる・呼吸が苦しくなる・過呼吸
・貧血
・下痢
・めまい
・悪寒・吐き気
・体のしびれ
また、精神的には、
・このまま死んでしまうかもしれない
・心臓が今にも止まりそう・息ができない
・発狂しそう
・自分を押さえることができない
といったことで、頭の中がいっぱいになります。
多くの場合、症状のピークは出始めてから10分以内です。30分-1時間もすれば治まります。ですが、次第に少しのきっかけで出るようになったり、その症状への恐れも増大していきます。
「大勢の人の前で発表するときは、あがってしまう」「大事な作業をするときは、手が震える」といったように、緊張するのがむしろ当たり前の場面で、「心臓がバクバクする」といったものは、パニック発作とはいいません。逆に、パニック発作には、むしろリラックスしている時の方が出やすい特徴があります。
このように心身に具体的にトラブルが出るのが、(1)パニック発作です。
また、「症状が今後も出るかも」と不安になることを、(2)予期不安といいます。
パニック発作に似た言葉に、パニック障害あります。これは、(1)パニック発作・(2)予期不安・(3)恐怖症など全部をひっくるめて指すときに使います。
2-4.パニック発作と広場恐怖症
恐怖症は、パニック発作そのものをいうのではなく、そのパニックになりそうな場所や状況が負担になって引き起こされる精神障害のことをいいます。
何がパニック発作のスイッチになってしまうかは、人それぞれです。高いところ、狭いところ、人間、とんがったものなどなど、なんでもありです。これらによるパニック発作を避け用として引き起こされるのが、それぞれ、高所恐怖症、閉所恐怖症、対人恐怖症、先端恐怖症ということになります。
背景には、
・人間関係でのトラブル
・病気
・地震・台風・火事などの災害
・DV(ドメスティック・バイオレンス)
といった精神的なストレスがあることが多いようです。
そして、そのスイッチが、駅、美容室の椅子、スーパーマーケット、エレベーター、乗り物といったように、場所と関係する場合があります。そこで繰り返しパニック発作を起こしたり、そのパニック発作を想像することで、神経が混乱することを、広場恐怖症と呼ぶのです。
いずれも家の外にある状況や場所ばかりです。それらを避ける症状なので、「外出恐怖症」という別名を使う専門家もいます。
意識に上がっているものも、上がっていないものも、実際に何か危険などを察知しているわけではありません。単に脳の中で、「駅=パニック発作」と間違って結びつけているだけです。これはほかの恐怖症も同様です。
これら恐怖症の中で、特に広場恐怖症が問題になるのは、苦手で避けるような場所がどんどん増えていくことです。
たとえば、最初は飛行機がダメだったのが、長距離列車もダメになり、さらに近距離の電車が加わり、バス、タクシーなどと増えていきます。「乗り物は全部ダメ」といったことになりがちなのです。
これではどんどん活動範囲が狭まり、最後は「家の外にもでられない」というわけです。
3.広場恐怖症の治療方法
予防方法はないとされています。発症したらすぐに治療するのが、今のところもっともいい対応方法です。
その治療方法は、曝露療法、認知行動療法が代表的です。薬物療法を用いる場合もあります。
3-1.曝露療法
心理療法の一種です。行動療法ともいいます。
早い話が、「苦手な場所や状況に徐々に慣らしていく」ということです。
最初は精神的な負担の少ない場所や状況を与え、それを克服すれば、もう少しハードなところへとステップアップしていきます。
例えば、電車のような閉じた空間がダメならば、(1)駅のホームまで、(2)各駅停車の電車で数駅分、(3)乗客の少ない急行列車、(4)満員の急行列車や特急列車、といった具合です。
3-2.認知行動療法
こちらも心理療法の一種で、カウンセリングが主になります。
広場恐怖症の患者の多くは、
「心臓がドキドキする」「汗が出る」といった症状が起きると、その部分に神経が集中してしまい、過敏になる。そのせいでさらに症状が重くなり、不安も高まる
といった、悪循環を起こしています。
それが「間違った考え方である」「悲観的になる必要はない」「大げさに考えすぎ」と理解するように仕向けるのです。
3-3.薬物療法
これに使う薬としては、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に代表されるような抗不安薬・抗うつ薬が一般的です。
精神安定剤やトランキライザーといった時も、同じものを指しています。
SSRIの場合、神経伝達物質・セロトニンの働きを高めます。
ただ、薬物療法だけで完治するのは難しいです。ほかの治療方法を同時に進めていく必要があります。
これらの治療で、一見大丈夫になったように見えても、意識の奥底にまだ恐怖心が残っていることが多いです。
ですから、自己診断での、「軽度になったみたいだ」「もう対応できる」は危険です。専門家との二人三脚での長い取り組みが必要です。
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