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セロトニンを増やすには?実は幸せにも不幸にもなる厄介な幸せホルモン

   

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セロトニンに対する認識は人によって異なると思いますが、「片頭痛や血管性頭痛の原因になる物質」や、「不足するとうつ病になる」、「過敏性腸症候群の原因物質」などが代表的なものでしょう。

「トリプトファンのセロトニン代謝系の中間物質」や、「下行性疼痛抑制系のひとつ」と答えたあなたは雑学王かもしれません。

セロトニン代謝系の不思議なホルモン

「トリプトファン→セロトニン→メラトニン」の代謝系は有名なものです。トリプトファンはアミノ酸であり、セロトニン、メラトニンはホルモンとも呼ばれる神経伝達物質です。

セロトニンは5-ヒドロキシトリプタン(5-HT)と省略することもありますが、この5-HTにも多くの種類があります。一般的に医療用語として使われる場合は単にセロトニンと呼ばれます。腸の受容体に結合するタイプはセロトニン3であり、(5-HT3)と表記します。

トリプトファンといえば必須アミノ酸のひとつで、蛋白質を含む飲食物にはほとんど含まれています。乳製品や肉類、日本人の主食のコメにも含まれているので、トリプトファンが不足する事はありません。代謝物のセロトニンは不足したり過剰に作用したりするものです。これが余計な症状を引き起こす原因にもなります。

体質次第ではセロトニンによって幸福感を感じることもあり、痛みの制御を行うホルモン(神経伝達物質)としても作用します。必要不可欠なホルモンですが、極端な過不足が問題となります。トリプトファンの最終代謝物はメラトニンであり、メラトニンも無くてはならない有用なホルモンです。

セロトニンの作用と幸福感

トリプトファンを摂取すると、5%がセロトニンになり、さらにその2%が脳に作用します。そして最終的にメラトニンに代謝されます。牛乳にトリプトファンが多く含まれているからといって、大量に飲んでもセロトニンやメラトニンの効果は期待できません。

セロトニンは血管を通って脳に到達する事ができません。血液脳関門はある条件下でアミノ酸のトリプトファンを通してもセロトニンは通しません。トリプトファンが脳内でセロトニンに代謝されます。

脳の中枢神経に存在するセロトニンは約0.2mgで、精神や性格形成に与える影響があります。過去には「性格を変える薬」と称して、フルオキセチン(プロザック)の発売予告があったときは、話題になりました。

この時は、健康な人が「ポジティブ思考で第二の人生を踏み出そう!」という感じで個人輸入が増えましたが、リピーターはほとんどいなかったようです。薬の効果というものは最初の服用時に最も感じるもので、健康な人が治療薬を飲んでもあまり意味はありません。

つかの間の幸福感を感じるために

神経伝達物質のほとんどに共通する事ですが、セロトニンは微量で効果を発揮します。セロトニンを分泌させる手段は簡単なもので、「二度寝」と「過眠」が手軽で効果的です

平日と勘違いして日曜の朝に早起きしてしまって「もう少し眠れる」と疲れが取れるほど十分に寝た後は、セロトニンが分泌されて幸福感を感じるものです。

この時の幸福感というのは、漠然とした嬉しさを感じたり、少し余計に眠っていただけなのに充実感を感じたりします。薬は飲んでいないので、何かが作用した結果として幸福感を感じているわけではなく、自然に嬉しさが湧いてくるものです。

しかし、これも体質次第でセロトニンによる血管性頭痛しか起きない人もいます。寝すぎて片頭痛を起こした人は多いと思います。

分泌されるとは限らないセロトニン

積極的にトリプトファンを摂取すればセロトニンの体内の濃度が上がるとしても、ニューロンの先端から分泌されるとは限りません。分泌を促す行為や思考が必要になります。

過眠以外にも、考え方の違いも影響します。「長かった苦労ももう少しで終わりだ」とか、「あと10分で今日の授業が終わる」という些細な事を考えていれば、セロトニンの作用が実感できることもあります。

片頭痛や血管性頭痛を起こす原因になるセロトニンは血小板に含まれています。セロトニンは、頭:0.2mg、血小板:0.8mg、腸:9mgといった感じで分布しています。

血管壁がセロトニンに過敏な体質であれば片頭痛を起こします。片頭痛は母親からの遺伝なので、片頭痛(血管性頭痛)の遺伝子の有無を確認しておけば将来発病することを前提に、予防策や予防薬のエルゴタミン製剤を知ることで、片頭痛の発病を防ぐことも可能です。

セロトニンを増やす方法は??

セロトニンを増やす食材や、セロトニンを増やす方法などを紹介しているサイトも見かけますが、セロトニンを無作為に増えたところで、セロトニン受容体(5-HT1)に作用しない限り意味もありません。ストレスによって(5-HT3)に作用すると下痢と腹痛を起こします。

体内にある10mgのセロトニンの内90%は腸に存在していますが、腸から吸収されても血液脳関門を通ることができないので、脳には届きません。トリプトファンの状態で脳に届いて、そこでセロトニンに変わります。

「美味しいものを食べて腸を刺激すれば、セロトニンがドバドバ出る」と考える人もいるようですが、セロトニンを腸で増やすと過敏性腸症候群を起こして、ひたすら下痢が続きます。

ビタミンB6はトリプトファンをセロトニンに代謝するときに必要だからといって、ビタミンB6をひたすら飲むと、ヒスチジン→ヒスタミンの代謝が早くなり、ヒスタミン中毒も考えられます。

幸福感を得るためにサプリや薬に頼るのはほどほどにしておきましょう。

セロトニン不足とうつ病の関係

通常、うつ病に罹ってしまった場合は、抗うつ剤でセロトニンとしての作用(濃度)を増やして対応します。聞いたことがあると思いますが、「選択的セロトニン再取り込み阻害剤」というもので、SSRI、SNRI、NaSSAなどの薬が代表的なものです。NaSSAは気分に影響する(5-HT1)に作用します。

通常は、伝達神経の末端にあるシナプスからセロトニンが放出されて受容体に作用した後に、シナプスに取り込まれてその役目は終わりますが、シナプスにSSRIを作用させて再取り込みが出来ないように阻害することで、シナプスと受容体の間のセロトニン濃度を上げるということを行います。

これによって低濃度のセロトニンでも、受容体の付近の濃度を高めることで、セロトニンの効果を上げる事ができます。

これが従来のうつ病治療の考え方と基本的な考え方でしたが、セロトニンを選択的に増やしても、うつ病にそれほど効果が出るとは限らず副作用だけが起きるというケースもあります。

また、セロトニン不足が必ずうつ病を発症させるわけでもありません。

モノアミン不足でうつ病になる

セロトニンの濃度を上げる抗うつ剤といわれるものに、三環系・四環系抗うつ剤がありますが、不要な作用と副作用の強さが原因で、現在ではあまり使われません。

ただ、古い薬は処方実績があるだけに、特定の疾患に効果があったとみなされた薬は、現在でも使われることがあります。

例えば、意思の疎通ができないほど悪化した離人症の場合は、診察時に三環系抗鬱剤のアナフラニールの注射をして問診を行うなど、特殊な使い方がされています。

三環系抗うつ剤は、うつ病の原因と言われているモノアミン(セロトニン・ノルアドレナリン・ドーパミン)の再取り込み阻害を行って、濃度を上げる事で気分障害を治しながらうつ病を治すというものです。

うつ病治療にセロトニンは必要?

セロトニンの濃度が上がれば、約30%のうつ病患者の症状が改善されて、約30%は悪化します。単にセロトニンの濃度を上げるだけでは、人によって効果が異なってきます。

SSRIに効果が無ければSNRIを試したり、副作用のリスクが多い三環系、四環系抗うつ剤など、個人に合った薬を探そうとするのが現在の医療です。

離人症の治療に特定の三環系抗うつ剤(アナフラニール)が使われることもあるように、発病に関わっている神経伝達物質はセロトニンだけとは限らず、多くのものが考えられます。

軽い「抑うつ」の場合はセロトニンの濃度に関係する事もあるので、従来の治療法は無駄ではありません。しかし、現在のうつ病は大うつ病のことを指しており症状はひどいものです。抗うつ剤で治るレベルではなくなっています。

未だに議論は尽きませんが、副作用や異常行動のリスクを考えれば、軽いうつ病にSSRIを処方すべきではないという考えもあります。大うつ病の患者に対しても、抗うつ剤の投与はほとんど行われていません。

セロトニン症候群の症状

抗うつ剤を長期間にわたって服用すると、セロトニンの濃度が上がって突然錯乱状態になることがあります。本人もある程度の自覚はあるようですが、それが何か把握することは困難です。手足の震えがあればセロトニン症候群が疑われます。

振戦(震え)や落ち着きのなさが最初に見られる代表的な症状で、興奮、混乱、錯乱、静止していることが不可能になり歩き回る、発汗、発熱、頻脈などもありますが、その症状が出た時は、薬を飲ませなければ24時間以内に症状は無くなり、落ち着きを取り戻します。

このとき、セロトニンの濃度を高める抗うつ剤を突然中止するとリバウンドの症状が出るので、何らかの代替薬が必要になります。

セロトニン症候群の原因は判明していませんが、セロトニン受容体の活性亢進に加えて、ドーパミンやアドレナリンが関わっているという説がある程度有力です。

また、セロトニンに作用するタイプの薬を2種類以上服用しているとセロトニン症候群が起こりやすくなることは判明しています。SSRIとMAO阻害剤(パーキンソン治療薬)や、SSRIとトリプタン製剤に増強作用があり、作用が強く出る分、副作用のセロトニン症候群も起こりやすくなります。

セロトニン下降性疼痛抑制とは?

ケガや神経の損傷があったわけでもなく、痛みが起きないはずの部分が急に痛み始めるのは心因性疼痛と言われます。これは通常の鎮痛剤やモルヒネを使っても消えない痛みですが、神経因性疼痛としてよくあるものです。

他には、三叉神経痛や糖尿病性末梢神経障害、四肢を切断しても足や手の痛みを感じる幻肢痛など、例を挙げればキリがないほどの神経因性疼痛や心因性疼痛があります。

この場合、整形外科を受診しても原因不明のままトラムセットやプレガバリンを処方されるだけです。しかし、当然ながら薬が切れると再び痛みが出てきます。整形外科は手術が専門であり、診察は手術が必要か投薬に留めるか?という判断のために問診だけが行われています。

しかし、患者の訴える症状は脳内で起きている疼痛であり、心因性疼痛や神経因性疼痛なので、下行性疼痛の抑制が行われていないことが原因で起きる痛みです。

この場合、最適の受診科としては神経内科です。下行疼痛抑制系を制御すれば済むことなので、セロトニン・ノルアドレナリンを増やすためにSNRIが使われて、早い場合では6時間程度で効果があります。一般的に数日後には痛みが消えていることに気付きます。

作用・副作用が軽めのSNRIデュロキセチン(サインバルタ)は、下行性疼痛抑制神経のセロトニン作動性神経とノルアドレナリン作動性神経の抑制に効果があり、2系統の痛みを同時に抑制します。

セロトニンによる過敏性腸症候群

下痢などを引き起こす過敏性腸症候群(IBS)に効果のある薬、ラモセトロン(商品名:イリボー)というものがあります。過敏性腸症候群に治療薬が必要なのか?という疑問があるかもしれません。

セロトニンは腸壁に刺激を受けると、その刺激を与える物質を早く流し出そうとする作用があります。例えば悪玉菌の代表的なウェルシュ菌が留まっていると、腸内で有毒ガスの硫化水素やスカトール、アンモニアなどが発生します。

体内の硫化水素は濃度が低いので中毒症状を起こしませんが、臭い強烈なにおいがあります。しかし、濃度が高くなるにつれて嗅覚が麻痺するので、においを感じなくなると、生命の危険があるという毒性の強いものです。

その頃、当の本人は「どうもこのところ下痢が続くな・・・」と、水分摂取を控えながら代わりに乳酸菌飲料や下痢止めの薬でも飲むのかもしれません。

ところが、腸にとっては非常事態です。下痢を止めて放置しておくと毒性の強い硫化水素などによって、大腸ポリープや腫瘍が出来る原因にもなります。肛門の括約筋の付近に癌が出来ると人工肛門になります。というわけで、薬で下痢を止めるのはできるだけ避けましょう。

セロトニンによる腸内細菌排出

セロトニンは90%が小腸で作られて、腸の受容体に作用すると蠕動運動が早くなり、小腸で水分が吸収される間もなく大腸に内容物が送り込まれます。そして、そのまま外部に排出されると下痢になるというものです。

下痢型過敏性腸症候群は、腸の器質的な障害が無い場合でもストレスなどが原因となり下痢を起こします。ストレスによってセロトニンが腸内の受容体(5-HT3)と結合して下痢を起こすというメカニズムです。

これを放っておくと腸内細菌叢どころか、悪玉菌や善玉菌が流れていき、重症の場合は腸内細菌が激減することにもなりかねません。第二の脳と言われる腸内細菌叢は腸内細菌次第でホルモンを放出しても受容体がブロックされていると、全て下水道に流されていきます。

それなら受容体をブロックしてしまおうというわけで、過敏性腸症候群の治療薬ラモセロトンが先回りしてセロトニン受容体と結合すると、セロトニンが作用することが出来なくなり、下痢も治まります。

セロトニンまとめ

・現代人の食生活でトリプトファンが不足する事は考えられません。余計に摂取してセロトニンを増やそうと考えるのは、ほとんど意味がありません。

・セロトニンは幸福感が得られる興味深いホルモンというイメージがあるかもしれませんが、効果は体質に左右されるので、期待した効果が得られるとは限りません。

・疼痛緩和などの目的で一時的に増やす必要があれば、SNRIなどの再取り込み阻害剤を使い、必要以上に作用している場合はセロトニン受容体をブロックします。受容体の作用を阻害するのは一時的な処置に留めて、根本的な治療が必要です。

・薬によってセロトニンの濃度を上げたり、受容体をブロックしたりすると、嘔吐や下痢などの副作用が出やすくなります。

・SSRIなどの薬を服用中に、震えが出ればセロトニン症候群を疑いましょう。そのまま飲み続けると錯乱状態に陥って生命の危険が出てきます。

・うつ病の原因がセロトニン不足とは限らないので、治療にセロトニンが必要とも限りません。大うつ病に抗うつ剤のSSRIやSNRIは使われません。

・数多いホルモンの中で、セロトニンだけに目を向ける意味はありません。他にも興味深いホルモンは多いので、それも含めた全体のホルモンバランスに目を向ける方がいいと思います。

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