三菱重工の年収はどのくらい？マンモス企業は本社採用が一番高給？

三菱重工は、最もシンプルにいえば機械メーカーです。

ただ、少し前（2013年）までの事業本部の名前だけ見ても、①船舶・海洋、②原動機、③原子力、④機械・鉄構、⑤航空宇宙、⑥汎用機・特車、⑦冷熱、⑧工作機械、⑨エンジニアリング、とあります。

これを見るだけでも単なる機械メーカーではないことはすぐに理解できるでしょう。「機械のデパート」と呼ぶ人もいるぐらいです。

また、それぞれの分野では日本最大、世界でも有数のシェアを誇っています。

この事業本部制は改められ、今は4つの事業ドメインに再編されています。ですが、カバーしている範囲は変わりません。

また、三菱東京UFJ銀行、三菱商事とともに、三菱グループ御三家と呼ばれています。日本で最大の企業グループ三菱グループの一員で、しかもその中心なのです。

歴史的に見ても、三菱電機、三菱自動車などの企業はここから独立する形で始まっています。

少し大げさにいえば、日本の産業界を牛耳っている企業のひとつです。

三菱重工の平均年収ってどのくらいなのか知っておこう

大卒・院卒の総合職（理系・文系）

初任給は三菱重工の募集要項に出されている数字で、2015年4月の実績です。

30歳推定年収などは、東洋経済新報社が出したものです。順位は全上場企業3千数百社の中でのものです。

初任給（月額2015 年4月）＝修士修了 233,000円
大卒 209,000円
30歳推定年収＝666万円、132位
40歳推定年収＝821万円、163位
平均年収＝802万円（平均38.9歳）、224位

高卒・高専卒

高卒・高専卒の場合、本社での一括採用ではなく、造船所や製作所ごとの募集になっています。

違う言い方をすれば、「大卒・院卒の総合職（理系・文系）は本社での一括採用。技能職（いわゆるブルーカラー）はそれぞれの事業所ごとの採用」ということになります。

たとえば、高校卒での神戸造船所の初任給は166,000円（2014年4月実績）、広島製作所は168,000円（2016年実績）です。

高専卒で広島製作所は約188,500円（2016年実績）です。

同業他社との比較

参考に

同じ機械業界の大手としては、ダイキン工業、コマツ、IHI、ジェイテクト、クボタ、日本精工、日立建機、NTN、住友重機などがあります。

ですが、業界2位のダイキン工業でも売上高は年間2兆円と、三菱重工の半分程度でしかありません。また、三菱重工ほど幅広い製品をカバーしているところもありません。

あまり比較の対象になるようなところはありません。

総合職

営業職・事務職であれば、ほかの業種も含めて気になるところとの比較になるでしょう。

技術職

また、技術系ならば、自分の興味のあるジャンルの企業との比較をしたほうがいいでしょう。

例えば、自分が技術系で造船や建設機械などに興味があるのならば、三菱重工と住友重機との比較といった形です。住友重機の場合も住友系とやはり財閥系企業なので、その意味でも条件をそろえやすいです。

ちなみに住友重機の場合、平均年収は779万円（平均43.9歳）で、順位は283位です。

50歳以上は？

また、東洋経済新報社では50歳での給料比較は出していません。もし、出したとしても三菱重工の場合はあまり参考にはならないでしょう。

というのは、三菱重工の場合、単独でも21,000人以上の従業員がいます。連結子会社を含めると、約82,000人です。

総合職で入社したらならば、主任職クラスまではほぼ自動的に昇格するでしょう。年齢でいえば30歳前後です。

ですがその後、定年まで三菱重工本社に残ったとしたら、高い役職に就く人と、そうでない人が出てきます。いくら大企業でポストが多いとはいえ、全員が課長や部長、所長になるわけにはいかないのです。

また、子会社が多い分、そこへの出向や転籍も多いです。同じグループ内の企業とはいえ、その中のあまり業績のよくないところへ低いポストで転籍すると、給料は大幅に減ることになります。

ストレートにいってしまうと、「50代ともなると出世する・しないで給料が大幅に変わる」ということです。

機械業界に関する基本的な知識

機械産業・機械メーカーといった言い方をした時の「機械」は、まずは産業用機械・産業用機器を指していることが多いです。

これには工作機械、重機・建機、医療用機器、OA機器、計測機器などが含まれます。

産業用機械以外にまで範囲を広げると、天然ガス・石油の採掘プラント、発電所、船のエンジン部分・本体、建設機械、農業機械なども、この機械産業の製品です。

本来は自動車もこの中に入れていいようなものですが、こちらは規模も大きく、別のジャンルとして扱われます。

それぞれを得意とするメーカーも多く、たとえば農業機械ならばクボタ、計測機器ならば島津製作所、プラントならば千代田化工建設といった企業があります。

三菱重工の場合は、こういった特定のジャンルに限らず、どの分野でも有力メーカーです。

例えば、造船部門では製造トン数でこそ、国内9位前後ですが、豪華客船など特色のあるものが多いです。護衛艦、潜水艦、巡視艇なども三菱重工の得意とするところです。

三菱重工について

三菱重工は三菱グループの一員であるだけではなく、三菱東京UFJ銀行、三菱商事と共に、「三菱グループ御三家」の一角です。

三菱財閥は、明治26（1893）年土佐藩出身の岩崎弥太郎が作った三菱合資会社に始まります。

ここが中心になって、造船業・航空機産業、鉱業、金融業、貿易、交通・輸送業などに進出します。

三菱重工の直接の歴史は大正10（1917）年の三菱造船の設立に始まります。

ですが、その起源をさかのぼると、明治17（1884）年に岩崎弥太郎が国営の長崎造船所を借り受けたところにまで行き着きます。

三菱の造船部門の歴史は、ほぼそのまま近代的造船業の歴史といっていいでしょう。

第二次世界大戦当時世界最大の戦艦だった「武蔵」もこの三菱重工長崎造船所で建造されます。

この造船業は三菱重工だけではなく、三菱財閥全体の製造業の中でも最も古く、また長く中心になっていました。

また、三菱電機はもっぱら変圧器、電動機などを扱うメーカーとして、大正10（1921）年に三菱重工から分離・独立しています。

戦後、この財閥のシステムは解体されます。ですが今でも、三菱グループとしてやや形を変えながらも、互いの連携を保っています。

三菱東京UFJ銀行はグループ内での金融関係の、三菱商事は貿易&物資売買の中心です。そして、製造業関連の中心になるのが三菱重工です。

それを象徴するように、三菱自動車も元は三菱重工の中の一部門として始まりました。昭和45（1970）年にスピンアウトする形で別の企業となっています。

また、YS-11以来の国産旅客機として注目を浴びている「MRJ（三菱リージョナルジェット）」も、三菱重工で実現に向けて計画が進められました。

今はこの部門も100パーセント出資子会社として別会社の形にし、三菱航空機となっています。

三菱重工について知るには

三菱重工を知るには、三菱重工そのものだけではなく、三菱財閥の面からも考える必要があります。

この三菱財閥については、

・『週刊ダイヤモンド 2016年 1/30 号 (三菱最強伝説)』（周間ダイヤモンド・2016/1）

といった本が出ています。

また、古くは戦艦「武蔵」を建造し、「零式艦上戦闘機（ゼロ戦）」も開発・製造しました。今でも、護衛艦・戦車・戦闘機など自衛隊に対しては最大の納入メーカーです。

兵器産業としての面があるのは間違いないです。

これについては、少し古いですが、

・『三菱重工の正体―国策防衛企業』（週刊金曜日・2008/3）

が詳しいです。