ビーントゥバーの楽しみ方!奥深いチョコレートの魅力
「スーパーで買えるようなチョコレートは論外。高級チョコレート専門店が作っているチョコレートが大好き」という人も多いでしょう。
普段はチョコレートに見向きもしない人も、バレンタインデーに限っては、そういった高級チョコレート専門店に足を運んだりもするでしょう。
でも、それは「Bean to Bar(ビーントゥバー)」のお店ですか、それともそうでないお店ですか。
これからはビーントゥバーのお店を探してみましょう。東京だけではなく、地方都市にもどんどん増えています。案外近くにもあるかもしれません。
また、多くのところで通販も扱っています。
ビーントゥバーは大量生産に向かないところから、ほとんどが地域に根付いたお店です。チェーン展開もほとんどしていませんし、しても数店です。
通販を使い、お取り寄せさえすれば、いろいろなチョコレートに出会うことができます。いずれも個性豊かな商品ばかりですので、きっとすごいお気に入りや、意外な味や香りのチョコレートが見つかるはずです。
1.ビーントゥバーとは
これまでのチョコレートは、それが町の高級菓子店であれ、チョコレート専門店であれ、すでにチョコレート(板チョコ)まで仕上がったものを大手製菓メーカーから仕入れていました。
それを溶かし、いくらかアレンジし、自分のところの商品として作りなおしているのです。
これだと、大手メーカーが用意したものの中からしか、元になる板チョコを選べません。あまり種類も多くないですし、個性の強いものもありません。
それぞれのお店がいくらがんばっても、品質を上げたり、個性を強くしたりするにも限度があります。
「ビーントゥバー(bean to bar)」は無理に日本語にすると、「カカオ豆(bean)から板チョコ(bar)へ」です。
つまり、「どのカカオ豆を使うかを選ぶ。それを焙煎し、成型もして、お店に並べる」といったように、チョコレート作りのすべてを自分のところでやったチョコレートのことをいいます。
だからこそ、その店だけの味・舌触り・香りが実現できます。究極のこだわりチョコレートなのです。
ヨーロッパやアメリカではすでに広まっています。ようやく日本にも上陸し、広がり始めています。
2.ビーントゥバーでの作業工程
・カカオ豆の選別
「ビーントゥバー」のビーン(bean)に当たる、最初の工程です。
目指す完成品のチョコレートに合った品種を選ぶ必要があります。途中の工程では、いくつかの品種をブレンドもします。
その選んだ品種のものでも、さらに傷んでいる豆やゴミを取り除き、いいものだけを残します。
・分離・粉砕
豆を砕き、皮の部分などは取り除きます。
・焙煎
コーヒー豆と同じように、炒って焦がします。これで初めて、カカオ豆の風味や香りが出てきます。
職人の腕と経験が試される場面です。たとえ同じ産地・同じ品種のカカオ豆であっても、それぞれ状態が違います。それに合わせて炒る時間や温度を変えます。
この分離・粉砕と、焙煎は逆にするところもあります。つまり、先に炒っておいてから、皮を取り除き、粉砕します。
焙煎と粉砕が済み、粉状になったものを「カカオ・ニブ」と呼びます。
・配合・混合
ここまではカカオ豆の種類ごとに行っています。同じ種類の中でもコンディションが違う場合も分けて行います。
この種類ごとにできたカカオ・ニブを混ぜあわせます。これらをさらに細かい粒子にします。これにはココアバターと呼ばれる脂肪分が大量に含まれていて、その作用でドロドロのペースト状になります。これをカカオマスと呼びます。
さらにはこれに砂糖などを混ぜます。
・微粒子化
この時点ですでにかなりチョコレートに近くなっています。ですが、まだ舌触りがザラザラで、香りも少ないです。
これを機械にかけ、長時間練り上げることで、舌触りが良くなり独特の香りも出ます。
・温度調整
温度を下げていくことで、カカオマスに含まれる脂肪分・ココアバターが固まります。これを型に入れ、形を整え、ようやく「板チョコ(bar)」まで来ます。
この板チョコ自体も商品になりますし、また、これを元にして別の形のチョコレートにしたり、チョコレートが入った様々な派生商品ができます。
3.ビーントゥバーならばどれでもいいわけではない
ビーントゥバーでする作業はたくさんあります。職人は、そのすべての工程に習熟していなければなりません。あるいはそれぞれ工程ごとのエキスパートをそろえる必要があります。
たとえば、「豆を自分のところで選ぶことができる」といっても、その豆に対する目利きができなければいけません。ひとつの種類を選ぶこともあれば、特徴を活生かしながら、いくつもの種類の豆をブレンドすることもあります。
これがすべての工程で必要になるのです。これまでビーントゥバーが一般的にはならなかったのも納得です。
「ビーントゥバーは、『あえてそれをやろう』という職人魂を持った人がいるところだけができる」ともいえます。
ただし、うまくいっているところばかりとは限りません。また、大手メーカーから仕入れたものを溶かして作りなおす場合に比べ、個性の幅も広いです。
つはりは、「当たり外れも大きい。自分の好みに合う・合わないも、極端になる可能性がある」ということです。十分に選ぶことが大事です。
4.ビーントゥバーの楽しみ方
4-1.種類・産地の違うカカオ豆を楽しむ
このように作る側がこだわりぬいているのがビーントゥバーです。値段が高くなるのも仕方ないところです。
楽しみ方のひとつは味もさることながら、「職人さんたちのこだわりについてうんちくを傾ける」というのがあります。
ちょっとワインに近い楽しみ方です。ワインならば通の人もたくさんいて、「原料のぶどうにはどんな種類がある。○年の○地方のぶどうは特に高品質のものが取れたから、ワインも味が良くなった。どこの蔵はどんな作り方をしている」とやりますよね。
これを「カカオ豆はこれとこれを使っているから、香りがいい。焙煎は深めにして、コクを出してある」とチョコレートでもできるわけです。実際にカカオ豆の収穫した年が説明に書かれている場合さえあります。
さらには「テイスティング・メニュー」を用意しているお店もあります。「味見」ですね。トリニダード、キューバ、ハイチ、ベトナム、マダガスカルなどなどカカオ豆の産地・種類の違うチョコレートが少量ずつ出てきます。
4-2.出来立てチョコレートを楽しみ、工房を見学する
お店と工房が一緒になっているのが普通です。また、カフェなども併設されているのが一般的です。
「もし、お店まで足を運ぶことができるのならば、出来立てのチョコレートが味わえる」ということです。出来立てのチョコレートなんて今まで考えたことがなかったでしょう? 最も違いが出るのが香りです。きっとびっくりするはずです。
工場スペースとの仕切りをガラス張りにするなど、作業の一部が眺められるように工夫されているお店も多いです。
それを眺めながらうんちくを傾けるのも楽しいでしょう。お子さん連れならば、ちょっとした社会見学になります。
4-3.派生商品がたくさんある
知っている人も多いでしょうけども、ココアも原料は全く同じです。
工程もカカオ・ニブまでは変わりません。ここからココアバターの量を減らし、粒子を細かくしてパウダー状にするとココアになります。
ですから、多くのお店では併設したカフェなどにココアのメニューも用意しています。もちろん、こだわりのココアで、しかも出来立ての新鮮なものを味わうことができます。
チョコレートやココアを使ったフードメニュー、ドリンクメニューも豊富です。
また、カカオ豆の状態のままでも商品化されている場合まであります。ナッツのような感覚でボリボリ食べることができます。
通販でも様々なものを扱っているでしょう。
これらは、やはりカカオ豆から板チョコまで自分のところで作業しているビーントゥバーならではです。今までのチョコレート専門店では、いくら「専門店」といってもできることには限りがあります。
5.チョコレート原料のカカオ豆の種類
ビーントゥバーで作られている商品は、たいていは長めの説明がついています。こだわりのチョコレートですから、もっともなことですね。
買う側にすれば、その説明の中で最初にチェックするのは、使ってるカカオ豆の種類でいいでしょう。まずはこれを押さえておきましょう。
たくさんの種類がありますが、元になっているのは主に次の3種類です。ほかのものはここから改良などで派生したものです。
・クリオロ種(CRIOLLO)
古代からあるとされる種類です。
香りがとてもよく、味も苦みが少ないです。もっとも人気が高い品種です。
ただし、病気や害虫に弱く、1800年代の半ばに壊滅的な被害を受けました。今はベネズエラ、メキシコなどでほんのわずかな収穫量があるだけです。
そのため、ほとんどの場合、ほかの種類のカカオ豆とブレンドして使われます。
・フォラステロ種(FORASTERO)
成長が早く、病気や害虫にも強い品種です。
西アフリカや東南アジアなど広い範囲で栽培されています。3種類の中では最も一般的なチョコレート原料です。
苦みは強めです。
・トリニタリオ種(TRINITARIO)
中米・カリブ海に浮かぶ島、トリニダード島で、クリオロ種とフォラステロ種とを掛けあわせて作られた品種です。
栽培が比較的用意で、品質もいいので、今ではベネズエラなど中南米で盛んに作られています。
もちろん、同じ品種の中でも、産地によって味や香りも変わります。また、栽培の仕方による品質の違いもあれば、その年の気候でも変化があります。
なので、わざわざ板チョコに、「○種カカオ豆、○国・○年産」といった表示をするビーントゥバーのお店もあるのです。
焙煎などの時も、その品種やその時の豆のコンディションに合った処理をしなければいけません。やはりワイン並みに奥が深い世界なのです。
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