焼き肉バイキングで「焼いた肉」に感染するカンピロバクター菌と、「一晩寝かせた熟カレー」で繁殖するウェルシュ菌
カンピロバクターの強力な感染力に注意!
カンピロバクター菌は感染力が強く多くの家畜やペットが保菌しています。非常に少ない細菌数でも感染するので、生肉に接触するだけで感染を起こします。そして、わずか100個の菌が口の中に入るだけで感染するという性質を持ち、日常的に感染する機会の多い細菌です。
家畜の保菌率も高くなっています。鶏の保菌率50%~80%を筆頭に、豚50%、牛40%、羊20~70%、ペットが15%です。
ヒトに感染すると体内で毒素を放出するので、食中毒特有の腹痛、下痢、嘔吐などの症状を引き起こします。
感染力が強力とはいえ、熱に弱いので75℃で1分間程度加熱すれば死滅します。焼肉定食では感染することはほとんどありませんが、焼き肉バイキングに行くと危険性が急増します。バイキングの場合は感染に関して注意事項の説明を受けますが、あまり気にする人は少ないのかもしれません。
今年は焼き肉バイキングで感染した中学生の女子が死亡しています。死因は呼吸筋の麻痺による呼吸困難です。小児や老人であれば体力も抵抗力も低いので危険性は高まりますが、この菌で犠牲者が出たのは17年ぶりです。
意外な盲点を突くカンピロバクター菌
普通は生肉を箸でつかんで鉄板の上に乗せます。75℃・1分間で殺菌できるので300℃では数秒です。それをそのまま口に入れると感染します。この場合の感染経路は箸です。肉は加熱されて殺菌できても箸に菌が付着したままなので、感染した焼き肉が胃に入ります。
トングを使って焼くとしても、十分に火が通って焼けた肉を箸で取ろうとしたときに、一緒に食べている者が鶏のささみを置いたりすると、焼き肉に接触するわけです。
その時にほんのわずかな数のカンピロバクター菌が無菌状態の焼き肉に付着します(二次汚染)。そこまで気にする人はいないでしょうから普通に食べますね。そのわずかな接触でも感染してしまうのが、この食中毒の怖い特徴です。
大半は軽い症状で済みますが、ごく稀に神経症状も!
そしてヒトの胃に入るとエンテロトキシンという毒素を放出します。3~4日間の潜伏期間を経て食中毒の症状出る場合もありますが、もし発症したとしても症状は数日で治まります。
他の食中毒とは違って症状が軽いので病院に行く人はほんの一部です。結果的に保健所は感染者数の把握が難しくなり、被害者の実数は感染症の中で最も多いと推測されています。
ごく稀なケースですが、10日ほど経過して忘れた頃に「ギラン・バレー症候群」という神経障害を発症することがあります。自らの神経を破壊する自己免疫反応というものですが、神経障害によって麻痺が起きると手足の力が入らなくなります。
最後まで放置していれば肺の呼吸筋の麻痺を起こして死亡することもありますが、最初に足の麻痺を感じた時点で早めの治療を受けると治る確率は高くなります。
100℃1時間の高温に耐えるウェルシュ菌とは!?
他にウェルシュ菌というものにも注意しましょう。
ウェルシュ菌という嫌気性細菌は空気の無い所で繁殖して空気に触れると死滅します。ヒトの大腸内にも存在して硫化水素などの刺激性ガスを発生させて腸管を刺激します。下から出るガスがタマゴ臭い時はこの菌が多い時です。
悪玉ウェルシュ菌は小腸で増殖して芽胞(熱や空気に耐える形)になる前に毒素を放出して大腸を刺激するので、腹痛を起こして下痢や便秘になりますが、吐き気や発熱は起きません。腹痛があれば早めに下の方から出しておく方が腸管を刺激されずに済みます。
土壌や下水道にも多く存在するウェルシュ菌は、高温・有酸素という悪条件の中では芽胞になり、好条件では細菌として繁殖するという形態を取るため、意外なところで集団感染が増えます。
衛生管理が徹底している学校給食や、仕出し屋、飲食店、弁当屋など、前日に大量に加熱処理をして作り置きをした食材の中で繁殖します。
加熱処理をしている間は芽胞という形で100℃1時間~4時間の加熱に耐えて、45℃以下になると菌体として急に増殖を始めます。
加熱処理を行って前日に作っておいた食品だから殺菌できているはず。という思い込みの裏をかいた生存の手段を取る細菌です。これが食中毒1件当たりの患者数の平均が159人と多くなっている原因です。
この菌があまり知られていなかった頃は、前日に「作り置きした給食」に感染を起こして、温度が下がると増殖を始めるので「給食菌」と呼ばれていたこともあります。容器を密閉して保存しても危険性は減りません。当日に再加熱しても菌の繁殖は異常なほどに増えているので、十分な加熱時間が必要です。
カレーは一晩寝かせると旨みとコクと毒素が出る?
グリコのHPでは「一晩寝かせたカレーはなぜ美味しい?」というコラムがあります。
”具材の持つうまみ成分がソースに溶けだしてコクが増します。「冷ます」と「温める」を繰り返すと素材の旨みの熟成が進みます”
などと書かれていますが、繰り返すたびに毒素を放出したり増殖するので悪循環です。
「一晩寝かせた熟カレー」という商品名を聞いたような感じもしますが、家庭での作り置きはよくありますね。自然に存在している嫌気性細菌なので、酸素に触れることのないニンジン、ジャガイモ、タマネギなどの根菜には当然のようにウェルシュ菌は付着しています。特にカレーの材料は細菌だらけかもしれません。
作った後はパックに小分けして冷蔵しておけば菌が増えることはないので、翌日に細菌が芽胞の状態ではないとき(冷蔵庫から出してすぐ)にもう一度沸騰させて、芽胞になる隙を与えずに100℃以上で加熱するとほとんどのウェルシュ菌は死んでくれます。
細菌によって殺菌の仕方が違うと面倒です。わずかな細菌数で二次感染を起こすカンピロバクター菌と、高熱に耐えるウェルシュ菌には特に要注意です。
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