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リタリンって合法の覚醒剤なの?!効果とコンサータとの違いって?

      2016/08/04

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1.ナルコレプシー

「昨日はよく眠ったはず」「眠気などで出るはずがないような、緊張する場面」といったことにおかまいなく、いきなり眠りに落ちてしまう。目が覚めたら、20分、30分もたっている……

それ、性格ややる気の問題ではなく、ナルコレプシーかもしれません。過眠症と呼ばれる病気の一種です。

 このナルコレプシーやADHDの代表的な治療薬が、リタリンです。

ただし、気軽に頼ってはいけません。資格を持った一部の医師しか処方せんが出せません。副作用や依存性が高いなどの問題もあります。

メリットもデメリットも理解し、医師とも十分相談した上で使うようにしましょう。

2.リタリンの効果

 2-1.有効成分はメチルフェニデート

リタリンは向精神薬・中枢神経刺激薬の一種です。中枢神経を刺激し、眠気をなくします。

「リタリン」の呼び名は、製薬会社による商品名です。実際に中枢神経を刺激するのは、これに配合されているメチルフェニデートという成分です。

メチルフェニデートは、ドーパミントランスポーターの働きを弱めることがわかっています。

2-2.ドーパミンとは

ドーパミンは神経伝達物質の一種です。

ひとつの神経細胞の中で、端からもう一方の端への情報は、電気信号で伝わります。そこから先、次の神経細胞まではほんの小さなすき間があり、この電気信号は伝わりません。

このすき間をつなぐのが神経伝達物質です。電気信号がやってくると、神経細胞の先端から放出されます。これを次の神経細胞が受け取り、ここでまた電気信号が発生します。

これらの繰り返しで、情報は体の中を先へと伝わっていくのです。

特にドーパミンは、運動の調節、ホルモンの分泌、意欲、学習などの情報伝達に深くかかわっています。

ドーパミンが不足すると、体の動きが悪くなったり、パーキンソン病、ADHD(注意欠陥・多動性障害)の原因にもなります。ナルコレプシーのそのうちのひとつです。

逆に多すぎると、妄想や幻覚が起きたり、強迫神経症になります。

2-3.ドーパミントランスポーターとメチルフェニデート

トランスポーターは、一般的な訳語では運び屋のことです。神経の働きの関連では「再取り込み口」と訳されることがあります。

放出されたドーパミンは、次の神経細胞が全部を受け取るわけではありません。余る分も出てきます。これは回収され、再利用されます。

その回収の時に、このドーパミントランスポーターが働きます。たんぱく質の一種で、神経細胞の膜の部分にあります。ドーパミンをキャッチして細胞膜の中に入れます。

ところがこの回収の働きが強すぎ、ドーパミンのほとんどがもとの神経細胞に戻ってしまうことがあります。こうなると、次の神経細胞に受け渡す量が不足します。ここまで伝えられてきた情報も途切れます。

このドーパミントランスポーターの回収作業を邪魔するのが、メチルフェニデートです。「取り込み口にフタをする」と表現されることもあります。

ただし、しっかりとわかっているのはここまでです。これが、なぜナルコレプシーを防ぐことになるのかのメカニズムは、よくはわかっていません。

3.リタリンの服用方法

 リタリンには1錠当たり、10ミリグラム含まれています。1日の最大の服用量は60ミリグラムです。

 服用後1~2時間で効果が最大になり、4~5時間で効果はなくなります。

ナルコレプシーの治療に使う場合は、2~6錠を朝食後にまとめてとるか、朝食後・昼食後の2回にわけてとるのが一般的です。

夕食時などに使ってしまうと、夜、寝付きが悪くなったり、睡眠が浅くなる可能性があるのです。

ただし、症状が重い場合や医師の判断によっては、朝食後2錠、昼食後1錠、夕食後1錠といった使い方をする場合もあります。

4.リタリンの副作用

 リタリンで問題とされるのは、習慣性と依存性の強さです。

最初は少しの量で効いていても、それが長続きしません。次第に服用量を増やすことになります(習慣性)。

また、服用をやめたり、服用量を減らすと、今度は精神状態が不安定になるなどの離脱症状(禁断症状)が出ることがあります(依存性)。

普通に使っていても出る可能性のある副作用は、高血圧、動悸、頭痛、食欲減退、嘔吐、のどの渇きなどです。また、不眠症もよくみられます。

また、一気に大量に服用した場合には、吐き気・嘔吐、痙攣、錯乱、妄想などの症状もみられます。

5.リタリンの乱用問題

5-1.覚せい剤に極めて近い

リタリンなどの向精神薬には、気分がスッキリする・眠気がなくなるといった作用があります。

使う量によっては、酩酊感(アルコールで酔っ払ったような感じ)、幸福感が高まったりします。

これは、覚せい剤(覚醒剤)と同じです。副作用の強さや依存性の高さなどの危険性も、ほぼ同じです。

違いはといえば、病気の治療に役立てることができるかどうかぐらいです。

そのため、覚せい剤の一種や代用品として注目し、用いるような人までいます。

「最初はナルコレプシーの治療薬として、医師から処方された。そのうち手放せなくなって、気がついたら覚せい剤と変わらない使い方になっていた」というパターンも多いようです。

5-2.資格を持った医師しか処方せんが出せない

リタリンやモダフィニルなどには、一般の医薬品とは違う規制がかけられています。

両方とも、第一種向精神薬に指定されています。これは第三種まであるうちの最も厳しいものです。

例えば、医師や精神科医というだけでは処方せんは出せません。一定の研修を受けた資格所有者だけが、処方せんを出せます。リタリンを処方してくれる病院は限られます。

また、調剤する薬局の方でも、使用量、使用目的、使用日などの記録を保存します。薬品自体の保管には特に注意をすることになっています。

こうやって、本当に必要としている患者以外の手に渡ることを防いでいます。

とはいえ、医師や医療機関の側の一部には、ルーズなところもあるのが現実です。患者の求めに応じて、大量に与えてしまうところもあるようです。

また、手に入れようとする側も必死です。依存性の高さに負けてしまっているのです。中には、「簡単に出してくれるところを探して、10軒以上も精神科を回った」といった例まであります。

こういった乱用を防ぐため、より厳しい規制を求める声も大きくなっています。

6.コンサータ、モダフィニルとの違い

 6-1.コンサータ

同じメチルフェニデートを有効成分としている医薬品にコンサータがあります。

メーカーが異なり、商品名が異なるだけではありません。製造方法も違います。

リタリンはごくありふれた錠剤です。

一方、コンサータの場合は、胃腸では溶けないカプセルを使います。この外側にメチルフェニデートを塗り、中にも入れてあります。

中にある分は徐々に出るようになっています。この工夫のおかげで、1回のめば12時間程度効果が持続します。

こちらの方は、ナルコレプシーではなく、ADHD(注意欠陥・多動性障害)の治療薬です。

ADHDは発達障害の一種です。先天的(生まれつき)に、脳に障害があり、不注意・多動性・衝動性といった症状が出ます。

情報伝達物質の流れをよくすることで、これらが緩和されるのです。

関連⇒コンサータの副作用はどんなもの?ADHDの治療薬は子供には危険?

6-2.モダフィニル

また、ナルコプレシーにも使われる治療薬としては、リタリン以外ではモダフィニル(モディオダールR錠)があります。

日本では2007年に認可されました。

副作用はコンサータよりは少ないとされています。今では治療を始めたばかりの患者には、コンサータよりも先に試すのが一般的です。

7.リタリンとコンサータの違いを詳しく

リタリンもコンサータも、メチルフェニデートを有効成分とする医薬品です。

メーカーが違うだけではなく、製剤(薬としての作り方)が異なります。わざと効き方を違うようにしているのです。

ナルコプレシー(過眠症の一種)に使うのはリタリンの方です。コンサータはADHD(発達障害の一種)に用います。

7-1.メチルフェニデートの働き

 メチルフェニデートは、より正確にはメチルフェニデート塩酸塩といいます。人工的に合成される成分です。

ドーパミントランスポーターの働きを抑えます。

7-1-1.ドーパミンとは

脳や神経の中にある神経細胞からは細長い足が伸びています。これを軸索(じくさく)といいます。この中をごくごく弱い電気が流れ、信号を伝えます。

この軸索の先端部分と次の細胞の接続する部分をシナプスといいます。

「接続する」といいましたが、実は厳密に見ると、軸索の先端と次の神経細胞の間にはすき間があります。この間は、電気は通りません。

そこで、軸索の先端から神経伝達物質を放出し、もう一方ではこれを受け取ります。受け取った側の細胞はこれに反応して電気を発生させます。これがまた、軸索の中を流れます。

これが繰り返されることによって、脳や神経の中で信号が伝わっていきます。

ドーパミンはこの神経伝達物質の一種です。

7-1-2.ドーパミントランポーターとは

軸索の先端から放出されたドーパミンは、全部が次の神経細胞に受け取られるわけではありません。

余った分は回収され、放出した軸索の先端の中に戻されます。これは今後の放出に使われます。

その回収役をするのが、たんぱく質の一種・ドーパミントランスポーターです。軸索部分の細胞膜にあって、ドーパミンをキャッチし、膜の内側に取り入れます。

ところが、何らの理由でこのドーパミントランスポーターが働き過ぎてしまうことがあります。となると、次の神経細胞に渡すドーパミンの量が少なくなってしまいます。

あるいは、もともとドーパミンの量が少ない場合もあります。この場合も同様です。

もし、トランスポーターの働きを抑えれば、シナプスの中でやりとりされるドーパミンの量が増えます。情報もスムーズに次の神経細胞に伝わります。

7-1-3.もとはうつ病に使われたメチルフェニデート

そのトランスポーターの働きを弱くするのが、メチルフェニデートなのです。

ただ、これでなぜナルコレプシーやADHDの症状の改善につながるのかのメカニズムは、まだ正確にはわかっていません。

メチルフェニデートが日本で使われ始めたのは昭和33(1958)年です。

当初はうつ病治療用の有効成分でした。ですが、平成19(2007年)に製薬会社がうつ病治療薬としての申請を取りやめました。

今はうつ病の治療には通常は使われません。また、使ったとしても健康保険は適用されません。

7-2.リタリンとコンサータの製剤の違い

 リタリンはナルコレプシーの、コンサータはADHDの保険適用薬です。つまり、健康保険も利き、国も認める治療薬です。

7-2-1.リタリン

ナルコレプシーとは、日中に、場所やタイミングを選ばずに襲ってくる眠気の症状をいいます。日本人には特に多いことがわかっています。

この症状を抑える薬がリタリンです。

リタリンの場合、一般製剤です。その呼び方のとおりに、特別変わった作り方はしてません。

1錠当たり10 ミリグラムのメチルフェニデートを含みます。

ナルコレプシー患者の場合、2~6錠を1日1回朝食後にのむか、1日2回朝食・昼食後に分けるのが一般的です。

服用後1~2時間で効きめが最大になり、4~5時間でほぼなくなります。

午後に用いると、不眠症を引き起こす可能性が高いです。

7-2-2.コンサータ

ADHDは、日本語では注意欠陥・多動性障害といいます。

不注意(集中力がない)、多動性(落ち着きがない)、衝動性(考える前に実行してしまう)といった症状があり、社会生活を送る上での問題を抱えていることが多いです。

しばしば、「しつけが悪かった」など育ち方や性格の問題と間違えられる場合があります。

似たような言動であっても、先天的(生まれつき)に脳に障害があって、これが原因になっている場合だけをいいます。

コンサータは、この症状を抑える薬です。

有効成分はリタリンと同じメチルフェニデートですが、徐放製剤(徐放性製剤)という作り方をしています。

徐放製剤は、成分がゆっくり溶け出すなど、効きめが持続する薬の作り方です。また、その錠剤を徐放錠といいます。

コンサータの場合はカプセルに工夫があります。最初は外側に塗ってあるメチルフェニデートが溶けます。カプセル内にもメチルフェニデートがあり、この分は10時間以上かけて徐々に外に出てきます。

ですから、服用は通常朝1回で済みます。

このカプセルは、胃腸でも溶けることがありません。便と一緒に出てきます。

カプセルには、18ミリグラム錠・27ミリグラム錠、36ミリグラム錠と容量別に3種類あります。

少ない量からはじめ、効きめが弱い場合は量を増やしていきます。最大は大人の場合で、1日72ミリグラムです。

7-3.リタリンとコンサータの副作用

 リタリンもコンサータも、第一種向精神薬に指定されています。第三種まであるうちの最も厳しい規制がかかっています。

医師の処方せんが必要なだけではなく、医師・医療機関・薬局での必要な扱い方が細々と指定されています。

保管に注意するだけではなく、使用量、使用目的、使用日などの記録も保存しておかなければいけません。

 医師や薬剤師も登録制になっています。リタリンやコンサータに関する所定の研修を受けた人だけが登録医師・登録薬剤師となり、処方せんを出したり、調剤できます。

「精神病院などでも、一部のところでしか、薬を出してくれない」ということです。

これは副作用や依存性が強いせいです。ふたつの薬とも有効成分が同じですから、この副作用などはほぼ共通しています。

・一般的な副作用

高血圧、動悸、頭痛、食欲減退、嘔吐、のどの渇きなど。また、不眠症を引き起こす場合があります。

・一時的に過剰摂取した場合

吐き気・嘔吐、痙攣、錯乱、妄想などが起こります。

・長期に摂取した場合

次第に効かなくなります。その場合は使用量を増やすことになります。また、急にやめると、離脱症状(禁断症状)が出ることがあります。

7-4.乱用が問題に

 リタリンもコンサータも大量に摂取すると、覚せい剤やコカインと同様の症状になります。依存性の高さもコカインなどと同じです。

そのため、患者に処方するにしても、厳しい規制がかけられているのです。

ですが、現実には、一部とはいえ医療機関の中には安易に考えるところもあります。患者の求めに応じて、大量に出してしまうのです。

こうやってリタリンやコンサータを大量に手に入れ、乱用する患者が後を絶ちません。

こういった人でも、最初から乱用目的ではなく、「治療のために使っていた。やがて癖になり、どんどん依存するようになった」というパターンがほとんどです。

市販薬ではありませんので、薬局・薬店で販売されていることは、もちろんありません。ですが、個人輸入されたものが、ネットで販売されていることもあります。個人輸入です。これは麻薬取締法違反になります。逮捕者も出ています。

何度か社会問題にもなり、その度に注意が呼びかけられてきました。第一種向精神薬に指定されたのも、そういった動きの一つです。

ただ、規制強化などの効果でしばらくは問題が収まるが、数年するとまた緩みだす……といったことを繰り返して今日まで来ています。

乱用した場合、先に挙げたような副作用が見られるだけではなく、突然死などもしばしば報告されています。

また、違法薬物への抵抗感もなくなるようです。リタリンやコンサータを乱用する多くの人は、ほかのドラッグ類にも手を出しています。

こうなると、まともな体に戻すにも相当な苦労が必要です。やめられなければ廃人への道が待っています。

8.まとめ

 このように、リタリンやコンサータは安易に使える薬ではありません。

医師の指示をしっかりと守るだけではなく、医師や医療機関も信頼できるところを選ぶ必要があります。

まちがっても、「医師が厳しいことをいうので、ほかの病院に変える」といった考え方をしてはいけません。

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