相続税対策おまとめ!もしものときに正しく相続するための方法
親などが亡くなった時に、現実の問題として浮かんでくるのが、相続税です。遺産をもらった時にかかる税金です。
とはいっても、だれもが支払いが必要になるものではありません。一定の額を超えた人たちだけです。
また、ほんの少し工夫をするだけで、その支払額を大きく減らせます。
その工夫の多くは、遺産を残してくれる人が亡くなる前にしておかなければいけません。相続税対策ということですね。
となると、「自分の場合は相続税がかかりそうか」「掛かるのであれば、どんな対策をしておいたほうがいいのか」は今の段階から知っておく必要があります。
1.相続税の基礎知識
1-1.相続税とは
この場合の相続とは、最も単純にいえば、「人が亡くなったことによる財産の移転・引き継ぎ」です。
亡くなった側の人を「被相続人」、引き継ぐ側の人を「相続人(法定相続人)」といいます。
相続人になれるのは、「子」「兄弟姉妹」「配偶者」です。「直系尊属(父母、祖父母など上の世代)」がいる場合、これらの人も相続人になれます。
ちなみに、これら以外の人が遺産をもらうと、それは相続ではなく、「遺贈」という扱いになります。
この財産には、現金・預貯金はもちろんのこと、不動産(土地・建物)、動産(自動車、骨とう品・美術品、家具)、有価証券(株)、ゴルフ会員権、死亡時退職金などが含まれます。
また、その相続をする前、3年以内に被相続人から受けた贈与は「相続で引き継いだ財産」とみなされます。「死ぬ前のものであっても、相続した遺産のトータルの中にカウントする」ということです。注意が必要です。
1-2.相続税の申告・支払いが必要な人
実はほんの少し前まで、相続税の支払いが必要なのは、全体の4パーセントほどでした。「25人亡くなっても、関係があるのは、そのうちの1人の被相続人だけ。その相続人らだけが相続税を支払う」ということですね。
ですが、平成27(2015)年1月に法律が改正され、支払う人の基準が下げられました。まだ、しっかりとした数字は出ていないのですが、今後は倍以上の人が支払うことになりそうです。
支払わなければいけない今のボーダーライン(相続税の基礎控除額)は、
3000万円+600 万円×相続人の数
で、計算されます。
つまり、相続人が1人だけならば、3,600万円を超える遺産がある場合だけ相続税を支払う必要があります。2人ならば、4,200万円、3人ならば4,800万円、ということです。
もちろん、土地・建物、自動車などはお金に換算します。
ただし、「墓所、墓石、仏壇、香典など」「国や地方公共団体、特定の公益法人に寄付した財産」「死亡退職金が出た場合に、相続人の数×500万円まで」「生命保険金が下りた場合に、相続人の数×500万円まで」は課税対象から外されます。遺産の合計金額に含めなくていいのです。
これらをプラスマイナスして先の金額を超えないようならば、税務署などへ申告する必要さえありません。
もし、超えていたら、原則として、被相続人の死亡の日から10カ月以内に納めなければいけません。それも現金でです。
2.考えられる相続税対策
相続税の支払額を減らす、あるいは全く支払うことがないようにするには、次のような方法が代表的なものです。もちろん、法律上も何の問題もありません。
2-1.生命保険
先に見たように、生命保険金は「相続人の数×500万円まで」は課税対象から外されます。「相続税対策の面からは、預金などにしておくよりも、生命保険の掛け金で使ったほうがいい」ということです。
また、生命保険に加入しておくことは、節税以外にももうひとつ、相続の上で大きなメリットがあります。
被相続人が亡くなると銀行口座などは凍結されます。そこからお金を下ろすにはかなり難しい手続きをしなければいけません。
一方の保険金は相続人の手に直接渡ります。「納税のための現金も用意しやすい」ということです。
2-2.生前贈与
「生きている間に財産を譲っておく」ということですね。
もちろん、相続人になる人たち以外に贈与して、財産自体を減らしておくこともできます。これだと、相続税の額は減りますが、それ以上に遺産自体が減ってしまいます。また、贈与税という別の税金もかかってきます。「できるだけ遺族に財産を渡したい」という目的とは違ったものになってしまいます。
これとは違い、相続人になることがわかっている人たちに贈与しても、一定の条件を満たせば、特別扱いされます。贈与税も少なくて済みます。遺産としての合計金額も減らすことができます。
ただし、先に見たように、生前贈与であっても、相続開始前3年以内は死後の相続と同じに扱われます。「その分だけは、遺産のトータルにカウントされる」ということです。
・暦年贈与
贈与税には110万円の基礎控除額が設定されています。「1年間の贈与の額が110万円ならば、贈与税はかからない」ということです。
なので被相続人が生きている間に、毎年こまめに贈与をしていればいいわけです。
・住宅取得資金贈与
親・祖父母から20歳以上の子・孫へ住宅取得資金として贈与をした場合に適用されます。
金額は条件によって異なりますが、最高で約1,200万円です。
・贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、配偶者が住むための不動産そのものや、不動産を購入するための資金を贈与した場合に適用されます。限度額は2,000万円です。
・教育資金の一括贈与
30歳未満の人の教育資金(学資)にあてるために、親・祖父母が金銭などを出し、金融機関に信託などをした場合に適用されます。
限度額は、小中学校、大学、専門学校などのための資金であれば、受け取る相手1人につき1,500万円、それ以外(習い事など)であれば500万円です。
・結婚・子育て資金一括贈与
こちらは、20歳以上50歳未満の人の結婚・子育て資金のための資金として、直系尊属(父母、祖父母など)がお金などを出し、金融機関に信託などをした場合に適用されます。
結婚資金の場合は1人につき300万円まで、子育て資金の場合はやはり1人につき1,000万円です。
ただし、贈与されたお金のうち、50歳を過ぎても残った分があった場合、その分については相続税の計算の金額に加えられます。
また、「相続時精算課税制度」というものもあります。
60歳以上の親・祖父母から、20歳以上でいずれ相続人となると予想される子・孫へ贈与する際、2,500万円までなら贈与税はかかりません。また、それを超えた分も税率20パーセントです。
ただし、この場合は、被相続人が亡くなったあとに、この贈与した分も相続税の計算に含まれます。こちらの方は有効な相続税対策にはなりません。
2-3.養子縁組
最もよくあるパターンとしては、「被相続人に孫がいる場合、その父母を飛ばして、被相続人の養子にしておく」です。この場合、その養子となった孫への相続税は2割り増しになります。
ですが、父母などへの税率が低くなるため、一族全体では支払額が減ることがあります。
また、養子で1人増えれば、相続税の基礎控除額も600万円広がります。死亡退職金、生命保険などの基礎控除額も同様です。全く相続税を支払わなくていいようになる場合もあります。
ただし、これは相続人らが互いによほど親しい場合限定で考えた方がよさそうです。相続人が増えた分だけ、これに直接関与しない相続人への遺産の額が減ります。争いのもとになることが多いようです。
孫以外が養子になっている場合は、「相続税の2割り増し」などはありません。実子と変わりなく、法定相続人として扱われます。
この場合ももちろん、ほかの相続人らが受け取る遺産が減ることにはなります。
2-4.不動産
・アパート・マンションを建てる
空き地を持っている場合、まるまるその土地を他人に貸したり、そこにアパート・マンションを建てることで節税ができます。
借地権・借家権が設定され、土地の評価額が下がるようになっているのです。
また、現金よりは、それだけの金額を出して買った土地や建物のほうが評価額が下です。ですから、「相続前に現金で持っているよりも、土地や建物に換えておく。それも土地は更地ではなく、建物付きならばいっそう相続税の節税効果は高い」ということです。
ただし、アパート・マンションにした場合、空室などが出て、その分損をする可能性もありますので、十分に計画を練る必要があります。
・小規模宅地等の特例
「被相続人が持っていた居住用宅地や事業用宅地を相続する場合、小規模宅地等に当たるものについては、相続税の評価額を大幅に減額できる」という制度があります。
これを「小規模宅地等の特例」といいます。これは家だけではなく、お店、会社なども含まれます。
その「小規模宅地等に当たる」についてはいろいろと細かい条件があります。考え方としては、「被相続人と相続人が一緒に住んでいたり、一緒に事業に使っていた土地や建物に高い税金をかけてしまうと、相続人が生活・仕事が成り立たない。だから特別扱いする」といったことです。
どういうパターンならば特例扱いになるかはかなり微妙です。専門家に判断してもらったほうがいいです。
また、そういったことを見越して、「親と別居しているのを同居に変える」といったことも相続税対策のノウハウのひとつとして考えていいでしょう。
3.どこに相談すればいいか
こういったように、相続税の節税のノウハウはいろいろな種類があります。どれも「節税の必要があるのか」「こういった方法で効果があるのか」は素人ではなかなか判断がしにくいです。
土地・建物ならば不動産屋、預貯金ならば銀行、生命保険ならば生命保険会社といったように、どこでも相続税節税のための窓口は設けているでしょう。個々のことならば、そういったところに相談を持ち込んでもいいです。
ですが、全体的なことに詳しいのはなんといっても税理士です。
弁護士も有力な相談相手ですが、どちらかといえば、相続人同士のもめごとの予防・解決の時に必要になります。
もし、「相談するにも、全く見当がつかない。何から手を付けていいかわからない」というのであれば、税理士への相談をおすすめします。
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