救急看護師で働く!仕事内容・役割・給料・資格。転職前にわかる業界おまとめ

     

緊急患者を運ぶ医者

救急医療施設は、対象となる患者によって、次のような種類があります。

・初期救急医療施設(一次救急医療施設)=比較的症状の軽い患者が対象。入院・手術はない。名称としては、夜間救急センターなど。

・二次救急医療施設=中程度の症状から重傷の患者が対象。入院・手術をすることもある。

・三次救急医療施設=心肺停止・脳卒中・心筋梗塞・広範囲のヤケド・急性中毒・重度の外傷・指肢切断などを扱う。命の危険がある症状まで含まれる。名称としては、救急救命センター、高度救急救命センター、ER(救急救命室)など。

これらで働く看護師に加えて、ドクターヘリに同乗するフライトナースや、地震・火事・津波などの災害現場へ派遣される看護師のことを、救急看護師と呼びます。

実際の就職先・転職先としては、一~三次の救急医療施設を考えることになるでしょう。

「総合病院などで、ほかの診療科と一緒に看護師を採用したり、ほかの診療科から異動させる場合、最も優秀な人を選んで救急医療施設に配属させる」というのは、公然の秘密です。

患者さんは一刻を争う状況です。それだけに、幅広い知識、手際の良さ、判断力、精神的なタフさが求められます。

また、「治療・看護の結果がその場で出ることが多い」「患者さんの命を救っているという実感がある」ということで、看護師としての達成感・充実感がしっかり持てる職種です。

こういったところから考えても、救急看護師は看護師の中の花形といっていいでしょう。

1.救急看護師の仕事内容

救急看護師がケアする相手は単なる急患だけではありません。

大規模火災、地震・台風・津波・火山噴火などの自然災害、列車・客船・バスなどの事故でケガ人などが出た場合も考えられます。

状況によっては病院を飛び出して、自分の方が現場に駆けつけることあります。

1-1. 救急処置

救急看護師の仕事として、最も特徴的なのが、この救急処置です。救急医療施設の中でも、特に三次ともなるとさらに重要性が増します。

具体的には、次のようなものが考えられます。

・心肺停止状態の患者の蘇生

・止血

・骨折の応急処理

対象となる患者のトラブルとしては、疾病・ケガ、中毒、脳血管障害など種類は様々です。比較的軽いものから、即座に命の危険もあるものまで含まれます。

さらには、次のような特徴もあります。

・医師の診察補助ももちろんする。それにとどまらず、医師が全員すでに手がふさがっている場合など、看護師だけの判断で処理することもある

・患者はいきなり来て、しかもすぐに治療にかかる。なので、患者に関する情報が少ない。場合によっては患者自身に意識がなく、自覚症状、持病・アレルギーについて全く情報がないこともある

・扱う医療機器の数が多い。特に検査機器(血液ガス分析装置、COオキシメーター、血液凝固測定装置、線溶測定装置、生化学自動分析装置など)。しかも常に最先端のものが導入される。

・目の前の危機を切り抜けるのが第一。同時に、将来の社会復帰まで考え、心身のダメージを最小にすることまで配慮する必要がある

この救急処置に加えて、患者さんの食事・排泄の介助・ベッド上などの褥瘡ケアといった病棟看護師がやるような仕事までカバーしなければなりません。

1-2.トリアージュ・ナースについて

救急看護師の中でも、特に「トリアージュ・ナース(トリアージ・ナース)」と呼ばれる人たちがいます。

「トリアージュ(triage)」はフランス語からきていて、直訳すると「選別」です。

もともとは、「災害現場などで、多数のケガ人・病人が出た時に、患者の緊急度から優先順位を考えて、診察の順番を決める」ことを意味しています。

このノウハウが救急医療施設でも採用されているのです。

運び込まれる、あるいは駆けつけてくる患者さんの中には、すぐに治療の必要がある人・少しは待てる人・命が助かる見込のない人などがいます。

来た順番に診察していては、「順番を逆にしていれば二人ともすぐに回復できたはずなのに、一人は手遅れになった」「助かる可能性のない人にばかり時間をかけて、簡単に助かるはずの人を重症化させてしまった」といったことも起きてしまいます。

医師が診察をする前に、看護師の方で症状を見て順番を決めたほうが、患者さん全体のためになります。

この順番を決める救急看護師が、トリアージュ・ナースです。

トリアージュ・ナースになるには、今のところ特別な資格は要りません。実際にはスタッフの中に救急看護認定看護師の資格を持っている人がいれば、その人に任せることも多いようです。

どこの救急医療施設もこのトリアージュ・ナースを任せることのできる中堅・ベテラン看護師の確保に必死です。

「募集、トリアージュ・ナース。5年以上の臨床の経験があり、トリアージュ関連の学習会や研修会を修了していること」といった求人がよく出ています。

2.救急看護師の給料

救急看護師は月給・ボーナス(賞与)・年収が高くなる条件がそろっています。

といっても、ほかの高給になる診療科や配属先と同様に、「基本給はそうは変わらない。夜勤手当、残業手当などいろいろな種類の手当が付く分、高くなる」という形です。

救急看護師は、適用される手当の種類が特に多いです。夜勤手当・残業手当はもちろんのこと、当直手当(宿直手当)・自宅待機手当・オンコール手当が用意されているところもあります。

2-1.72時間ルールについて

看護師の世界には、72時間ルールがあります。「1か月あたりの夜勤の時間はトータルで72時間を超えないこと」というのです。

夜勤の回数で置き換えると、二交代制の場合は4回が限度です。三交代制の場合はギリギリで9回、実際には8回が限度でしょう。

これを守らないと、その医療機関は、診療報酬(健康保険で診察した分の国からの支払い)が大幅に減らされます。

この状態で経営が成り立つところはまずはありません。ですから、表立って違反するようなところもありません。

ただ、これには例外があります。集中治療系の病棟(ICU、NICU、HCUなど)や回復期リハビリテーション病棟、緩和ケア病棟、認知症治療病棟などは、この72時間ルールに従わなくていいことになっています。

救急医療施設(救急救命センターなど)もその例外扱いのひとつです。

「さらに稼ぎたい。高い給料が欲しい」という人は、夜勤の回数の多い病院を選んだり、積極的に夜勤を引き受けることも考えられます。

ただし、しっかり覚えておかなければならないことがあります。

72時間ルールの例外があるのは、決してその職場の夜勤は比較的楽だからではありません。夜間でも人手を減らすことができないような職場だからです。

このパターンで高給を狙うのは、よほど体力に自信のある人だけと考えておきましょう。

2-2.当直について

実際にすでに夜勤や当直(宿直)をしている看護師さんの間でも、この2つの区別がついていない人がたくさんいます。

夜勤とは、その文字にあるように夜間の勤務のことです。休憩時間や仮眠時間が用意はされていますが、基本的にはずっと仕事をすることになります。

もちろん、給料計算の上でも勤務扱いです。夜10から朝5時までの勤務分は金額を25パーセント以上割増しすることが、法律で決められています。この割増し分が夜勤手当です。

当直は、急に人手が足りなくなった時に手伝いに入る・急患が来た時に対応するということを考えて、待機している状況のこといいます。

それらでの出番がなければ、せいぜいが電話の応対や施設内の見回りをするぐらいです。

出番があった場合は、その働いた時間分が勤務扱いになり、給料にも反映します。

出番があってもなくても、待機していたということで支払われるお金が当直手当です。これは1回あたり数千円ということが多いです。

また、当直制に加えて、自宅待機制やオンコール制を採用している救急医療施設もあります。

呼出をしたらすぐに来られるようにと、それぞれ、自宅に待機している・携帯電話に出られるようにしておく、というものです。

月に数回程度、順番が回ってくることが多いです。

実際に呼出があり、働けば勤務時間として計算、待機していたということで自宅待機手当・オンコール手当が出る、というのは、当直と同じです。


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3.救急看護師に必要なスキル

救急医療施設が対象とする症状は、特定の診療科の中には収まりません。

共通することとして、急性期があるだけです。

事故による外傷ならば整形外科、脳出血・脳溢血ならば脳神経外科、急性心筋梗塞ならば循環器科といったように、それぞれの知識が必要になります。

また、使う医療機器も多く、しかも最先端のものばかりになります。ようやく慣れたと思ったら、次の新しい機種に変わったということも常にあります。

これらの勉強を常に欠かさないような人、向上心の旺盛な人でなければ、救急看護師は勤まりません。

また、何よりも必要なのが、判断力、冷静さ、手際のよさです。一刻を争うような患者さんは真っ先に救急医療施設に運ばれるということを考えれば、もはや説明する必要もないでしょう。

また、体力も大事です。

72時間ルールの例外扱いです。夜勤の回数の多い病院もあります。

予定はあってないようなものです。「帰る間際にいっぺんに患者さんが運び込まれ、そのまま残業した」「その日は特別患者さんが多かった」という時にも、「疲れていたので、つい、ぼんやりしてしまった」というわけにはいきません。

4.救急看護師の資格

看護師がスキルアップ・キャリアアップするための資格としては、日本看護協会が用意している認定看護師・専門看護師がよく知られています。

それぞれ、21、11の看護分野について設定されています。

救急看護師の場合は、そのものズバリの救急看護認定看護師と急性・重症患者専門看護師があります。

また、近いものとしては小児救急看護認定看護師もあります。

試験をパスする必要がありますが、合格率は高いです。落とすためというよりも、あくまでチェック程度のものです。

ただし、その受験資格を得るための条件があります。

認定看護師・専門看護師とも、「看護師としての経験が5年以上。そのうち、専門分野で3年以上」となっています。

救急医療センターなどで働き続けていれば、そのうちクリアできるので、これは問題はないでしょう。

もうひとつ、認定看護師の場合は、日本看護協会が指定する教育課程(半年、615時間以上)を修める必要があります。専門看護師の場合も指定の教育課程があるほか、大学院修士課程も修了しなければなりません。これには最低でも2年かかります。

いずれも夜間コースや通信教育はありません。休職したり、いったん退職して通うことになります。

これらの資格に対する病院側の対応は様々です。

自分のところの看護師が資格を取るのに積極的・協力的なところもあります。「認定看護師の教育課程に通う半年の間は休職扱い。それも仕事のうちとみなしてくれて、給料まで出る」という例も聞きます。

また、「資格を取って戻ってきたり、資格所有者が転職してくると、特別なポストを用意してくれる。資格手当などの名目で給料もアップする」というところもあります。

こういったところは、増えてきています。ですが、今のところは少数派です。

「教育課程に通うのに、病院からの協力は全くなし」「資格を持っていても、ほかの人と仕事内容、ポスト、給料は全く同じ」というところのほうが多いです。

ですから、資格を取るつもりのある人、すでに持っている人は、資格の価値がしっかりとわかっている病院を探すということで、転職も同時に進めたほうがほうがいいでしょう。

5.救急医療施設で働くメリット・デメリット

5-1.メリット

やりがいの高さ

患者さんは一刻を争う状態で運ばれてきます。その分、治療や看護で回復するのも具体的にわかります。

「さっきまで死にそうだった人が、自分や医師の治療・看護で一命を食い止めた」というのに、少々の疲れもすっ飛んでしまう救急看護師さんは多いです。

特に三次救急医療施設ともなると、最先端の医療技術が導入されています。使われる機器も高度で最新のものです。看護師としての知的好奇心も満たされます。

昇進しやすい

また、中には昇進の道が開かれているというのに、魅力を感じる人もいます。

救急医療施設を置くような病院は、規模の大きいところが多いです。働いている看護師もたくさんいます。

中堅・ベテランとなってくると、チーフ、看護師長、看護部長などのポストに付く人も出てきます。

また別の昇進の仕方として、認定看護師、専門看護師などの資格を生かして、エキスパートとなる道もあります。

転職に強い

さらにもう一つ、転職に強いというのも、見逃してはいけません。

もちろん、同じ救急医療施設への転職もあります。

それだけではありません。ほかの診療科はもちろんのこと、企業・学校の医務室、福祉施設(老人ホームなど)といった医療機関以外までにも歓迎されます。

救急看護師は、さまざまな診療科の症例を経験している上に、判断力や手際も鍛えられています。転職市場での評価はとても高いのです。

5-2.デメリット

仕事がハード

「夜勤の回数が多い病院もある」「急患に対応しなければならないし、それも一度に来ることもある」「予定が立たない」など時間面での大変さだけではありません。

少しの手順のもたつき、判断の遅れなどが、そのまま患者さんの死につながってしまうことがあります。

医師、上司・同僚の看護師なども、高い緊張感の中で仕事をしています。「何度も同じことを言わせるな」などと怒鳴られるようなこともあるかもしれません。

看護の甲斐なく、そのまま患者さんが亡くなってしまうことも、ほかの診療科よりも多いです。

精神的にもタフでなければなりません。

「患者さんの家族ら、付き添いの人への対応が大変」とこぼす救急看護師もいます。

家や職場で急に倒れたのを見て、家族や同僚の人も気が転倒しています。看護師のやり方を見て、つい声を荒げてしまう人もいます。

特に厳しいやり取りになりがちなのは、トリアージュ・ナースをやっているときです。

場合によっては、「ほかの患者さんのほうが急を要するので、後回しにします」ということもいわなければなりません。「回復の見込がないので……」というようなことだってあるでしょう。

これを家族らに納得してもらわなければなりません。

6.救急看護センターへの転職の注意

初めて救急医療施設での勤務を考えているのならば、転職は20代のうちに済ませましょう。どんなに遅くても、30代半ばまでです。

ここまで見たように、救急看護師は激務です。体力や集中力が求められます。「若い人でないと勤まらない」となるのは無理のないところです。

その年代を過ぎてから応募しても、採用される見込みはほとんどありません。

仮にあったとしたら、警戒したほうがいいです。「来る人、来る人、すぐにやめてしまう。条件をつけている余裕がない」という職場の可能性が高いです。

すでに救急看護師の経験がある人の場合、ほかの救急医療施設への転職は、いろいろなパターンが考えられます。

たとえば、「救急看護師には満足しているのだけども、夜勤の負担がもう少し減ればいいのに」という人もいれば、「夜勤手当、残業手当が少ないのが不満で次を探している」という人もいるでしょう。

看護師長、看護部長などの経歴を生かして、転職先でも管理職になることを考えている人がいるかもしれません。

認定看護師・専門看護師の資格を持っている人ならば、給料などの形で価値をしっかり評価してもらい、職場の中でも知識・スキルが生きるような扱いを望むはずです。

看護師転職サポート

いずれの場合も、まずは看護師転職サポートの利用を考えてみましょう。

実際の夜勤の回数はどうなっているのか・どういった患者さんが多いのか・どんな医療機器を扱うことになるのか、といった転職先候補の正確な情報が得られます。

また、給料の額やポストなど、自分の経歴にふさわしい転職先にはどんなところがあるかといったことは、看護師として生きてきた人にはなかなかわかりにくいことです。

そういったことの相談相手にもなってもらえます。

ただし、この看護師転職サポートもどこでもいいわけではありません。中には直接相手に電話でもすればわかる程度の情報しか抱えていないサポート会社もあります。こういったところに限って、勝手にどんどん話を進めてしまいます。

「担当者が実際に何度も足を運んで、内部の情報にも通じている」「わからないことは、すぐにでも調べてくれる」「こちらの希望をしっかりと頭に入れている」というところを残すようにしましょう。

また、このサポート会社は絞り込みすぎず、3、4社程度に登録しておくのが、看護師転職サポートを利用するコツです。

サポート会社ごとに抱えている案件が異なります。絞りこみ過ぎると、「気になっていたA病院は、B社だけが扱っていた。自分はC社だけ登録していたので、せっかく募集があったのに、気が付かないうちに終わっていた」ということにもなりかねません。

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