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今井雅之氏の体で進行したステージⅣの大腸がん。医療ミスはなかったのか?人間らしい尊厳死はできたのでしょうか?

      2016/07/31

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今井氏は医師に全てを任せて信頼していたのか、死期を悟っていたのか、適切な治療が行われたのか、その辺りはまったく不明です。

治療内容をオープンにしない日本の医療では曖昧な点が多く、それを知る事もできません。しかし、せめて痛みを抑えることができなかったのか?という疑問だけが残ります。

疼痛緩和は行われていたのか?


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4月30日の記者会見の際、絞り出すような声で応じていた今井雅之氏(54)が、その1か月後に大腸がんで亡くなりました。ステージⅣの大腸がんの場合、大腸だけでなく近接している全ての臓器に転移を起こし、体内のリンパ節全てに転移を起こすほどの末期がんです。

記者会見の時点では脳に転移しても不思議ではない状態で、死期が近づいているというのは誰の目にも明白です。気力だけで乗り切ったようでもあり、酷な記者会見でした。

その頃はすでに全身の臓器にがん細胞が転移していたと思われますが、脊椎に転移して脊髄神経を圧迫をしていればモルヒネでは十分な鎮痛作用を得られるわけでもなく、ヒトが感じる最大の激痛を24時間感じていたのかもしれません。

おそらく、モルヒネだけでなく脊椎麻酔を行っていたと想像できますが、モルヒネは下行疼痛抑制系のオピオイド神経の伝達遮断だけです。

他のセロトニンとノルアドレナリンの2つの下行性疼痛抑制系の増強やステロイドのくも膜下投与などをフルに使っていたとすれば痛みに苦しむことはなかったはずです。痛みの緩和が最も重視される終末期医療が適切に行われたのか、疑問を感じています。

未然に防げる大腸がんと、その治療について

大腸がんは遺伝的要素のある原発性疾患です。大腸にポリープが出来た時点では80%は良性ですが、サイズが1センチ以上になると25%の確率で発がんします。2センチの場合は40%という高確率で発癌します。

自覚症状がないので、気付けば悪性腫瘍へと進行している場合が多くなっています。ポリープや腫瘍を切り取った場合でも再発を繰り返して転移しやすくなり、時間の経過とともに大腸がんへと発展する可能性があります。

遺伝性の疾患であるため、大腸がんの発がん防止の遺伝子が欠損しているかどうか調べる事は可能なので、予め危険性を認識しておく必要があります。未然に防ぐことができる癌にも関わらず、死亡率が高いことが問題になっています。

今井氏の場合は、もしかすると他に治療法はないのか模索したかもしれません。がんの場合、セカンドオピニオンは積極的に行われています。同病院内の診断医に意見を聞くこともできますが、検査結果やカルテの持ち出しにも応じてくれるので、他院を訪れて別の治療法を聞くこともできます。

全ての微小がんを取り切る陽子線治療やガンマナイフでは取り切れないほど転移していたと推測できます。

個人的な考えでは、手術による摘出は体力さえあれば無駄ではないですが、通常の抗がん剤による化学療法は末期がんの場合はあまり意味がありません。逆に死期を早める事にもなりかねません。

免疫療法は世界中で支持されていませんでしたが、現在、唯一有効な免疫療法としては国産のPD-1阻害剤(ニボルマブ)があります。

適応症に大腸がんは含まれていませんが、ほとんど全てのがんに効果がある副作用のない免疫療法なので試す価値はあったと思います。この薬は現在、進行性肺がんのステージⅣの場合に使用されて治療効果を挙げています。

余命宣告を受けた人間が感じること

imai1前年の秋に「余命3日の宣告を受けた」という本人の言葉もありますが、余命とは医師が経験的に感じている患者の残された期間であって、その生存日数は短くなる事はなく、免疫力次第で大きく変わってきます。それが1年であっても不思議ではないのですが、その間に死の宣告に対して人間が抱く感情はほとんど共通しています。

余命の宣告を受けた場合、最初に病気に対する「怒り」や「否認」が長く続きます。そして神頼み的な「取り引き」、「諦め」を通り過ぎると、「容認」へと変化していき、最後は穏やかな表情のままで半ば放心状態にも見えますが、精神的に苦痛のない死を迎えるというのが一般的です。

痛みに邪魔された尊厳死

しかし、想像を絶する痛みが伴っていれば、毎日が痛みとの闘いであって「安楽死させてほしい」と公言するほどの痛みがあれば、精神的なストレスや不安感から心因性疼痛も同時に併発して痛みの悪循環に陥っていたのかもしれません。心因性疼痛は痛みの原因が無くても激痛を感じるというものです。

「痛みがひどく、苦痛にゆがむ顔で亡くなっていった」というのは残念な結果です。せめて最後だけでも人間としての尊厳を保ったまま静かに息を引き取る形であれば、穏やかな最期を迎えたと周りも思えるはずです。

死期が近づいたとき、終末期医療では禁酒、禁煙とは限らず、少し体調がよくなったときにタバコでも、というのは病室内でもよくあることです。それも出来ず、痛みだけだったと考えるとやりきれない思いもあります。

生きる意味を考える

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舞台の降板が決まった時、心理状態は諦めを超えて容認に達していた時期だったと思います。それだけに最期の舞台では「生きる」ことの素晴らしさを表現したかったと言われています。

死期が迫っている男が考えることは、余命宣告ののちに酷い痛みが続き、最後に叶えられなかった「より良く生きる」ということを、命をかけて他の誰かに託したいという思いが、何よりも優先します。

それは、利己的な遺伝子が成せる本能の部分ですが、本人は生きる事の意味を伝えたかったはずです。惰性で生きることは間違っていると、最期を迎える誰もが実感して伝えたくなる言葉です。精一杯生き抜いたと実感しながら最期を迎えるというケースは少数派です。

ブログには、「ちょっと痩せましたけど、徐々に体調は回復しております」という文字が残されています。しかし、余命宣告の後です。周りに心配をかけたくない気持ちもわかりますが、大腸がんの手術後に簡単に痛みが消えるわけではありません。まったく回復していないのは自分自身でわかっているはずです。

そういう無理のある強がりが似合う男でもあり、最期まで俳優を捨てない人間でした。

 

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