起こりがちな医療ミス。(実例など)

医療ミスを考える際に、「医療事故」「医療過誤(医療ミス)」「ヒヤリ・ハット」の3つを区別する必要があります。

医療事故

「医療事故」とは医師・看護師・薬剤師などの医療関係者が、医療行為で患者さんへのダメージを与えてしまうトラブルをいいます。また、時には医師や看護師の側がダメージを受ける場合もあり、これも医療事故に含みます。

よく勘違いされるのですが、あくまで「ダメージ」「トラブル」であって、必ずしも医者看護師などの「知識・スキルの不足」、うっかりなどの「過失(ミス)」が伴うものではありません。

医療過誤(医療ミス)

この「医療事故」のうち、医師や看護師のミスによるものが、「医療過誤(医療ミス)」です。

ヒヤリ・ハット

また、医療事故のうち、過失を犯したものの、実際には患者さんらへのダメージはなかったものを「ヒヤリ・ハット」と呼びます。

毎年公表で最新のデータ

この医療事故などがどのくらい起きているかは、厚生労働省が「医療事故情報収集等事業」として、毎年データをとり、公表しています。

この「事業」の平成26年度報告では、全国の医療機関のうち、275を「報告義務のあるもの」、718を「任意で報告するもの」としています。「報告義務のあるもの」の病床数は141,637です。

この報告によると……

報告義務のある275医療機関のうち、医療事故の報告をしたのが239機関。報告件数2,911

任意参加の718医療機関のうち、医療事故の報告をしたのが86機関。報告件数283

……となっています。

また、「ヒヤリ・ハット」に関しては、627の医療機関(病床数合計206,512床)が参加し、そのうちの102の医療機関から、29,736件の報告が上がっています。

報告義務があるもの

これらの数字のうち、最も信頼度が高いのは、「報告義務のある医療機関」の出している医療事故です。「義務」があるので、事故は全部報告していることになっています。

ほかの分は、実際に起きたことの一部だけが報告されていると考えたほうがよさそうです。

これで見ると、「報告義務のある医療機関」ひとつあたり、年に10数件の医療事故を起こしていることになります。

特に危険と判断されたケース

また、平成26年度報告では、「検討すべき個別のテーマ」として、次の11件が採り上げられています。

①職種経験1年未満の看護師・准看護師に関連した医療事故
②気管切開チューブが皮下や縦隔へ迷入した事例
③事務職員の業務における医療安全や情報管理に関する事例
④後発医薬品に関する誤認から適切な薬物療法がなされなかった事例
⑤無線式心電図モニタの送受信機に関連した事例
⑥調乳および授乳の管理に関連した事例
⑦皮膚反応によるアレルギーテスト実施時の試薬に関する事例
⑧内視鏡の洗浄・消毒に関連した事例
⑨カリウム製剤の急速静注に関連した事例
⑩放射線治療の照射部位の間違いに関連した事例
⑪口頭による情報の解釈の誤りに関連した事例

たとえば、①では……

・吸入薬を点眼薬と勘違いして、患者の左右の目に差した。

・医師が注射の準備をするつもりで、看護師に「この薬剤を持って来て」と指示した。それを看護師は「注射しておいて」と解釈し、持ってきたままの薬剤を注射した。その結果、薬剤の濃度は濃すぎ、量も多すぎた。

・開腹手術をする前に、時間の余裕がなく、用意したガーゼをきちんと数えていなかった。そのために、おなかの中にガーゼを残したのに気が付かなかった。おなかにガーゼがあるのは、手術後のレントゲンで発見された。

……といった看護師の医療ミスについていくつも例が挙がっています。

最初に申し上げたように、「医療事故」は必ずしも、「医療ミス」ではありません。

ですが、こうやって「テーマ」を並べてみるとやはり「医療ミス」の多さが問題になっていることがわかります。

看護師のミスも多い

また、「テーマ」の中に、看護師が直接かかわる作業が多いのも目立ちます。

もちろん、中堅やベテランも医療ミスを起こす可能性はあります。ですが、特に新人が要注意なのはいうまでもありません。

それは本人や周囲でもわかっているはずです。

それでも現実には、なかなかいい対策はありません。なので、わざわざ①のように、「職種経験1年未満の看護師・准看護師……」とテーマが設定されているわけです。

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