造影剤注射の失敗しないポイント

注射の中で、最も緊張感が高いのが、「造影剤の注入」でしょう。ベテランの看護師さんでさえ、「どうしてもびくびくしてしまう」「出勤の時は、『今日はありませんように』と思ってしまう」といいます。

病院によっては、全く看護師にはタッチさせないようなところもあります。

かと思うと、一方で「看護師がやるが、必ず医師が同席」「お構いなしに、全部看護師任せ」「病院内で独自の資格制度を設け、それにパスした看護師だけ」なんてところもあります。

このように「ばらつきがある」ということは、転職、あるいは病院内での配置転換の際に、「今まで全くやっていなかったのに、急にやるようになる可能性もある」ということです。

もし、転職先の候補に、「造影剤注射があたり前にある」なんてところがある場合、注射が苦手な看護師さんは特に要注意です。

ポイント①「造影剤の種類」

造影剤はレントゲン撮影など、画像診断のいろいろな場面で使われます。消化管に使う場合は、口から飲んだり、肛門から入れます。

これらの場合は注射にはなりません。特に問題はないでしょう。

問題になるのは、血管に入れる場合ですね。

非イオン性水溶性ヨード、水溶性ヨード、低浸透圧水溶性ヨードなどが使われます。

入れる場所は、画像が必要な部位により、動脈の場合もあれば、静脈の場合もあります。

ただし、動脈への造影剤注射ができるのは、医師に限られます。たとえ医師が同席していても、看護師がやることは禁止されているのです。

となると、看護師さんの仕事としての造影剤注射は、ワンショットや点滴の静脈注射と同じことになります。

ポイント②「血管の探し方」

これは基本的には、採血やほかの注射・点滴と同じです。

つまり……

1.血管(静脈)は太くて、真っすぐなものを選ぶ。

2.目で見てだけで選ばない。必ず、指で押してみて、弾力などを確かめる。

3.必要な機器は事前にしっかりとチェック。また、手際よく進めることができるように、置き方も工夫する。

4.適切な血管が見つからないようならば、怒張をする。つまり、「ホットパックなどで温める」「腕の下にしてもらい、うっ血させる」「マッサージをする」「駆血帯を巻く」などです。

ポイント③「ほかの静脈注射との違い・その1」

「看護師のやる造影剤注射は静脈へのものに限られる。なので、ノウハウとしてはほかの静脈注射と同じ」とはいえ、注意する重点は少し違います。

まずは、「アレルギー」です。

どんな静脈注射であれ、薬剤を体に入れるからには、アレルギーの危険性はあります。最悪の場合は、「アナフィラキシーショック」です。

造影剤はその危険性が高めなのです。もちろん、事前にアレルギーの有無を尋ねるほか、注射中やその後も一層しっかりと患者さんを観察しなければなりません。

もしアレルギー症状が出たら、それを抑える薬を使います。

ポイント④「ほかの静脈注射との違い・その2」

静脈注射に使うヨード系の造影剤は、粘度が高いものが多いです。つまり、ネトっとしています。そのため、詰まりやすく、針も太めを使うのが一般的です。

となると、針を刺すのも一層難しくなります。「自分の手には負えない」なんて看護師さんが更に多くなるのも仕方ないですよね。

また、患者さんの方の感じ方も違います。体が暖かく感じるのが一般的です。

これは高速で注入するほど極端になります。「体がカーっとしてくる」だけではなく、「喉元から熱が上ってくる」なんて訴える患者さんもいるぐらいです。

決して異常ではありません。患者さんも看護師さんも慌てないようにしましょう。

ポイント⑤「造影剤の排出」

造影剤を使って、多くの患者さんが心配するのが、「血に混じった造影剤は、その後どうなるのか」です。

これは腎臓でこし取られ、尿に混ざって排出されます。おおよそのところ、24時間で95パーセント程度が体の外に出ると考えられています。

水分を多めに取ると、早めに排出されます。

ですが、数日間はアレルギーが出る可能性があります。

患者さんにはしっかりと説明しておきましょう。もちろん、様子がおかしければ、すぐに診察を受けてもらいます。

ポイント⑥「造影剤注射の副作用」

副作用としては、具体的には、吐き気、嘔吐、かゆみ、じんましんなどがあります。

また、症例は少ないとはいえ、咽頭の浮腫、血圧低下、呼吸因難など深刻なものもあります。

副作用が起きやすい人は、まずはアレルギー症状のある人です。また、過去に副作用が出たことのある人は、再び出るリスクが高まります。

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