静脈注射が上手くなるポイント

Nurses have a syringe

注射スキルはやっぱり必要

「注射は数をこなさないとうまくならない」というのは、半ば常識でしょう。

もともとの手先の器用さだけでは、うまい・下手が決まるようなものでもないようです。

なのに、診療科によっては、まったく注射をしません。また、大学病院だと、注射はもっぱら、若手医師の仕事になっていて、看護師はノータッチです。

そのまま同じ環境でずっと過ごすのならば、問題は大きくないでしょう。ですが、「ほとんどの看護師は、生涯で2回程度は転職する」ともいわれます。

注射スキルは最低限でもこなさないと、転職先が限られたり、行った後に困ることにもなります。

ポイント①「注射についてもう一度おさらい」

一言で「注射」といっても次のようなものがあります。

1.皮内注射=投与量は0.2ミリリットル程度まで。表皮と真皮の間に送り込む。

2.皮下注射=数ミリリットルまで。針は斜めに刺して、皮下組織に送り込む。

3.筋肉内注射=数ミリリットルまで。針は垂直に刺して、筋肉内に送り込む。皮下注射よりも吸収が早い。

4.静脈注射(静脈内注射)=針を静脈に差し、薬剤を送り込む。液の量は制限なし。効果の出方が早い。

ほかにも、腹腔内注射、脊髄腔内注射、動脈内注射などがあります。

ポイント②「問題は静脈注射」

動脈注射などは医師しかできないように法律で定められています。また、皮内注射なども「針を刺す位置がごく浅いところに限られる」といったむずかしさがあります。

とはいえ、じっさいのところ、看護師さんの間で、「注射がうまい・下手」と話題にされることが多いのは、主に「静脈注射」です。

その静脈注射で問題となるのは、

・針を刺すのに適した血管が見つけられない

・針を刺すときなどに、患者さんに痛みを与えてしまう

という点でしょう。

また、この静脈注射は量が50ミリリットルぐらいまでならば注射器で行い、それを超えるようならば点滴が一般的です。

前者をよく「ワンショット静脈注射」「ワンショット静注」、後者を「点滴静脈注射」などと呼び分けます。

単に「静脈注射」と呼べば、普通は「ワンショット静脈注射」のことです。

ポイント③「静脈注射は採血や点滴よりも一層慎重に」

針を刺すのに適した血管を探し、患者さんに負担をかけずに血管の中に針を入れる……ということでは、ワンショット静脈注射も、点滴や採血と同じです。

ですが、点滴の場合、薬をゆっくりと体内に入れていきます。採血ならば薬は使いません。一方、ワンショットの場合は、比較的短時間に一気に薬を注入します。当然、影響もすぐに出やすくなります。

点滴などでも当然のことですが、一層慎重に、使う薬の種類、注射する相手などに間違いがないかをチェックするようにしましょう。

「すぐに間違いに気がついたが、取り返しがつかなかった」ということになりやすいのが、静脈注射ですから。

ポイント④「準備するもの」

準備するものは、注射器、アルコール綿、ディスポーザブル手袋、駆血帯、固定用テープなどです。

そろっているのは当然のこと、置き方にもひと工夫しましょう。手際良くできるかどうかに大きく影響します。

ポイント⑤「血管の探し方」

最も一般的には、前腕の肘正中静脈、尺側皮静脈、橈側皮静脈から選びます。

これらの中で、「太い」「まっすぐ」をポイントにします。

目だけで決定してはいけません。いざ、針を刺そうとすると、血管が“逃げて”しまうようなことがあります。

必ず、指で押して弾力などを確かめましょう。

ポイント⑥「いい血管が見つからない時は」

指で探してみても、いい血管が見つからない時があります。ならば「怒張」の必要があります。血管を膨張させる、ということですね。

「ホットパックなどで温める」「マッサージする」「クレンチング(手のひらを開いたり閉じたりする)」などが考えられます。

ですが、一番確実なのは、駆血帯を巻くこと。針を刺す予定の場所より10センチほど上を縛ります。

この駆血帯を使っても、1回で見つけられなかったら、場所を変えて、数回縛りなおしてみましょう。

「これでも見つけられない」「大丈夫と思って刺してみたが、2回ほど失敗した」というのならば、患者さんのためにはあきらめましょう。

先輩や同僚の注射のうまい人に協力をお願いするのも仕方ありません。

ポイント⑦「注射の針を刺すときの注意」

針を刺す部分から数センチ先を、開いている方の手で引っ張ります。また、腕枕(注射枕)などを使って、その部分が正面に来るようにします。

針の角度は皮膚に対して、15~20度です。狙っている血管の1センチ手前ほどから入れます。血管に達したら、その管に沿って、さらに5ミリほど入れます。

ポイント⑧注射のうまい人と下手な人の違い

注射のうまい・下手はどこで決まるのでしょうか。

まずはスキル面から考えてみます。

下手な人は、自信がないせいもあって、ゆっくりと針を刺してしまいます。

また、刺した後に位置に迷って、針を動かしてしまいます。

本人としては、「丁寧にやっている」つもりなのですが、表皮や血管壁を時間をかけて破ることになり、痛みが倍増します。

うまい人は、動きに無駄がなく、時間も短くてすみます。作る傷も小さいし、痛みを感じるほどの時間もかからないのです。

精神面も影響します。

自信のなさは患者さんにも伝わります。身構えたり、筋肉を固くしてしまって、一層針が刺しにくくなります。こうなると、悪循環ですね。

どうしてももたつく場合は、今何をやっているか患者さんに説明しながらすすめること。

先方にも安心してもらえるし、自分の行動が冷静に見れるのでミスも減らすことができます。「まだ血管に届いていないので、あと少し深く刺しますね~」といった感じですね。

もちろん、余裕の表情で話すようにしましょう。

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